スポーツイベントの「動画SNS投稿禁止」はアリかナシか――SNS全盛時代に無視できない配信権問題:石川温のスマホ業界新聞
11月16日から19日まで開催された「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」では、KDDIが「新しいラリーの観戦スタイル」を提案する取り組みを行った。この取材で改めて思ったのが「レギュレーション(制限/制約)」がもたらすリスクだ。
11月16日から19日にかけて「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が愛知県豊田市で開催されているので、取材に行ってきた。とはいっても、モータースポーツ取材は二の次で、実はKDDIが大会にスポンサーしつつ、新しいラリーの観戦スタイルを実現しようというので足を運んだのであった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年11月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
KDDIではWellpine Motorsportとともにラリーカーにセンチ単位で位置情報を測位できるデバイスを搭載。車両の位置情報だけでなく姿勢などのデータを取得し、走行後、データを抜き出し、デジタル空間にラリーカーが疾走する様子を再現するという取り組みを行っていた。
KDDIが開発したというデバイスは測位するアンテナを2つ搭載しており、若干、設置位置がズレているため、クルマが向いている方向を再現できるというのが特徴だ。これにより、カーブの進入がどれくらいの角度なのかなども再現でき、デジタルツイン上での再現性が増しているのだ。
ここで「もったいない」と感じるのが、走行データをリアルタイムに取得できないという点だ。
実はレギュレーションによって、走行データを通信経由でリアルタイムに抜き出すのは禁止されているという。ラリーというレースは広大な面積を疾走して、タイムを競うものであり、観客からすればリアルタイムで様々なクルマの情報を知れれば、レースの見方が一気に変わってくるだろう。
ただ、国内で最も人気のレースカテゴリーである「スーパーGT」もリアルタイムの情報取得は禁止されているのだが、これをやると参戦するためのコストが上がるからというのが理由らしい。確かにチームに継続して参戦してもらうため、コストをできるだけセーブするというのも理解できなくはない。
ただ、クラッシュした瞬間も手元のスマホですぐに状況を確認できれば「ここの操作を誤ったのか」とレースの理解も深まり、さらに楽しくなるだろう。
実はリアルタイムの情報共有に積極的なのが、Netflixでのドキュメンタリー配信が好調で、アメリカを中心に人気が高まったF1と、今年、「SFgo」というアプリを配信し、リアルタイムに映像や車両データを配信しているスーパーフォーミュラだ。スーパーフォーミュラは数年前までスタンドで閑古鳥が鳴くほど、人気の無いカテゴリーであったが、今年はキッザニアをタッグを組んでファミリー層の取り込みを強化するなどして、最終戦は2日間合計で4万3000人が訪れるなど大盛況のシーズンとなった(観客を集めすぎて鈴鹿サーキット周辺が大渋滞し、予選を見られない観客が続出するなどの不手際も発生)。
また、スーパーフォーミュラはABEMAでも無料配信したことにより、ファン層を一気に拡大した模様だ。
スーパーフォーミュラが凄いのはSFgoで配信されている動画をキャプチャしてSNSに投稿してもOKというルールになっている。配信権に関してつべこべ言わずオープンな状況になっていることで、SNSで盛り上がりを見せているようだ。
その点、ラリージャパンは、スタジアムや公道でラリーカーを見つけて動画を撮影しSNSに上げるのは禁止されているという。
スポーツ中継に関しては、放送権や配信権が高額なため、SNSでの動画共有をNGにしたくなるのも理解できるが、もはやそんなことを言っていては、SNS全盛時代に取り残され、ファン離れが起きてしまうのではないだろうか。
関連記事
- 無人のauショップ、兵庫県のローソンに期間限定オープン 料金相談や手続きをリモートで
KDDIはローソン東浦町浦店(兵庫・淡路)に無人auショップ「auリモートお手続きブース」を設置。11月22日から2024年3月31日までの期間限定で実証実験を行う。営業時間は11時〜20時(休止時間は12時〜14時)。 - auが「Xiaomi 13T」とチューナーレスの「Xiaomi TV A Pro」を採用したワケ ファンイベントで語られた2社の戦略
Xiaomi Japanは11月18日に「au x Xiaomi モノづくり研究所」 を開催。Xiaomi新製品の特徴を振り返るとともに、ユーザーとXiaomi Japanが意見交換を行った他、クイズも開催された。その模様をお伝えする。 - 「TORQUE G06」は海上でも使えるアウトドアギアか 実際にヨットに乗って試してみた
京セラの「TORQUE G06」は、9月28日に発売され11月から個人向けに出荷が始まったアウトドア志向のスマホだ。京セラは5月に個人向け携帯事業からの撤退を発表しているが、「TORQUE」シリーズは継続するとしている。今回は本製品を実際に海上で使ってみた。 - auスマホとStarlinkとの“直接通信”は使い物になる? 海上での「緊急通報」を考える
提携先のSpaceXが「Starlink」用に打ち上げる低軌道人工衛星を活用して、KDDIが4G LTE携帯電話との“直接通信”サービスを2024年から提供する。まずSMSの送受信から開始されるのだが、遭難時(特に海上での遭難時)の緊急通報で使う際に考えられる課題について考察してみたい。 - 「メタバースは盛り上がっていない?」 KDDIが「αU」で模索する普及への道筋
KDDIが10月24日、メタバース上にさまざまなサービスを提供するプラットフォーム「αU(アルファユー)」のアップデートを発表した。αUでは、リアルとバーチャルをつなげ、音楽ライブやアート鑑賞、ショッピングをなどが楽しめる空間を目指している。メタバースを普及させるべく、KDDIはクリエイターエコノミーを加速させる。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.