「闇バイト」や「オンラインカジノ」から子どもを守るには 親がすべきこと、見直すべきスマホの設定(1/2 ページ)
昨今では、ふとしたきっかけで犯罪に手を染めてしまう10代も増えています。その1つである「闇バイト」では、応募すると強盗や詐欺などの犯罪を実行する役目を担わされます。闇バイトから子どもを守るために、保護者としてはどんなことに注意すればいいのでしょうか。
進級、進学の季節が近づいています。新たに子ども専用のスマホを持たせるご家庭も多いでしょう。こども家庭庁「令和5年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、10歳で65%の子どもが自分専用のスマホを持ち、13歳では9割を超えています。
専用スマホの所有が低年齢化した今、保護者が見守る範囲も多岐にわたるようになりました。昨今では、ふとしたきっかけで犯罪に手を染めてしまう10代も増えています。
その1つが、「闇バイト」です。闇バイトとは、高額報酬や即日払いをうたって募集されるバイトで、応募すると強盗や詐欺などの犯罪を実行する役目を担わされます。闇バイトは、SNSやネットの掲示板で募集されます。例えば、Xで「高額バイト」「即日即金」などと検索すると、闇バイトの募集投稿がすぐに見つかります。
特徴としては、業務の内容がはっきり分からない点があります。「運び」とは何を運ぶのかが不明瞭で、現金やクレジットカードの可能性もあります。「UD」は「受け子・出し子」を指しています。また、報酬が高すぎる点、「ホワイト案件」とわざわざ記載している点なども闇バイトの可能性を示唆しています。
警察庁の調べでは、令和5年1月から同年7月末までに検挙された被疑者の約半数が「SNSから応募」と答えています。SNSはXだけでなく、Instagramが使われることもあります。また、ネットの副業サイトから応募するケースもあり、LINEでやりとりしているうちに「Telegram」アプリに誘導されます。
また、地元の先輩など、知り合いから誘われることもあります。上記の調査では、27.5%が「知人等紹介」と答えています。警察庁がまとめた相談事例には、「地元の先輩からInstagramを通じて高額バイトを紹介され、『Signal』のインストールを求められた。Signalで紹介された相手方から個人情報の送付を求められたので断ったところ、"探しに行くぞ"などと言われた」件が掲載されています。
他にも、一般的なアルバイトも掲載されている求人サイトにも闇バイトが紛れ込んでいることがあります。大手求人サイトやスポットワーク応募サイトに闇バイトが掲載されていたことから、厚生労働省は2024年11月に事業者へ対応を要請しています。
闇バイトに応募するとメッセージアプリで連絡
SNSなどから闇バイトに応募すると、どのような流れで犯罪に行きつくのでしょうか。
先ほど、「Telegram(テレグラム)」や「Signal(シグナル)」というアプリが闇バイトの連絡ツールとして使われていると説明しました。闇バイトは、XやInstagramなどを入り口に使いますが、そのままそのサービスを利用せず、TelegramとSignalでのやりとりに移行することが多いようです。
TelegramとSignalは秘匿性が高いメッセージアプリで、通信を暗号化しており、サービス提供企業も含めた第三者がメッセージを読むことができません。また、相手がメッセージを読むと自動消去したり、送信したメッセージをお互いのアプリから削除できたりと、犯罪にまつわる証拠を隠蔽(いんぺい)できます。
TelegramやSignalをインストールし、相手とつながると、アルバイトを始めるために必要な情報だとして、個人情報を要求されます。一般的なアルバイトのように名前や住所だけでなく、運転免許証や学生証、マイナンバーカードの写真などを求められます。つまり、顔写真付きの身分証明書です。また、家族の勤務先や家族構成なども聞かれるようです。
こうした個人情報を相手に伝えると、相手は仕事の内容を明かしてきます。特殊詐欺の受け子や出し子、強盗の下見や運転手役、新規契約したスマホを譲渡するバイトなどがあります。
この段階で仕事を断ろうとしても、相手は個人情報を使って脅しをしてきます。「自宅に押し掛ける」「家族の勤務先に行く」など、犯罪を実行しなければならないと思わされる状況を作り上げられてしまいます。「バレないから大丈夫」「いざとなったら守るから」などと説得されることもあるようですが、実際に警察に検挙されるとあっさり切り捨てられます。
2024年10月には、中学生と高校生のあわせて3人が強盗予備で逮捕されています。3人は山口県光市の住宅に強盗に入ろうとして逮捕されましたが、互いに面識はありませんでした。SNSで闇バイトに応募し、Singalで連絡を取っていたことが分かっています。
実は、相手も犯行グループの首謀者ではなく、リクルーターとして使われているだけにすぎないことも多いようです。2月に大阪府警に逮捕された32歳の男は特殊詐欺の実行役も行っていましたが、闇バイトの応募者100人以上の勧誘に携わり、個人情報を指示役に伝えていたそうです。
オンラインカジノと闇バイトの関係
闇バイトに応募する人は、言うまでもなく「お金が欲しい人」です。とはいえ、お小遣いが欲しい人から生活費が足りなくて困窮している人まで、さまざまでしょう。
先日、芸人がオンラインカジノで賭博を行ったとして事情聴取を受けているニュースが報じられました。オンラインカジノとは、ネットでルーレットやスロット、スポーツ賭博などを実際にお金を賭けて行うものを指します。海外では合法でも日本では違法なのですが、オンラインカジノが違法であることを認知している人が少ないといわれています。なぜなら、ゲームアプリやサイトなどにオンラインカジノの広告が流れており、スマホで簡単に利用できてしまうので、特に違法であるように思えないからです。
オンラインカジノにハマってしまった10代もいます。2024年3月には、オンラインカジノの資金が欲しいために無登録で暗号資産を電子マネーに交換し、300万円相当を受け取った高校生が書類送検されています。
オンラインカジノと闇バイトには深い関係があるとも言われています。「ギャンブル依存症問題を考える会」の調査によると、ギャンブル依存症の3人に1人が犯罪行為を行い、230人中30人が口座売買などの闇バイトを行っていたそうです。
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