PayPayと三井住友カードの“大連立”が生まれた背景 ソフトバンクの携帯料金値上げも抑えられる?(3/4 ページ)
三井住友カードとソフトバンクは5月15日、デジタル分野における包括的な業務提携に合意したと発表した。三井住友カードのOliveやPayPayなどの連携によって、新たな取り組みを展開していく。三井住友カードとソフトバンクの連携においては、まずはソフトバンクがヘルスケアサービスをOlive向けに提供する。
大連立の意義と経緯 「クレジットカード対QRコード決済」の対立軸ではない
PayPayがスタートした2018年は、国のキャッシュレス推進施策もあって、三井住友カードでも事業を拡大してきた。年間500万会員増加するという「業界トップ」(中島社長)の拡大を遂げており、さらに加盟店向けに提供する決済サービスとセットになった決済端末stera terminalは2024年度末までに47万台を突破。Oliveの利用者も570万アカウントに達し、順調に拡大。年間取扱高は、2018年の16兆円から2024年の39兆円まで成長した。
SMBCグループにとって三井住友カードは、「グループのリテール事業の中核を担うとともに、デジタル戦略をけん引する存在」(同)となった。さらに中小法人向け金融サービス「Trunk」を開始し、SMBCグループの基幹サービスでも開発をリードする立場にあるという。
「三井住友カードを核とした、SMBCグループのデジタル戦略をさらに大きく前進させる意義深いもの」。今回の提携について、中島氏はそう強調する。
SMBCグループにとっては、Oliveを起点とするリテールビジネスの進化を加速。Oliveは「1つの商品を超えて、個人向けの金融/決済サービスの在り方、ビジネスモデルを変えるゲームチェンジャー」(同)であり、加えて証券、保険、ローンといった金融サービス、さらに非金融サービスへもサービスを拡大させている。
デジタル化によって店舗や対面サービスの在り方も変えているOliveに対して、「進化の鍵となるのがデジタルとAI」だと中島氏は言う。そこで提携するソフトバンクのデジタルサービスやAI技術は、同社のOliveを活用したリテールビジネスの変革を加速する、と中島氏は強調。さらにリテールビジネスだけでなく、SMBCグループ全体に広げていきたい考えを示した。
SMBCグループに対しては、さらにキャッシュレス戦略の加速という意義もあるという。事業者、利用者の2つの視点から、決済の課題を解決してキャッシュレス社会の実現につなげていくことが狙いだ。「クレジットカード対QRコード決済」という対立軸ではなく、ユーザー目線で「三井住友カードとPayPayを持っていれば(支払いは)大丈夫、という社会を実現していきたい」と中島氏は言う。
質疑応答でも中島氏は「利用者目線」という言葉を繰り返し、競合との競争や対立といった事業者目線ではなく、2つのサービスが連携することによる「プラスα」の提供をアピールする。
「直接(ソフトバンクの)宮川氏と(PayPayの)中山社長ともじっくり話をして、お客さま起点で最高のサービスを提供する志を共有できたことが提携に至った背景」(中島氏)だという。
宮川氏は、「コード決済ナンバー1のPayPayと、クレジットカードナンバー1の三井住友カードの連合で、利便性の高いサービスを提供したい」と話す。ソフトバンクは、主にオンラインサービスを提供する約300社を抱えており、この同社経済圏に、OliveとTrunkの利用者をつなげていきたい考えだ。
「これまでは一見するとPayPayと三井住友カードが対抗軸のように見えていたかと思う」と大西氏。三井住友カードはOliveやタッチ決済、交通機関のタッチ決済乗車、Trunkといった新しいサービスに注力してきた。それに対してPayPayは、「消費者が日常使う決済手段になったのは紛れもない事実」だと大西氏。
多くの人がクレジットカードとPayPayを使い分けているのが現実で、ユーザー視点に立てば、「クレジットカード対コード決済」という対立軸ではなく、両方をスムーズに使い分けられることが一番のニーズだと判断した。今回の「ナンバー1同士の大連立」(大西氏)につながった。
もともと、宮川氏が大西氏に対して「Oliveにヘルスケアの機能を入れてほしいとセールスをしていた」ときに、話がどんどん膨らんでいって提携につながったという。同時に大西氏と中山氏が話し合う機会があったことで、次第に形作られていったという。
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