シャープに聞く「AQUOS sense9」の進化と「AQUOS R9 pro」を作ったワケ 根底に“AQUOS R9の刷新”あり(2/4 ページ)
2024年にスマートフォンAQUOSのデザインを刷新したことに伴い、「AQUOS sense9」も見た目や中身が大きく変わっている。同時に発表された「AQUOS R9 pro」では、カメラに特化したスマホというコンセプトをより先鋭化させた。シャープはこの2機種をどのようなコンセプトで開発したのか。
ガジェット的な部分は残しながら品位を共通化している
―― ちょっと話は変わりますが、賛否両論あったという新しいデザインもAQUOS senseにはとても合っているような気がしました。ミッドレンジで誰でも持ちやすそうなところとか。
清水氏 良くも悪くもガジェット感がないですからね。機能を表現していたこれまでのAQUOSを気に入っていた方には、拒否感があるかもしれませんし、逆にAQUOS R9 proはそういうところを意識して、ガジェット的な部分は残しながら品位を共通化しています。
中江氏 AQUOS sense9では、バイカラーにも挑戦しました。遊び心があって、持っていて楽しく、ファッション的な感覚でケースを組み合わせることができます。そういった楽しみ方も含めて、日常的に使うアイテムとしての印象もつけられたかなと思っています。
清水氏 デザイン刷新後は、どういうシーンで使うのかというところから逆算して、形状やカラーを考えるアプローチを取っています。今までは、物自体がかっこいいか、きれいかというやり方でしたが、これだったら家具などのインテリアと合うか、ソファなどのファブリックと合うかということを考えています。
中江がファッションと申し上げましたが、AQUOS sense9は、どういう複数の方が選ぶのかというところも強く意識しました。ブルーであればジーンズやチノパンに無地のシャツ、もっと落ち着いたスーツのような服装であればベーシックなカラーというように、デザイナーが工夫しています。
―― ケースとも組み合わせられるようになっているんですよね。
清水氏 どの色にどの色のケースを組み合わせてもいいよう、バランスを考えて作っています。私が今手に持っている端末はブルーにグリーンのケースを着けていますが、この組み合わせもカメラ部分との相性がいいですよね。
―― なるほど。ここでバイカラーが生きてくるわけですね。
清水氏 はい。これまでは、カメラ部分が全て黒でした。コスト面ではそちらの方が有利ではありますが、そこにあえて色をつけることでこういった楽しみ方が生まれます。
―― 形状が丸みを帯びているところも、ユーザー層や使い方に合わせたのでしょうか。
清水氏 その通りです。よりカジュアルな使い方で、スマホにどっぷりつかっているわけではないお客さまをイメージしています。よりリアルな日常生活の中で、サッと出せて取り回しがしやすいことが求められるので、サイズも6.1型と今どきのスマホとして小さくなっています。角も丸くして、カバンから取り出す際に引っ掛かりにくい。ディスプレイとの兼ね合いもありますが、そういった考え方でよりカジュアルにしています。
―― 手当たりもいいですね。
中江氏 AQUOS sense9は手のひらサイズなので、特にそう感じるかもしれないですね。この辺は、コンセプトに合わせています。
清水氏 デザイントレンドもありますが、丸みを帯びさせようとすると内部に少し遊びが必要になるので、スペック上の数字との戦いになります。さらに限界まで電池容量を増やして9mmなり8.9mmなりに抑えたいとなると、ピチピチの形状になってしまいます。ここは毎回せめぎ合いにもなります。これは私の予想ですが、どのメーカーも同じように考え、最近はスペックを取ることの方が多いのではないでしょうか。
―― そんなAQUOS sense9ですが、発売してからの売れ行きはいかがですか。
中江氏 まだこれからのところもありますが、KDDIさん(の店頭)が販売先に入ったこともあり、初速はAQUOS sense8比で約1.5倍に伸びています。
清水氏 AQUOS sense8は、auがオンラインストアだけだったことや、販路でいうとソフトバンクの取り扱いがなかったこともあります。ソフトバンクは「AQUOS sense7」のときも、「AQUOS sense7 plus」だったので、無印のsenseを販売するのは「AQUOS sense5G」以来になります。
AQUOS R9 proは「本当にカメラを作った」といえるインパクトを追求
―― 同時に発表されたAQUOS R9 proにも驚きました。AQUOS R9のときになかったので、今年(2024年)はてっきり見送ったのかと思っていました。デザインも機能も振り切っていますね。
中江氏 本当に振り切った感じにしました。勇気がいる決断ではありましたが、「本当にカメラを作った」と言われるぐらいのインパクトを突き詰めていったら、この形になりました。
清水氏 20万円ぐらいのスマホを誰が買うのか、ということもあります。これができたのはAQUOS R9の存在も大きく、ハイエンドの要素を持ったいわゆる普通のハイエンドスマホがあったので、その上の20万円のものはもっと振り切ることができました。スマホの可能性を先に進めるのが、フラグシップモデルの役割です。では、その次は何かというときに、今までやってきた1型センサーの資産を掛け合わせてカメラ超えを目指しました。デザインした三宅(一成)さんには、カメラコンセプトで提案をお願いしますと言ったところ、この形が出てきました。
中江氏 カメラリングの部分は、もっとスマホっぽくボカしたデザイン案もありました。ただ、それだと箱を開けた瞬間の驚きがない。一番のフラグシップは、「おっ」と思われる驚きが重要な要素だと思っているので、こちらに決まりました。
―― 競合だと、Xiaomiも「Xiaomi 14 Ultra」がカメラ風のデザインでした。発売タイミング的に見て、偶然重なってしまったのだと思いますが、やはりカメラ重視だとこうなるのでしょうか。
清水氏 デザイン上、横持ちが正解というのがパッと見で分かります。細かいところだとロゴの向きもそうですし、AQUOS R9 proは背面の左側面にデジタルカメラっぽい余白もあります。縦にすると左右非対称になるので、そちらを上にして横持ちするということが分かります。このパーツも、途中までアルミでパネルを作っているので段差ができ、内部構造的には難しくなるのですが、それをあえて加工しています。
また、カメラリングはダイヤカットされていますが、ここも使っているうちにつぶれてしまわないよう、平面を持たせてそこが接地するようになっています。AQUOS R9 proにはAQUOS R9とデザイン言語を一緒にしたサンプルもありましたが、やはり何かが違う。ガジェットが好きな方向けという役割のものなので、根底の考え方はキープしつつも、届ける方の違いをデザインで表しています。
―― 大型のシャッターキーがちゃんと付いているのは、AQUOS R9 proならではですね。
清水氏 ここのくぼみも、横持ちしたときに指が自然に当たるようにしています。半押しももちろんでき、ボリュームキーを使ったズームの調整もできます。この設定は変更もできます。個人的なお勧めは露出の調整で、ズームよりそちらにした方が使いやすいですね。
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