UQ mobileとpovoで“ahamo対抗”を打ち出すKDDI ネットワーク品質強化が差別化の武器に:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIは、英調査会社Opensignalの実施した通信品質調査で、過去最多となる13部門で首位を獲得した。さらに快適なネットワークをより生かせるよう、UQ mobileとpovoで新たなプランやトッピングを提供する。料金プランを技術的なバックボーンとして支えているのが、ここまで解説してきた通信品質の改善というわけだ。
KDDIは、英調査会社Opensignalの実施した通信品質調査で、過去最多となる13部門で首位を獲得した。他社と共同受賞しているものも2部門含まれているが、単独でも11部門で品質が評価されている。中でも、全国的な通信の安定性を示すことで各社が重視する「一貫した品質」部門で単独1位を取れたことは、同社にとって大きな前進といえる。この部門はソフトバンクが常連になっていたが、今回の調査ではKDDIが逆転した格好だ。
この受賞を受け、KDDIは10月17日に記者説明会を開催。通信品質が大きく向上した理由を解説した。さらに快適なネットワークをより生かせるよう、UQ mobileの「コミコミプラン」を「コミコミプラン+」に改定し、データ容量を30GBに増量。povo2.0にも1年契約で30GBを安価に使えるトッピングを導入した。では、KDDIはどのようにネットワークの品質を改善したのか。その理由とともに、同社の料金戦略を解説していく。
Sub6の出力増強で高速通信エリアが拡大、「一貫した品質」でもソフトバンクを抜き去る
「今回のOpensignalの調査は7月から9月の3カ月間で、Sub6が広がり、通信速度を引き上げることができた後。その3カ月を評価していただきNo.1の受賞につながった」――こう語るのは、KDDIのネットワーク部隊を率いる、執行役員 コア技術統括本部 技術企画本部長の前田大輔氏だ。KDDIは、衛星通信事業者の地球局が移転したことを受け、Sub6の出力を増加。アンテナの角度(チルト角)もより遠くに電波が飛ぶよう浅くし、高速通信可能なエリアを一気に拡大した。
もともと衛星局との干渉が大きく、出力を抑えていた首都圏では、これを増強したことでエリアが2倍に拡大。さらに、アンテナのチルト角の調整によって、2.8倍までエリアが広がった。これによって、Sub6でつながる頻度が上がり、平均スループットが向上。遅延も少なくなり、より快適に通信できるようになった。ネットワークが混雑しやすい都市部で厚みのある5Gを展開でき、平均を底上げできたのが「一貫した品質」部門で1位を獲得した決め手になったと見ることできる。
実際、全国平均で20Mbps以上のスループットが出る割合は1月が91%だったのに対し、9月には95%に向上。このうち、より速度の速い50Mbps以上となる割合は増加率がさらに高く、71%から82%まで拡大している。遅延も同様で、オンラインゲームに推奨される応答時間の30ms以下になる率は、1月に88%だったのに対し、9月には92%まで増加。より低遅延の20ms以下に絞ると、51%から71%まで比率が上がっている。
ダウンロード速度が上がると、動画の読み込みがスムーズになり、自動調整している場合だと画質も上がりやすくなる。遅延についても同様で、ネットワーク品質改善後は、VRコンテンツでの動作がより操作に追従するようになり、動きが滑らかになった。こうしたコンテンツの挙動の変化こそが、Opensignalの調査で重視されている体感品質。前田氏は「お客さまが使われるアプリケーションを評価するため、こういうバランスで評価しているのかというのは勉強になった」と語る。
Opensignalのスコアを時系列に追うと、ソフトバンクがやや数値を落としているのに対し、KDDIが大きく伸び、順位が逆転したことが見て取れる。4月に発表された調査ではソフトバンクが84.3点だったが、KDDIは82.2点で楽天モバイルを下回っていた。これに対し、今回の調査では、KDDIは84.4点だった一方で、ソフトバンクは82.9点にスコアを落としている。「Opensignalのメダルを取るためにがんばってきたのではない」と断言する前田氏だが、「一貫した品質」部門のスコアでソフトバンクを逆転できたのは、大きな成果と捉えているようだ。会見でも、「ソフトバンクにようやく追い付き、追い越すことができた」と本音をのぞかせた。
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