「ドコモが取れていないユーザーを取る」 NTTメディアサプライが海外eSIMサービス「Lesimo」を始めたワケ(2/3 ページ)
NTTメディアサプライは、4月に海外旅行用eSIMサービスの「Lesimo(ルシモ)」を提供開始。NTTグループにはご存じのようにドコモもあり、国際ローミングサービスを提供しているが、海外向けeSIMはこことも競合する恐れがある。なぜ同社はあえて海外向けeSIMサービスの提供に踏み切ったのか。
「高い」と言われるのは大前提でスタートした
―― 一方で、トライアルで利用した際には、同じ国や地域の中でのプラン数が非常に多く、大容量で高額なプランもあって選びづらい印象も受けました。容量と日数の選択肢がたくさんあったのも原因だと思いますが、この点はいかがでしょうか。
茅原氏 市場の反応を見てみようと思い、そのようにしました。そもそもプロモーションをしていなかったので、(利用者が)少ないと見ていました。2000以上のプランがあり、その中から何プランに絞るのかは精査していました。本来は1つ1つ競合と比較し、価格を設定したかったのですが、それがなかなか追い付かず……。そのため、いったん調達価格から料金を算出して、高いと言われるのは大前提でやらせていただきました。
高いというのは分かっていましたが、ユーザーからそのような声もありました。それを踏まえ、全ての国で、最大10ぐらいのプランに絞っています。価格も1つ1つ比較して、他社と戦えるようにしました。今は、想定している競合と、大体同じか少し安くなっていると思います。
新宅氏 8月に思い切って料金プランを改定しています。最大で43%ぐらい、値下げしたプランもあります。
茅原氏 韓国などのアジア圏は、1GBあたり500円から600円ぐらいで使えるようになりました。
―― アジア圏だと、現地キャリアが安価なプリペイドのeSIMを提供していることもあります。そことの比較になると、やはりサポートや安心感といったところでしょうか。
新宅氏 そこを強みにしていきたいと思っています。eSIMは世界共通の仕様なので、普通にやると価格競争にさらされます。そこに何かしら色をつけ、ユーザーにとって利点となるものは強化していきたいですね。
茅原氏 eSIMは日本でも黎明(れいめい)期です。サポート体制などで安心していただけるというところは、一定の評価をいただけています。
ahamoの国際ローミングとはかぶらない位置付けにしている
―― サービススペックとして、現在カバーしている国や地域はどの程度の数になるのでしょうか。
新宅氏 現時点では60カ国です。ただし、近い将来、190以上の国や地域をカバーできるようにしていくつもりです。
茅原氏 業界最大のスペックには、すぐに合わせていきます。今は、調達の安定性とコストの兼ね合いでこのようになっています。eSIMになると安定供給がSIMカードより難しい側面があります。また、相手先(調達先のキャリアなど)のプロファイルをどう連携させるのか、実装が追い付いていない面もあり、それを個別に開発して調達コストが上がると価格に転嫁されてしまう側面があります。そのため、当初はしっかり出せる60カ国に絞り込んでいます。
―― 一方で、グループ内にはドコモがあり、国際ローミングサービスと競合する部分はあるかと思います。ahamoに関しては国際ローミング無料を打ち出しています。この点についてはどうお考えでしょうか。
新宅氏 グループ内でカニバらない(競合しない)ことは大事です。ただ、ahamoのユーザーはよりハイクラスで、もともとたくさん(データ容量を)使います。これに対し、Lesimoは渡航するときだけ使う形になります。ahamoのようなユーザーとはかぶっていないという位置付けで、すみ分けは整理しています。
茅原氏 補足ではありますが、ドコモのシェアは、ahamoも含めて50%を下回っています。つまり、半分は他キャリアのユーザーということです。ドコモユーザーを見ているわけではなく、ドコモが取れていないユーザーを取っていくことで、カニバリ(競合)は避けられると思います。
20〜30代の女性はデジタルに強く、eSIMが響くと考えた
―― Lesimoでは、どのようなユーザー層を想定しているのでしょうか。
新宅氏 メインターゲットに据えたのは、20代、30代の女性です。ファーストステップとして獲得するのは、そこだと思いました。20代、30代はデジタルに比較的強い年齢層であることが1つ。また、女性は海外渡航時もなるべく荷物を少なくしたいと思っています。これまでは、海外用Wi-Fiルーターをご準備される方が多かったと思いますが、小さなカバンの中にスマホを入れ、モバイルバッテリーを入れ、Wi-Fiルーターを入れとなると、どうしてもかさばってしまいます。こういった方々には、(eSIMのサービスが)非常に響くのではないかと考えました。
茅原氏 eSIMはオンラインで購入する形になるので、どちらかというと問い合わせなどをせず、自分で設定するのに抵抗がない方がアーリーアダプターになります。旅行もオンライン特化で、航空券や宿泊先を全て自分で押さえるような人を入り口として考えました。そこに当てはまるのが20代、30代の女性で、あとは40代ぐらいまでの方で、家族の旅行プランを計画するような方がメインになると思いました。
―― eSIMというとギークな層が多いような印象を持っていたのですが、女性がターゲットというのは意外でした。実際、初めてみていかがでしたか。
新宅氏 最近の傾向を見ていると、想定した層が増えている実感があります。特にアジア圏はそうですね。人気はダントツで韓国ですが、韓国や台湾に関しては女性が非常に多かったですね。もちろん、男性にも人気の国(や地域)ですが、総じて見ると、20代、30代の女性が増えていて、読みは外れていなかったと感じています。ただし、もう少しペルソナの解像度を上げていくための試行錯誤はしていこうと思っています。
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