KDDIの5Gが“真の実力”を発揮、通信品質の評価を覆せるか 「5G SA」の本格展開も見据える:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIは、Sub6と呼ばれる5Gの3.7GHz帯、4.0GHz帯の出力増強やアンテナの角度調整の結果、関東のエリアが2.8倍に広がったことを報告。結果として、ユーザーが体感できる品質は、大きく上がっているようだ。KDDIがその先に見据えているのは、5G単独で通信が可能になる「5G SA」の拡大だ。
KDDIは、6月14日にネットワークに関する説明会を開催。Sub6と呼ばれる5Gの3.7GHz帯、4.0GHz帯の出力増強やアンテナの角度調整の結果、関東のエリアが2.8倍に広がったことを報告した。調整は約2カ月間かけ実施してきたが、既に関東での対応は完了している。KDDIはSub6のエリア拡大を2月に予告していたが、それを実現した格好だ。では、これによってどのような変化があったのか。その詳細をレポートする。
衛星干渉条件の緩和で出力アップ&アンテナ角度を調整、関東エリアは2.8倍に
KDDIは、3.7GHz帯、4GHz帯の5Gをそれぞれ100MHzずつ保有している。合計した帯域幅は200MHz。自ら基地局を持つMNOの中では、ドコモと並ぶ広さだ。ソフトバンクと楽天モバイルは100MHzずつのため、キャパシティーという観点ではKDDIとドコモが有利になる。基地局数は2023年度末で約3万9000局まで拡大しており、4Gから転用した5Gと合わせると9.4万局に上る。
ただ、これだけの基地局数があっても、Sub6のエリアは限定されていた。Sub6の一部が、衛星通信事業者の地球局と干渉してしまう周波数帯だったからだ。ドコモの4.5GHz帯はその影響が少なかった一方で、KDDIの3.7GHz帯、4.0GHz帯はどちらも出力を抑えたり、基地局のアンテナの角度をつけたりと、干渉を抑える条件がつけられていた。
KDDIの執行役員 コア技術統括本部 技術企画本部長の前田大輔氏によると、同社の場合、特にその制約が厳しかったという。その理由は、総電力にある。前田氏は、「衛星事業者の地球局に届く総電力はここまでというように決められていた。基地局が多いと、他社よりより出力を抑えないと干渉条件を超えてしまう」という。3万9000局の基地局を展開していたがゆえに、1つ1つセルの範囲をより絞らなければいけなかったというわけだ。
逆に言えば、この干渉条件さえ緩和されれば、抑えていた“真の実力”を発揮できるようになる。関東でそれが実現したのが、4月のこと。「衛星通信事業者のご協力のもと、地球局を移転していただくなどした。3月末をもってこれが完了し、干渉条件の緩和が実現した」(同)。これを受け、KDDIは4月、5月にSub6の基地局から発射する電波の出力を増強。アンテナの角度も、より広い範囲をカバーできるように調整した。
もともと、KDDIはSub6の出力を向上させることを2月に発表していたが、その際には、関東圏のエリアがメッシュ単位で2倍に拡大すると明かしていた。だが、実際には、1月末時点と比べ、エリアは2.8倍に広がっている。出力の拡大で2倍に拡大しただけでなく、アンテナの角度調整も加わり、さらにカバーできる範囲が広がったからだ。以下に掲載したエリアマップの写真を見ると、その違いが分かりやすい。
より詳細に言うと、「100メートル四方に区切ったメッシュが4.3万から12.2万にまで広がっている」(同)。これによって、例えば東京23区内であれば「データのログの8割、9割で5Gをつかむようになっている」(同)という。もちろん、ここには4Gから転用した5Gも含まれるが、ユーザーの体感としては、「5G」のピクトを目にする機会の方が多くなったといえる。
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