ソニーが「Xperia 5 V」を大きく方向転換した理由 “小さいやつ”以上のストーリーをプラス(2/3 ページ)
ソニーは、10月13日に発売された「Xperia 5 V」で、Xperia 5シリーズの方向性を大きく転換した。Webなどのビジュアルが、かつてないほどカジュアルでポップな印象になっている。Xperia 5シリーズはユーザーに“顔”が見えづらくなっていたという。
“タピオカ”を意識? カメラのデザインにも変化
―― 2眼になったことで、カメラ回りのデザインも変わっています。
越智氏 カメラ部分はこだわっています。スマホは、カメラを中心に物事が語られるようになりました。これはiPhoneもPixelもそうで、スマホを語る際に、まず「カメラがどうか」ということになります。若い人の中には、iPhoneのガチャっとしたカメラのことを「タピオカ」と呼ぶ人がいますが、それによって、実生活のコミュニケーションで「このタピオカのおかげで画質がよくなった」というように語られます。そのため、Xperia 5 Vでも“目”をしっかり際立たせています。これまでは少しおとなしかったので、カメラを強調し、上下感もつけています。すごいと言われるカメラが、これで撮られていることが分かるようにしました。ここもささやかなところですが、Xperia 5 Vの変化点です。
―― 先ほど、最も利用頻度が高いのは広角カメラというお話がありましたが、裏を返すと、なくなった望遠カメラはあまり使われていないのでしょうか。
越智氏 私は2018年ぐらいカメラの企画をやっていて、海外では売る側の立場にもいましたが、レンズ交換できるカメラだとやはり24-70mmが一番売れます。これと16mm-35mmの超広角と、70-200mmのズームレンズは他社も含めて“持っていなければいけないレンズ(大三元レンズ)”と言われることもありますが、望遠は頻度的には(優先度が)低い。もちろん、70-200mmでないと撮れない領域もあり、コンパクトカメラでも200mmまでいける商品はありますが、こういったものは旅行のように、通常の生活範囲をちょっと広げたいときに使うものです。どうしても撮っておきたいビジュアルがある、その瞬間は一瞬しかないので、レンズとしてそこまで持っていた方がいいという考え方です。
その考えをそのまま取り入れたのが、上のモデル(Xperia 1)です。逆に、生活の中心が学校と家だったり、勤め先と家だったりすると、広角カメラの利用頻度は圧倒的に高い。この距離感でいかにきれいに、いかにノイズを乗せないかが重要になります。Xperia 5 Vではそこに集中しました。前回のXperia 5 IVでは60mmの望遠カメラがついていましたが、Xperia 5 Vは24mmの広角が48メガピクセルです。その真ん中をクロップすることで48mmまでカバーできるのも、望遠を搭載しなかった理由です。
みんながXperia 1 Vに行くのではなく、まずXperia 5 Vも見てほしい
―― 先ほど価格のお話も少し出ていましたが、やはり価格を抑えたいという意識もあったのでしょうか。
越智氏 若年層向けだから絶対に安くしなければいけないというわけではありませんが、青天井に高くなることがいいとも思っていません。ここ2年、為替の件やワールドワイドで半導体を中心にした部材が足りていないこともあり、価格が高騰するのは見えています。ただ、日本に住んでいる方にとっては、そんなの知ったこっちゃないという話ですよね。
―― 最近だとシャープが「AQUOS R8 pro」とは別に「AQUOS R8」を投入していますし、サムスンの「Galaxy S23」も「Galaxy S23 Ultra」と比べると価格は抑えめのハイエンドモデルになっています。Xperia 5 Vも、こういった価格帯のハイエンドモデルに位置付け直しているということでしょうか。
越智氏 iPhoneで言えば、無印系のものが価格的に近いですよね。皆さん、まずそこを中心に見て、パネルが大きいのがいいのか、それより上のモデルに行くのかを考えます。Xperiaは、そこに応えきれていませんでした。みんなが一緒にXperia 1 Vに行くのではなく、価格を踏まえながらまず(Xperia 5 Vを)見ていただければありがたいと思います。Xperia 1 Vは20万円を超えてしまって「さすがに無理」という声もありますが、一番楽しめる広角カメラはXperia 5 Vにも入れています。上(Xperia 1)は買えないから下(Xperia 5)を試してみようという流れもできるかもしれません。
関連記事
- 「Xperia 5 V」のターゲットは“若者” スペックよりも体験を伝える手法とは
ソニーは9月20日、スマートフォン「Xperia 5 V」の国内における販路を発表した。NTTドコモ、KDDI、楽天モバイル、ソニーストアが取り扱う。同日の説明会でソニーがXperia 5 Vのプロモーションに「NiziU」を起用した狙いなどが語られた。 - 「Xperia 5 V」は何が進化したのか Xperia 5 IVとの違いを写真で解説
9月1日にソニーが国内投入を発表した「Xperia 5 V」。キャリアからの発表も待たれる秋冬商戦向けの新モデルとなる。先代「Xperia 5 IV」から何が進化したのかを実機でチェックした。 - 小型ハイエンド「Xperia 5 V」10月中旬以降に発売 約14万〜15万円、SIMフリーモデルも
ソニーが9月20日、スマートフォン「Xperia 5 V」の国内投入を発表した。2023年10月中旬以降の発売を予定している。ドコモ、au、楽天モバイルが扱う他、SIMフリーモデルも同時期に発売する。 - 「Xperia 1 V」開発陣に聞く“ハイエンドスマホの売り方” 約20万円でもターゲットは明確
ソニーの「Xperia 1 V」はデザインやカメラを進化させた、最新のフラグシップスマートフォン。一方で約20万円という価格はユーザーを選ぶのも事実。こうした新モデルの開発背景や、新しい販売方法に挑戦している理由を開発陣に聞いた。 - 「Xperia 1 V」のカメラで注目すべき2つの進化 新型センサーの高感度性能はめちゃスゴかった
「Xperia 1」シリーズもとうとう5代目、「Xperia 1 V」が発売された。ぱっと見は「Xperia 1 IV」とあまり変わらないものの、メインカメラのCMOSが強化され、アスペクト比も変化した。さらに「Photography Pro」が縦持ちでも使えるようになった! これは最大の強化といっていいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.