4キャリアが能登半島地震のエリア復旧状況を説明 “本格復旧“を困難にしている要因とは(1/3 ページ)
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が合同で、能登半島地震のエリア復旧状況について説明した。道路が寸断して通れない、基地局へ向かえないことで復旧が難航している。船上基地局や衛星通信なども活用しているが、本格復旧のめどは立っていない。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は合同で、1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」における通信エリアの復旧状況について説明会を開催した。共同会見については4社で協議し決定。共同で行うことで「被災されている方、地元の方々に復旧状況を正確に伝えられるのではないか」と考えたためだという。
4社共同での会見となった。左からNTTドコモ 常務執行役員 ネットワーク本部長 小林宏氏、KDDI 執行役員常務 技術統括本部 副統括本部長兼エンジニアリング推進本部長 山本和弘氏、ソフトバンク 常務執行役員兼CNO 関和智弘氏、楽天モバイル 執行役員副CTO兼モバイルネットワーク本部長 竹下紘氏。4社共通の状況についてはドコモの小林氏が説明した
道路が寸断して通れない、基地局へ向かえないことで復旧が難航
最大震度7で、大津波警報も出た令和6年能登半島地震。前震、余震も含め震度5弱が15回を超える状況で、各社のネットワークは基地局の停電や基地局と通信ビル間の回線の断線が起こった。通信ビルをつなぎ、片方が断線しても別ルートで通信できるようにして信頼性を確保している回線も複数箇所が断線し、通信ビルも停電が発生するというような状況が、能登半島の各地で起きたという。
ネットワーク復旧のために、停電に関しては移動電源車、伝送路断に関しては仮設伝送路の敷設、基地局については移動基地局車や可搬基地局で対応。基地局の停電についても発電機や移動電源車で復旧対応している。
ただ、今回の地震では能登半島各地で土砂崩れ、トンネル崩落など道路自体が被害を受け、通行できない状況が続いた。さまざまな災害に備えて復旧活動を行ってきた各社だが、道路の状況は想定を上回り、復旧活動を困難にしたという。
「道路が寸断して通れない、基地局へ向かえない。また、道路が通ったとしても、天候で大雪が降るといったことが復旧を難しくした。地震や台風などの災害をいろいろ経験してきたが、これだけ被災した設備に行きづらかったのは今回の地震の特徴であり、われわれが一番苦労したところ」(ドコモ小林氏)
復旧は進んでいるものの、停電している箇所もまだ残っている。伝送路断、停電の長期化、そして道路が通れないことで移動に時間がかかり、復旧に時間がかかる状況。その中で応急復旧機材を最大限に活用し、復旧を進めてきた。
そして現在、立ち入り困難地域を除き、4社ともに応急復旧した。立ち入り困難地域も自衛隊や自治体と協力しながら、道路が通り次第、2日から3日で応急復旧を目指すという。応急復旧したエリアについては、停電解消、道路啓開、伝送路復旧後、電力会社や光回線提供会社と連携し、速やかに本復旧へシフトしていく。
ドコモはKDDIと共同で船上基地局を展開 長期運用する上での課題も
4社がそれぞれの取り組みについても説明した。
ドコモは17日に、立ち入り困難箇所を除き応急復旧を発表。最もサービス中断エリアが広かったのは4日、5日で、1日最大600人体制でエリアの応急復旧と避難所支援を同時に進めてきた。
サービス中断エリアに関しては、衛星携帯電話「ワイドスターII」を自治体、自衛隊などの災害対応機関に計344台提供。また、移動基地局車・可搬基地局を90カ所、移動電源車・発電機を81カ所に投入して応急復旧を行った。復旧とともに、設備の点検、移動基地局車への給油、土砂崩れで断線したドコモ自社の光ファイバー復旧も行っている。
また今回、陸路で入れないエリアに対応するため、KDDIとの連携で船上基地局も運用。船上から電波を吹くことで陸上をエリア化した。ドコモの小林氏によると、船上基地局の利用を決定したのは2日。災害の状況が分かり、沿岸部分の被災状況が大きいだろうと判断した。機材を準備して積み、船上での設備の設置やチューニング作業は暗い中では危険なので昼間に作業。停泊していた長崎から能登半島に移動し、1月6日から運用を開始した。「船上基地局の運用としてはかなり速やかに運用できた」(小林氏)と評価した。
当初は輪島市町野町沿岸、現在は輪島市大沢地区の沿岸に移ってエリア化している。自衛隊の協力を得て、ホヴァークラフトなどで復旧機材を輸送してもらったりもしたそうだ。
なお、船上基地局に関しては「エリアがしっかりでき、のべ1500人、かなり多くの方にご利用いただいた。非常に有効な手段であったと考えている」(KDDI山本氏)とする一方、荒れる日本海に長期間停泊していることによる苦労もあるという。
「船はNTTグループの海底ケーブル敷設船「きずな」で、その場にとどまり続けられるが、かなり海が荒れていて、船のスタッフは慣れているかもしれないが、われわれの基地局運用スタッフがり船の揺れに、かなり参ってしまった。作業員を1週間ぐらいで入れ替えないと体力的に持たない。食料なども含め、長期的に船を運用するときの問題をいかに解決するかが課題」(ドコモ小林氏)
KDDIの山本氏も、船での滞在期間が想定を超えて長期間になっていると語っていた。
避難所への支援も行っている。石川県のWebサイトや災害時情報集約支援チームISUT(アイサット)に載っている避難所をリストアップし、17日現在で277カ所の避難所を訪問。マルチチャージャーやモバイルバッテリーなどを設置した。避難所支援は引き続き行っていく。
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