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5日で登録数120万、「mixi2」がロケットスタートを切れたワケ 既存SNSが抱える“混乱”を打破できるか(2/2 ページ)

MIXIが2024年12月16日に提供を開始した新しいSNS「mixi2」が、サービス開始から5日で登録者数120万を突破、好調な出だしを見せている。初代「mixi」から20年余りが経過した現在、なぜMIXIは新たなSNSにチャレンジするに至ったのか。また、既存SNSが抱える不満を解消できるかは未知数であり、真に定着するかどうかはまだ予断を許さない。

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「X」だけではない、既存SNSが抱える不満と混乱

 そして現在のタイミングでmixi2をリリースしたのはなぜかといえば、やはりここ最近のSNS、とりわけXを巡る混乱が少なからず影響しているだろう。Xは実業家のイーロン・マスク氏がTwitterを買収して名称を変更したサービスであることは多くの人が知るところだが、Xとなって以降サービスが大きく変化し、荒れたコミュニケーションも増えるなど混乱が強まっている。

 それゆえ、Xと同様の短文コミュニケーションを求めながらも、Xに不満や不安を抱くようになった人達が増えており、その受け皿となるべくここ最近、新しいSNSが増えている。主なものとしては、米メタがInstagramをベースに展開した「Threads」や、Twitterの共同創業者だったジャック・ドーシー氏が立ち上げた(その後離脱)「Bluesky」などが挙げられる。

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Xの混乱を受ける形で他社が短文主体のSNSに力を入れる動きは強まっており、メタの「Threads」も一時と比べ関心が落ちたとはいえ、改善を重ね地道に利用を拡大している

 mixi2も短文によるコミュニケーションに重点を置いていることから、やはりXに不満を抱く人の受け皿として提供されたサービスの1つと見ることができよう。だがMIXI側の発表内容を確認すると、もう1つ、既存のSNSに対する不満を解消したい狙いもあるようだ。

 それは既存SNSの多くが、レコメンド主体のサービスになってきていること。以前のSNSは、フォローした友達の投稿が時系列に表示されるシンプルな仕組みのものが多かったが、最近ではSNS各社がレコメンド機能を強化しており、レコメンドエンジンが上位に表示する内容を決めるようになってきている。

 だがそれは必ずしもユーザー同士のコミュニケーションにつながるものではなく、MIXI側の説明によると、レコメンドによってSNSのニュースメディア化が進んでいるという。そうしたことからコミュニケーションというSNSの原点に立ち返り、日々の出来事を投稿したり、身近な友達などと交流しやすくしたりすることを目的として、mixi2が提供された側面も強いようだ

定着してもビジネスや社会的課題が多いSNS

 そのmixi2が登場したのが、Xの仕様変更による混乱が一層強まり不安を抱く人が増えたタイミングであったこと。そして30、40代以上に抜群の知名度を持つmixiのブランドを冠したサービスだったこともあって、mixi2がうまくロケットスタートを切ることができたことは確かだろう。

 だがその勢いが今後も続くかどうかは分からない。かつての「Clubhouse」のように、一時期大きな話題となりユーザーを集めたが、その後急速に関心が薄れ注目されなくなったコミュニケーションサービスは多く存在する。mixi2が多くの人に利用され、真に定着するかどうかはまだ予断を許さず、当面見極めが必要だろう。

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音声主体のSNSとしてコロナ禍に大きな注目を集めた「Clubhouse」だが、その後急速に関心が薄れ利用は減少している

 また、サービスが多くの人に定着したからといって、それで安心というわけでもない。SNSは大きなユーザー基盤を抱えてもなお、その上でビジネスを展開し、収益を高めるのは非常に難しいからだ。

 実際Twitterは、利用者数を大きく伸ばすことはできたがビジネス面で課題が多く、赤字体質が続いていた。それがイーロン・マスク氏による買収につながった側面も否定できず、買収直後にコスト削減のため、多くの社員を解雇したことでも注目を集めていた。

 一方で、SNS最大手のメタは広告を主体として大きな収益を挙げているが、それは先にも触れたレコメンドを広告に活用している部分も多く、利用者の不満にもつながっている部分も少なからずある。加えてFacebookやInstagramなどでは2024年、国内で有名人のなりすまし詐欺広告が多数表示され大きな社会問題を招いた上、メタ側の対応の遅さから日本政府が動く事態に至るなど、ビジネスの先鋭化が社会問題を引き起こすケースも見られるようになってきた。

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国民生活センターが2024年5月29日に公表した、SNSをきっかけとした著名人を名乗る詐欺行為に関する相談件数と平均契約購入額の推移。現在は落ち着いたが、一時はトラブルが急増し、大きな社会問題となっていた

 それゆえ、mixi2が人を集めた後、どうやって収益化していくのか? という点は非常に大きな課題となってくるだろう。収益化への注力によって居心地の悪い場所となってしまえばたちまちユーザーは離れてしまうだけに、非常に難しい判断が求められる所ではないだろうか。

 そしてもう1つ、mixi2にとって大きな課題となりそうなのが18歳未満の未成年ユーザーの扱いだ。世界的にも未成年のSNSを巡るトラブルは増加傾向にあり、オーストラリアでは未成年のSNS利用を禁止する法案が提出されるなど、SNS運営会社側が社会的批判を大きく受ける状況にもなっている。

 それだけにSNSで未成年のユーザーを扱わないことは、企業にとって不要なトラブルを避け、リスクヘッジとなり得ることでは確かだ。だがmixi2がユーザーの規模を求められるにつれ、その姿勢を維持できるかは分からない。

 実際、mixiでは環境変化や競合の台頭によって18歳未満の規制を撤廃した過去もある。将来的な話にはなるだろうが、未成年を巡るMIXI側の判断も、今後大いに関心を呼ぶ所ではないだろうか。

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