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「日本は6G周波数の議論すら始まっていない」 クアルコムが抱く危機感と、AI時代の次世代通信(2/3 ページ)

Qualcommは6Gの商用化に向けて「AI時代の中での6G」を掲げ、3つの柱や新たな周波数帯の重要性を説明した。日本での周波数議論の遅れに懸念を示す一方、端末主導のAIネイティブ・プロトコルなどの独自技術を提案する。さらに、基地局をセンサーとする新技術やシングルキャリアによる400MHz幅の活用で、地道な性能向上を目指す。

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データの優先度を決められる「AIネイティブ・プロトコル」

Qualcomm
クアルコムジャパン 標準化本部シニアディレクターの北添正人氏

 クアルコムジャパン 標準化本部 シニアディレクターの北添正人氏は、6Gシグナリングレイヤーの標準化責任者を務めている。北添氏は3GPPの会議に参加しているが、そこで6GコネクティビティのためのAI活用について、どう議論されているかを説明した。

 議論しているテーマは2つあるという。1つは、6Gのネットワークで各ノードをAIエージェント同士でつなげ、相互に通信して最適なオペレーションを判断するという考えだ。例えば、「このサービスにはこの程度の品質(QoS)が必要だ」という要求に対し、エージェントが連携してネットワーク設定を最適化していく。

 GSM時代から長らく続いてきた従来のモバイルネットワークは、「ポイント・トゥ・ポイント(P2P)」、基地局とコアネットワークが1対1で連携する構成が主流だ。しかし6Gでは「サービスベースのインタフェース(SBI)」、つまり基地局やコア装置などの各ノードがサービスを提供する存在となり、サービスを提供する側と受ける側という考え方でネットワークを組んでいくという考えだ。

 6Gでは、通話や従来型のデータ通信は今まで通りP2Pのインタフェースを採用するが、それ以外のエージェンティックAIやセンシングではSBIにするのかP2Pにするのか、まだ決まっていないという。「QualcommとしてはSBIを推していく。AIエージェントがしっかり話をして、違うノードが協力しながらサービスを提供するという方向性を考えています」(北添氏)

 もう1つのテーマは、下のレイヤー、3GPPのプロトコルでいうと「レイヤー2」と言われる再送制御のプロトコルや物理レイヤーで、AI活用でオペレーションを効率化しようという考えだ。「3GPPで標準化するインタフェースのプロトコル自体を変えなければいけない」部分もあるという。

 北添氏によると、3GPPの5Gまでの標準規格は、数年前のデータでも16万ページに及ぶという。それらは「こう動け」という厳格なルールを定めたものだが、スマートフォンなどの端末は言われた通りに動くことになり自由度が少ない。

 トラフィックには従来型のデータもあれば音声もあり、XRのデータ、今後はAIのトラフィックも増えて多様なデータが流れていく。そうなったときに「自由度があまりにも少なすぎる」と感じたのだという。

 そこでQualcommが提案しているのが、端末側がサービスの背景情報(コンテキスト)を豊富に持つことに注目した「AIネイティブ・プロトコル」だ。ユーザーがどこにいて、何をしようとしているのかといったコンテクストを持っている端末が、自律的にプロトコルを少し動かすというような考え方だ。

Qualcomm
コンテクストを持っている端末が、自律的にプロトコルを少し動かすという「AIネイティブ・プロトコル」を提唱する

 例えば、「このデータは遅延してもいいので再送不要」「これは重要なので確実に再送」といった判断を端末側が行う。この点は3GPPで合意されているという。また、モビリティのハンドオーバーのタイミング判断においても、従来のネットワーク主導ではなく、端末の状況把握に基づいた提案が可能になる。

 ちなみに、端末側が自律的にプロトコルを少し動かすという考えについては合意されたが、北添氏によると、それに至るまで難しい部分もあったという。端末メーカーやチップセットベンダーは自由度を高めたい、しかしネットワークベンダーは「なるべくわれわれが分かる範囲で動いてほしい」という考えがある。キャリアもネットワークベンダーの考え方に近い中、妥協点を探ったそうだ。

 なお、端末側のAIが判断を行うようになると、AIのパフォーマンスによって機能に差が出てくることもあり得る。そこで最低限のパフォーマンスを担保する仕組みや、パフォーマンスが維持されているかどうかのモニタリング、それをネットワーク側で確かめる仕組みも検討されている。

基地局をセンサーとして活用する「ネットワークセンシング」

 6Gで注目されているネットワークセンシングは、街中に張り巡らされた膨大な数の基地局そのものをセンサーとして活用する技術だ。キャリアの新しいビジネス創出も期待されている。

 センサーとなる基地局から得られるデータをAIで分析することで、ドローンの検知や交通量の把握などが可能になる。Qualcommの実験では、複数のドローンを回転翼の動きなどから識別できるほどの精度が確認されている。

Qualcomm
電波とAIで複数のドローンを検知するQualcommの実験

 なおセンシングについては、ネットワーク側でセンシング、移動機側でセンシング、あるいは移動機とネットワークでコラボレートしてセンシングするという考え方があり、全てのケースについて調査研究し、標準化する形になる模様だ。

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