異例ずくめのドコモ社長交代 若返りだけでない、前田義晃新社長の手腕に期待すること:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
NTTドコモは5月10日、代表取締役副社長を務める前田義晃氏を社長に昇格させる人事を発表した。前田氏は、2000年にリクルートからドコモに移籍した転職組で、iモード時代から、コンテンツやサービスなどの開発や運営に携わってきた。どちらかといえば、上位レイヤーのサービスを中心に活躍してきた人物で、ドコモの社長としては異例ともいえる抜てきだ。
NTTドコモは5月10日、代表取締役副社長を務める前田義晃氏を社長に昇格させる人事を発表した。代表取締役社長の井伊基之氏は、相談役に退く。前田氏は、2000年にリクルートからドコモに移籍した転職組で、iモード時代から、コンテンツやサービスなどの開発や運営に携わってきた。2017年には執行役員プラットフォームビジネス推進部長に就任。2022年からは、代表取締役副社長として、スマートライフカンパニー長を務めている。
スマホ時代には、「dヒッツ」「dマガジン」といったコンテンツサービスを手掛けた他、「dポイント」や「d払い」などのポイント、決済サービスもけん引してきた。どちらかといえば、上位レイヤーのサービスを中心に活躍してきた人物で、ドコモの社長としては異例ともいえる抜てきだ。では、前田氏の社長就任は、ドコモにどのような影響を与えるのか。同氏の所信表明などから、今後の展開を予想した。
異例ずくめの前田氏の社長就任、持株・島田氏は若返りに期待
前田氏の社長就任は、ドコモにとって異例づくしだ。1つ目は転職組であること。歴代社長はNTT出身者が多く、前々社長の加藤薫氏や、前社長の吉澤和弘氏も、ドコモ設立時から同社に在籍していた実質的な生え抜きだった。とはいえ、加藤氏、吉澤氏ともに入社時はNTT。入社がドコモ発足後で、かつ他社からの転職組というのは同社にとって初めてのことになる。
また、前田氏は現在54歳。井伊氏の社長就任時は61歳、吉澤氏が60歳、加藤氏が61歳だったことを踏まえると、大きく若返りを図っていることが分かる。歴代社長は、ネットワーク技術や端末開発、経営企画などに携わっていたことを見ても、コンテンツやサービスの経験が長い前田氏の経歴は異例といっていいだろう。
NTTの代表取締役社長、島田明氏は、「中途採用だとかはあまり考えていない。井伊社長も同じ考えだった」としながら、次のように語る。
「グループの中での中途採用も増えていて、今は4割近くが中途採用。これからも中途で採用された方がトップになったり、幹部になったりすることは十分想定される。そういう意味では、前田さんが社長になるのは象徴的な人事」
経営陣の若返りを狙う意味合いもあったという。前田氏と同時に社長に就任するNTTコミュニケーションズの小島克重氏やNTTデータグループの佐々木裕氏はともに58歳。島田氏は「3人ともに50代の社長だが、新しい世代に次の戦略を構築していってもらいたいと考えている」と語る。ドコモの井伊氏も、「さらに成長するためには、経営陣の世代交代が必要」と話す。
前田氏に期待しているのは、やはりスマートライフ事業の拡大だという。「ドコモの前田さんはスマートライフ事業をずっとけん引してきた。まさにこれから、スマートライフやグローバルなど、新たな事業運営の挑戦が続いていく。新しい事業をけん引してきた前田さんが、それをさらに飛躍させることを期待している」
井伊氏は、自身が就任以降、ドコモの組織体制を大きく変え、NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアを統合し、新ドコモグループを発足させた他、Web3を扱うNTTデジタルや、XRを事業化するNTTコノキューを設立。グローバル展開を図るためのNTTドコモ・グローバルも新設する予定だ。「経営基盤の再構築をリードしてきた」と自負する井伊氏だが、その「具体的な成果を結実させるステージは、前田さんに託したい」と話す。
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