その言葉、“闇バイト”かも スマホ文字入力「Simeji」が警告機能 きっかけはSNSでの声(1/2 ページ)
中国の検索エンジンBaidu(バイドゥ)は文字入力アプリ「Simeji(シメジ)」(Android/iOS)に“闇バイト”対策の機能を実装した。闇バイト関連の文字を入力すると、キーボードの上部に注意喚起の文言が表示される。Simejiの闇バイト対策機能は一体どんなものなのか、実装の背景は何かなどを、Simejiの運営責任者である古谷由宇氏に聞いた。
中国の検索エンジンBaidu(バイドゥ)は文字入力アプリ「Simeji(シメジ)」(Android/iOS)に“闇バイト”対策の機能を実装した。闇バイト関連の文字を入力すると、キーボードの上部に注意喚起の文言が表示される。近年、闇バイトによって強盗事件や特殊詐欺などの片棒を担がされ、罪に問われる事例が増えている。Simejiの闇バイト対策機能とは一体どのようなものか、実装の背景は何かなどを、Simejiの運営責任者である古谷由宇氏に聞いた。
Simejiはもともと純国産の個人開発アプリ
Simejiはエンジニアの足立昌彦氏とデザイナーの矢野りん氏の2人が開発した純国産アプリ。この前身のサービスは2008年11月に始まり、当初はAndroidスマートフォンのみに対応していた。そして2011年12月にはバイドゥが全事業を取得した。
バイドゥが事業を引き継いで以降、クラウドを介して変換候補を予測する機能や、辞書に登録された顔文字や絵文字などを充実させ、2014年9月にはiOSにも対応し、AndroidのスマートフォンだけでなくiPhoneでもSimejiで文字入力を行えるようになった。
2017年6月には音声入力へのAI活用を発表。バイドゥの音声認識(Speech recognition)分野のAI技術を音声入力に、自然言語処理分野のAI技術を句読点などの配置に活用した。音声入力内容から顔文字、絵文字を予測し変換候補を提示する機能も実装した。
闇バイト対策機能、なぜ実装? 実は高校生と共同開発した機能を流用
闇バイト対策の機能はSimeji公式Xアカウントが10月23日に発表したもので、特定のキーワードの入力で注意喚起を出す機能だ。具体的には「こうがくばいと」「ほわいとあんけん」「きんけつ」「げんきんぷれぜんと」「そくじつそっきん」を入力するとキーボードの右上に、「闇バイトに巻き込まれる事案が増えております。ご注意ください」と警告文言が表示される。12月20日時点では「うらばいと」「にうけ」「らくしてかせぐ」「こうがくほうしゅう」が追加されている。
どのような経緯で実装に至ったのか。古谷氏は「大学生の男性が逮捕されたこと、そして、逮捕された本人は闇バイトの自覚がなかったことがメディアに大きく取り上げられたことがきっかけだったと記憶しています」と前置きした上で、「若い子たちが高額なバイトをSNSで探しているような投稿がいくつか散見されました」という。
投稿の中には「文字入力の段階で注意喚起できないのか、という声もあった他、Simejiのユーザーの中にはありがたいことに、Simejiだったらやってくれそう、というコメントが一言あった」のも実装に踏み切った「きっかけ」になったそうだ。入力した文字に対して注意喚起を行う機能自体は「Simejiで既に実装していた」(古谷氏)ため、「闇バイトの問題を受けて、検索をする段階で(注意喚起を)行えないかと思い、調整した」という。
入力した文字への注意喚起はバイドゥと函館西高校(北海道函館市)の生徒と共同開発したもので、バイドゥが2024年8月15日に発表した。「目の前のキャンペーンや企画にフォーカスしてしまいがちだったところに、2023年11月、テキストコミュニケーションによって起こりがちな勘違いを防げないか、という問い合わせが生徒から直接あった」(古谷氏)というのが事の発端だ。
例えば、「きもい」と軽い気持ちで入力した本人とは裏腹に、受け手は文字で感情が読み取れず、重く捉えてしまう。それを防ぐのが、バイドゥと高校生が共同開発した新機能だ。Simejiで「きもい」と入力すると、「誤解を招く恐れがあります」と注意喚起が出る。
この機能を流用する形で、「注意喚起の対象とする言葉を増やして、注意喚起の文言は変えて出す」(古谷氏)ような改良を行い、10月に実装したのが闇バイト対策の機能というわけだ。「開発チームは明日(大学生逮捕の報道日の翌日)の実装でいいのではないか? という感じでしたが、開発のリソースはかからないし、検索をしている人達がいるのであれば、1分1秒でも早く実装した方がいい」(古谷氏)と考え、早急に動いた。
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