KDDIの「Google メッセージ」採用で「+メッセージ」はどうなる? iOS 18のRCS対応も追い風に
KDDIは、Android端末の標準メッセージアプリとして、「Google メッセージ」を採用していきます。Google メッセージは、グローバルで標準化されたメッセージ規格である「RCS」に準拠しています。同じくRCSに準拠している「+メッセージ」の今後が気になります。
KDDIは5月16日、Android端末の標準メッセージアプリとして、「Google メッセージ」を採用すると発表しました。今後、同社が販売するAndroid端末にはGoogle メッセージがプリインストールされます。
米Googleは5月15日(現地時間)に公開したブログの中で、「KDDIやその他のパートナーと連携し、RCSによる最新メッセージ体験を日本でも提供できるように取り組んでいる」と発表しており、KDDIの発表はこれに合わせたものです。
Google メッセージアプリは、そもそもAndroidの標準アプリでもあります。ここにきて、標準アプリとして採用といわれてもピンとこない人もいるかもしれません。そこでいったん、日本のAndroidにおけるメッセージアプリやRCSの扱いについて整理したいと思います。
先んじてRCSを開始したGoogle 日本では独自の+メッセージを3キャリアが提供
SMSやMMSの代替サービスとして登場したRCS(Rich Communication Services)は、グローバル標準としてGSMAにより標準化されています。最初のバージョンは2008年に制定され、その後も改版を重ねていますが、発案からリリースまでが急だったということもあり、標準規格ではあるものの、採用しないキャリアがあったり、別キャリアとは通信ができなかったりなどの問題も抱えていました。
そうした状況は徐々に解消され、2016年には他の通信キャリアとも相互接続が可能なUniversal Profileがリリースされ、GoogleがAndroidでRCSに標準対応しています。2019年には、Googleが使用しているキャリアに関係なく、AndroidのGoogle メッセージでRCSを利用可能にしました。
RCS関連としては、日本では2018年にドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が共同でRCSサービスである「+メッセージ」サービスを開始しました。これはRCSではありますが、送信側、受信側ともに+メッセージを利用している必要があり、海外キャリアとのやりとりは不可。当初は3キャリアのみが利用できるサービスでしたが、現在は、各キャリアの回線を利用するMVNOでも利用可能となっています。いわゆるガラパゴス的なサービスではあるものの、主要キャリアが標準採用しているだけあり、2024年2月には利用者が4000万人を突破したと発表されています。
なお、第4のキャリアとして登場した楽天モバイルでは+メッセージは利用できません。楽天モバイルでは「Rakuten Link」で独自にRCSを展開していますが、利用できるのは楽天モバイルユーザー同士に限られます。
Google メッセージでRCSを使う方法 独自機能も実装
ちなみに、日本国内でもGoogle メッセージでのRCSは以前から利用可能でした。今回発表があったKDDIだけでなく、ドコモやソフトバンクなどでも利用できます。ただし、実際にRCSでやりとりするには、メッセージの送信先もGoogle メッセージでRCSが利用できることが条件です。
そんなGoogle メッセージですが、使い勝手としては従来のメッセージアプリと大きく変わりません。メッセージに対して絵文字でリアクションを返すことも可能です。またGoogle メッセージ特有の機能として、写真を絵文字のように使える「フォト文字」もあります。
![Google メッセージ](https://image.itmedia.co.jp/mobile/articles/2406/12/st52693_gmassage-03.jpg)
メッセージを選択すると表示されるメニューから右端のアイコンを選択すると、写真の選択になり、その写真を絵文字として利用可能。写真は被写体が自動で切り取られます。もちろん、相手にも同じフォト文字が表示されます
また、チャット相手の吹き出しの色、というかチャット全体のテーマカラーも変更が可能です。AppleのiMessageでは、たびたびグリーンラベル問題(iMessage同士では青の吹き出し、SMS/MMSでは緑の吹き出しになる問題)が取り沙汰されますが、そうした問題もありません。ちなみに、色を変更した場合、チャット相手の画面でも色が変わります。
![Google メッセージ](https://image.itmedia.co.jp/mobile/articles/2406/12/st52693_gmassage-04.jpg)
メニューからチャットごとにテーマカラーを変更可能。変更したカラーは相手側にも表示されます。左と中はPixel 7のGoogle メッセージで、こちらでテーマカラーを変更。右はGalaxy S24 Ultraで、テーマカラーが変更されたという通知が表示されます
なお、Google メッセージと+メッセージはSMSでは併用することができず、デフォルトアプリとしてどちらか片方を選ぶことになります。一方、RCSとしては個別に利用できます。デフォルトのSMSアプリにGoogle メッセージを選択した場合でも、+メッセージアプリを使えば、+メッセージユーザーとRCSのやりとりは可能です。+メッセージとGoogle メッセージのユーザー間ではRCSでのやりとりができませんが、SMSでのやりとりは可能です。
【更新:2024年6月12日20時00分 Google メッセージと+メッセージを併用できないのはSMSのみのため、一部加筆修正いたしました。】
iOS 18でAppleもRCSを採用 +メッセージはどうなる?
また、現状、AppleのiMessageはRCSをサポートしていないので、AndroidとiPhone間でRCSのやりとりを行うには+メッセージが必須となります。ただ、Appleは2024年秋にリリースするiOS 18でRCSをサポートすることを表明しているので、今後Google メッセージとiMessageでRCSのやりとりが可能になるでしょう。
こうなると気になるのが、+メッセージの今後です。KDDIのリリースを読むと、Androidの標準メッセージアプリとしてGoogle メッセージを追加で採用するものの、+メッセージから脱退するわけではないようです。+メッセージの今後について同社広報に確認したところ、「本日の発表は、Google メッセージを追加で採用するものでして、+メッセージは今後も提供してまいります。その他詳細な内容は、今後準備ができ次第、お知らせさせていただきます」とのこと。
とはいえ、共存できないサービスではあるので、KDDIとしては徐々に+メッセージからGoogle メッセージへと軸足を移していくことになるのでしょう。あるいは、+メッセージがGoogle メッセージなどを含めた他サービスとも通信できるよう、KDDIが音頭を取っていくとも考えられます。ユーザーとしては、この方がアプリを使い分ける必要もなく利便性も高くなるはずです。
+メッセージが今後どうなるのかは、ドコモやソフトバンクの発表待ちというところでもあります。なお、KDDIのGoogle メッセージの採用時期については、改めて知らせるとしています。
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