Nothingの4万円台スマホ「CMF Phone 2 Pro」は日本向けに“フルカスタマイズ” 楽天モバイルとの協業も加速:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
英Nothing Technologyは、7月24日に「CMF Phone 2 Pro」を日本で発売した。「CMF」はNothingのサブブランド的な位置付けのシリーズで、Nothing Phoneよりもスペックや価格を抑えつつ、拡張性を持たせたデザインなどで差別化を図っている。同機種を投入するNothingや、MNOで独占販売を続ける楽天モバイルの戦略に迫る。
ローカライズも完了し、CMFの本格展開がついにスタート
シリーズ2機種目となるCMF Phone 2 Proだが、先代のCMF Phone 1はどちらかといえば、テストマーケティング的な意味合いもある日本投入だった。おサイフケータイはおろか、NFCも搭載しておらず、さらには主要キャリアのプラチナバンドにも非対応だったからだ。仕様的にはグローバル版をそのまま日本に持ってきた形で、周波数対応のローカライズすらされていなかった。
それでもIIJmioなどが取り扱い話題にはなったが、Nothing Japanの代表であるマネージングディレクターの黒住吉郎氏は「反省点があった」と語る。おサイフケータイやNFCは使う人、使わない人が分かれるため、不要な人にとっては問題ないかもしれないが、プラチナバンド非対応だと最悪の場合、通信がつながらない地域や場所が出てきてしまう。日本市場で本格的に戦っていくには、かなり厳しいスペックだったといえる。
その反省点を生かし、CMF Phone 2 Proには日本市場向けのフルカスタマイズを施している。プラチナバンド対応はもちろんのこと、NFCを搭載し、おサイフケータイにも対応。さらには、先代モデルで非対応だったeSIMもサポートしており、デュアルSIM/デュアルスタンバイで利用できるようになった。こうした機能への対応は、後述する楽天モバイルの採用にもつながっている。
黒住氏は、「周波数サポートや日本で必要な機能を拡充するのが私のミッションだった」と語っていたが、CMF Phone 2 Proは、その成果が表れた1台だ。これは、Nothingが日本市場の攻略に手応えを感じ、さらにアクセルを踏んでいることの証左ともいえる。ローカライズを徹底したことで、日本のユーザーにとってより買いやすい端末になった点は高く評価できそうだ。黒住氏も、「自信を持って投入できるモデルに仕上がった」と胸を張る。
一方で、日本向けのカスタマイズをしていることもあり、発売時期は海外に比べ、やや遅れている。同機種は、海外で4月に発表されており、欧州や米国では5月に発売済み。3カ月ほど、発売が後ろ倒しになっている。また、周波数もプラチナバンドはサポートしたものの、ドコモが使う5Gの「n79(4.5GHz帯)」には非対応。ドコモ回線やドコモ回線を借りるMVNOでは、5Gの実力を十分発揮できない恐れもある。
大手メーカーだとこのタイムラグを縮めているところはあるが、Nothingはまだ規模も小さく、日本での検証に時間がかかる側面があるという。フラグシップモデルの「Nothing Phone (3)」が現時点で発売予告にとどまっているのも、同様の事情があると推察できる。この時間を縮め、海外での“熱”が冷めないうちに日本に展開していける体制を作れるかは、今後の課題といえる。
また、対応バンドについては、「カスタマイズを(さらに)入れればできるが、われわれのためだけにやるとなるとコスト的なところが厳しい」(黒住氏)。プラチナバンドはMediaTek側のモデムが対応することでカバーできているが、n79のように日本の中でもさらに特殊な周波数になってくると、追加対応が必要になり、コストの上乗せが大きくなってしまう。
特にCMF Phoneのようなコストパフォーマンスを売りにする端末では、価格転嫁は致命傷になりかねない。Pixelのようにドコモが一定数コミットしたり、海外でn79が必須になったりしてこない限り、対応は難しいのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Nothingがおサイフケータイ対応の「CMF Phone 2 Pro」を日本投入、4万2800円から 先代の“反省点”を改善
CMF Phone 2 ProがFeliCa対応で4万2800円から登場。前モデルで不足していた日本向け機能を強化し、Nothing史上最薄の7.8mmボディーに50MP 3眼カメラとMediaTek Dimensity 7300 Proを搭載した。
Nothingが新スマホ「CMF Phone 2 Pro」を海外発表 複眼カメラや新AI機能を搭載して初号機から大幅進化
英Nothing Technologyは4月28日、NothingのサブブランドCMFシリーズで新スマートフォン「CMF Phone 2 Pro」をグローバルで発表しました。カメラが飛躍的に向上しているのが注目ポイントの1つです。独自のAI機能を利用できるEssential Keyも搭載しています。
Nothingに聞く、着せ替えスマホ「CMF Phone 1」の正体 4万円台やおサイフケータイなしの意図は?
英Nothing Technologyは10月1日にCMFブランド初のスマートフォン「CMF Phone 1」を発売した。同ブランド初のスマホCMF Phone 1は背面のカバーを付け替えて、自分好みの外観にできる。Nothingブランドがある中で、CMFブランドを日本で売る理由は何かなどを、Nothing Technologyで日本におけるマネージングディレクターを務める黒住吉郎氏に聞いた。
「Nothing Phone (3a)」の実力検証 予想外に使えたAI機能、処理能力やカメラも進化した“本気”のデバイスだ
4月15日に発売された「Nothing Phone (3a)」は、Qualcommのチップを採用して処理能力を底上げしただけでなく、カメラ機能を強化。AIを活用した新機能の「Essential Space」や、それをワンプッシュで呼び出せる「Essential Key」も搭載する。発売に先立ち、Nothing Phone (3a)を試用できたので、その実力や投入の狙いを解説する。
「(3a)Pro」ではなく「Nothing Phone (3a)」投入の理由、楽天モバイルが扱う背景は? キーパーソンに聞く日本攻略への道筋
Nothingが4月に発売した「Nothing Phone (3a)」は、シリーズの特徴的なデザインを踏襲しながら、ベースとなるスペックを底上げし、新たに望遠カメラも搭載。販売面も強化し、新たに楽天モバイルが取り扱う。日本市場をどう攻略していくのか、Nothing Japanでマネージングディレクターを務める黒住吉郎氏に話を聞いた。




