「ミリ波対応スマホ」の値引き規制緩和で感じた疑問 スマホ購入の決め手にはならず?(2/2 ページ)
総務省は、5G通信の「ミリ波」に対応する端末の値引きを6万500円まで緩和する方向を打ち出している。割引額に1万6500円を上乗せする形になるが、その根拠は乏しいと考える。仮に割引額がアップしたとしても、スマホ購入の決め手にはならないだろう。
規制緩和も市場環境に大きな影響なし? 普及のカギはiPhone
規制緩和を踏まえて廉価な「ミリ波対応端末」が登場するとも考えにくい。この値引きを最大限に使うためには端末価格が12万1000円以上である必要が出てくる。それより廉価な端末では、従来通り最大半額の値引きしかできない。
極端な話だが、6万円の端末が仮にもミリ波対応だとしても、6万円の割引を使って一括1円にすることはできない。規制緩和によって、廉価端末にミリ波対応の流れが来ることはしばらくないだろう。
今回の値引き規制の緩和は恒久的なものではなく、ミリ波対応の端末が普及したら、現状と同じ4万4000円に戻す方針だ。意見案としては出荷台数ベースで50%以上がミリ波対応の端末になった場合、規制緩和を終了すべきとしている。ある種のボーナスタイム的な考えだ。
5Gスマートフォンに占めるミリ波端末の割合は約5%にすぎないが、日本のiPhoneがミリ波対応すれば、25〜30%まで上昇すると考える。これらが2〜3世代にわたって置き換わること、追従して他メーカーの機種もミリ波対応になっていくことを考えると、仮にも「ミリ波対応のiPhone」が登場してから3年程度は続きそうな印象だ。
日本でのミリ波端末普及の起爆剤は、間違いなくiPhoneだと考える。特に標準モデルが対応してくれば12万円前後からの価格となるので、規制緩和後は満額の値引きが利用できる。これを機に日本向けにミリ波対応のiPhoneを投入するかの可否が、日本での「ミリ波対応の普及促進」のカギになるだろう。
これ以外にも10万円前後の端末へミリ波対応が進むものと考えている。値引きを最大限に使えるのは12万1000円を超える機種だが、この価格帯には、Galaxy S24やPixel 9といった人気機種も多い。AQUOSも積極的にこのセグメントに商品を投入してくるのではないかと考える。
割引を行うか否かは通信キャリア次第にはなるが、人気機種を中心にミリ波に対応してくれば購入しやすい環境が整ってくる。一方で、市場の変化に追い付き切れていない規制緩和の根拠は、いま一度検討してほしい。
多くの消費者にとってスマートフォンがミリ波に対応したところで、購入の決め手にはならない。思い切って「10万円を上限に端末価格の半額」くらい値引きできるといったインパクトが欲しい。高性能な端末がお得に使えるなら、ミリ波対応の文言以上に多くの消費者にとって購入の決め手になる。それがミリ波に対応していれば、着実に普及していくと考える。
ミリ波端末の値引き規制緩和について、総務省は2024年10月5日から11月5日まで意見を募集していた。その結果を踏まえて審議を行い、総務大臣に答申を行う予定。改正内容は12月上旬に公布され、12月26日施行予定としている。
この規制緩和が実現したら、通信キャリアも人気端末を中心に、上限いっぱいまで値引きする施策を打ってくるだろう。12月の動向を注視したい。
著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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