「Galaxy S25 Edge」の薄型化は“逃げの進化”なのか? iPhoneに先手を打つサムスンの戦略と不安要素(3/3 ページ)
近年、スマホの「薄さ」に特化した端末が注目を集めている。なぜ、今、このような新しいトレンドが生まれているのだろうか? そこでこの記事では、スマートフォンの薄型化が進む背景を探ってみたい。
実は薄型化では直近で1敗のサムスン 薄型スマホで起死回生を図れるか
サムスン電子は、最近の薄型化競争において、折りたたみスマートフォンの分野で後れを取っている。特に、薄型軽量化とバッテリーの大容量化において、その傾向が見られる。Galaxy Foldを世界初の実用機種として投入したものの、後発の中国メーカーに対してハードウェア面で優位性を確立できていない状態が続いているのが現状だ。
最新技術を盛り込んだ折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold Special Edition」は大画面化した上で厚さ4.9mm、重量も236gと薄型化したものの、バッテリー容量は4400mAhに据え置かれた。これは2019年に販売された「Galaxy Fold」の4310mAhからほとんど変化していない。
これに対して、中国メーカー各社は、折りたたみ時の厚さが4mm台前半、重さも軒並み220g台と、10g以上も軽量なモデルを展開している。しかもバッテリー容量は5000mAh以上が当たり前だ。カメラ性能やペン対応の面でも引けを取らず、折りたたみスマホにおける薄型化やバッテリーの大容量化という点で、サムスン電子は後れを取っている状況だ。まさに「既に1敗」といえるだろう。
Galaxy Z Fold Special Editionは大画面化と薄型軽量化を果たした韓国限定モデル。ペン対応とアンダーディスプレイカメラという強みを廃しての軽量化でやっと、中国メーカーのハードウェアに肩を並べた
薄型スマホという新たな市場の確立で起死回生を図りたいサムスン電子だが、スマホ向けの高密度バッテリーという武器が弱い点が惜しい。同社はグループ内にバッテリー製造のSamsung SDIを抱えており、新技術への対応や設計自由度は他社製品よりも柔軟にできる利点を持つ。
それでも高密度化、充電速度の高速化に慎重な姿勢を貫くのは、2016年の「Galaxy Note 7」の発火事故の影響と思われる。この事件が起きて以降、同社はバッテリーの大容量化、高密度化、急速充電技術の採用に慎重な姿勢を見せている。
今回のGalaxy S25 Edgeは薄型化と引き換えにバッテリー容量を犠牲にしたスマホであり、薄型化を免罪符に「バッテリー容量の限界」を覆い隠している。その限界を「薄さ」や「デザイン性」でカバーし、発売を先行することで優位性を確保する。
そうなると、折りたたみスマートフォンのハードウェアで中国メーカーに劣勢を強いられたときと同じ状況に陥るだろう。今のサムスン電子に求められているのは、薄型端末でも高密度かつ大容量のバッテリーを搭載して他社と競争するか、あるいは低消費電力のディスプレイやプロセッサを搭載することで、バッテリー容量が少ない分を補うかのどちらかしかない。
特にパーツレベルでの最適化は自社で多くのコア部品を内製しているサムスン電子の得意技。バッテリー容量が少なくても他社といい勝負ができる稼働時間を実現できるかは大きな課題となりそうだ。
Galaxy S25 Edgeは薄型化という分かりやすい変化の裏で、今のサムスン電子が直面する現実を映し出す存在なのかもしれない。薄型化は新たなトレンドを構築する起死回生の一手として吉と出るか、凶と出るか――これからも注視していきたい。
著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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