アップルがサプライヤーを集めてアメリカでの生産体制を確立――サムスン電子に切り替えでソニーの牙城は崩れるのか:石川温のスマホ業界新聞
米国のトランプ大統領が、製造業を米国内に“戻す”ための政策を進めている。それに呼応してか、Appleが「アメリカ製造プログラム(AMP)」なる計画を発表した。米国内に工場を構えるサプライヤーから部材を調達するというものだが、そこで気になるのが「カメラセンサー」である。
アップルのティム・クックCEOとトランプ大統領が2025年8月6日に会談を行った。いつもより大きなアップルロゴの入った箱から、変なオブジェを渡していたので、気になって調べてみたら「大統領のために刻印を施したCorning社のガラスを、24金の台座に乗せたもの」だった。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2025年8月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
アップルは「アメリカ製造プログラム(AMP)」を発表した。今後、米国内で6000億ドルの投資を行い、今後4年で2万人の直接雇用を計画するという。
AMPでは様々なサプライヤーが参加する。CorningはiPhoneとApple Watch向けのカバーガラスを製造する。GlobalWafers AmericaはiPhoneやiPad向けのチップ製造に必要なウエハーを供給する。TSMCはアップル向けに数千万個のチップを生産し、サムスン電子も「画期的な新技術を用いたチップ」を製造するようだ。ブロードコムは5G通信向けの半導体を開発、製造するということだ。
これらのパートナーを見ると、もはやiPhoneを米国内で製造するのも時間の問題という気がしていた。
一昔前は、スマートフォンの製造と言えば、工場のラインに大量の作業員が並んで流れ作業で作っているイメージが強い。実際、コロナ禍前に中国でOPPOの工場を見学したが、本当に多くの工員がいて、手作業でスマートフォンを作っていた。昼時になると、工員が
一斉にランチを食べている光景は壮観であった。
一方、同じ頃にファーウェイの工場も見る機会があったが、こちらは製造工程がすべてロボットによって自動化され、工員の姿は皆無に等しかった。ラインを管理する人が1〜2名といった感じで洗練されていた。ロボットの多くは日本メーカー製だったのを覚えている。
iPhoneに関しても、サプライヤーがアメリカに集結すれば、アメリカ国内での生産も可能なのではないか。すべてのラインナップをアメリカで作るという必要もなく、アメリカ国内で必要とされる分だけ作ればいい。
正直言って、ティム・クックCEOはどんなにトランプ大統領から「iPhoneをアメリカで作れ」と脅されても、のらりくらりと交わして、お茶を濁すだけかと思っていた。実際、いまからアメリカ国内でiPhoneの生産体制を整えたとしても、トランプ大統領の任期中に間に合うかはかなり微妙だ。4年間という時間切れを待つというのも得策だったはずだ。
しかし、今回のAMPを見る限り、ティム・クックCEOとしては腹をくくった感じがするのだ。
ここで気になるのが「カメラのセンサーモジュールはソニーからサムスン電子に切り替えるのか」という点だ。
確かに、最近のサムスン電子のセンサーは技術力が上がっている印象がある。とはいうものの、ソニーのアドバンテージはまだまだ優位に感じるところがある。
ソニーがアメリカに製造拠点を作るというのは、先日の決算会見を見ても、いまのところ考えにくい。AMPによって、ソニーはアップルに切り捨てられてしまうのか。このあたりが注目となってきそうだ。
© DWANGO Co., Ltd.
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