News | 2000年11月1日 07:03 PM 更新 |
低温ポリシリコン液晶は,撮影画像の確認用としてデジタルカメラに採用されるケースが多く,その精細さは証明済み。実際に26万色の画像を表示してみたが,ノートPCのTFT画面よりも確実に美しく,また小さなサムネイル画像でも十分に内容が判別できるのが嬉しい。もちろんバックライト付きだ。
ただし,いくつかの難点がある。まず,ワイドSVGAはマイクロソフトがHandheld PC向けに想定した解像度を上回るものであり,従って同社のサポート外となる。もちろん,既存のサードパーティ製アプリケーションも動作は保証されない。この点について,開発を担当したITネットワーク事業統括部の近藤欣也技師は「ワイドSVGAはビクターの独自拡張だが,バンドルアプリケーションをはじめ,これまで検証したソフトでは支障は出ていない。また,対応していないアプリでも画面左右に非表示部分が出るだけで動作には影響ないだろう」と話している。
もう1つの難点は,7型というサイズでワイドSVGAを表示することによる,アイコンや文字の細かさだ。ただしこの点は,表示フォントを大きくする設定や特定部分を拡大する「レンズ」アプリケーションの搭載など,ビクターが独自の拡張で補った。
ワイドSVGA採用の背景には,デジタルカメラの急速な進歩により,Windows CE機が苦しい立場に立たされているという現状がある。モバイルユースで併用されることが多いにもかかわらず,Handheld PCの表示能力がデジカメの画素数に大きく差をつけられてしまった。「MP-C303の低温ポリシリコン液晶は,今の状況を打破するための回答だ。すべてのデジカメに対応することはできないが,かなり追いついたと考えている」(近藤氏)。
InterLinkのコンセプトであるAV対応は,今回のモデルで大きく進歩した。もちろん,シンプルなWindows CEマシンでノンリニア編集やDVD再生はできるはずもないが,ビクターは違うアプローチのオリジナルアプリを搭載している。
1つめは,「AVリンクジュークボックス」。MP3,JPEG,MPEG4,MIDIといったデータを1つのフォルダに放り込んでおけば,自動的に連続再生してくれる。ただし,MPEG1やWMAなどのフォーマットに対応していないのは残念。
2つめは,「AVリンクコマンダー」。本体に装備されたコンスーマーIR出力を利用して,InterLinkを各種AV機器のリモコンとして使うことができる。機能の組み合わせや自分専用キーの作成にも対応し,事前に登録しておけば,ビデオを見たいときにビデオデッキ,TV,アンプの電源を1ボタンで入れることも可能だ。また,ビクター製のビデオデッキに限り,録画予約もサポートした。難点は,ビクター以外のメーカー製品のサポートが弱いこと(主要なメーカーと機器は対応)。今後,同社サイトからプロファイルをダウンロードできるようになる予定なので,そちらにも期待したい。
このほか,同社のDVカムコーダー「GR-DV2000」やデジタルカメラ「GC-X3」とUSB接続することで,静止画の入ったフォルダをストレージとして扱えるドライバや「GR-DVX9」のMMC内に作成した圧縮動画を再生できるプレーヤーも搭載した。
オプションのワイヤードスティックリモコンは,本体を閉じていてもAVリンクジュークボックスの操作やメールの取り込みができる。ディスプレイを開いているときは,Webブラウザのスクロールやスライドショーのコントロールに利用可能だ。
MP-C303の価格はオープンプライスだが,店頭では13万円前後になる見込みだ。ミニノートPCと比較して「価格による差別化が難しい」というのはHandheld PCの登場時から議論されていたことだが,今回も蒸し返されそうな雰囲気である。しかし,機能は限られても,ユーザーの用途に合えば市場が形成されるのは従来機が証明した通り。デジタルカメラ対応を強化し,独自アプリケーションを搭載した新InterLinkが用途を広げたのは確かであり,どこまで市場を拡大することができるかは,今後のマーケティング次第といったところか。
そのほかの主な仕様は以下の通り。
製品名 | MP-C303 |
CPU | MIPS RISC(詳細は非公開) |
メモリ | 32Mバイト |
ディスプレイ | 7型ポリシリコン透過型(最大1024×600ピクセル) |
インタフェース | RJ-11(モデム),携帯電話(PIAFS,PDC,cdmaOne,Packet One),USB,赤外線(IrDA,コンスーマーIR),スティックコントローラー専用ジャック,イヤホン,PCMCIA Type II,コンパクトフラッシュType II,AC |
電源 | 専用リチウムイオン(非通信時約6時間,連続通信時約3時間持続) |
本体サイズ | 217(幅)×153(奥行き)×24(厚さ)ミリ |
キーピッチ | 15ミリ |
重量 | 約740グラム |
価格 | オープン(約13万円) |
関連記事
日本ビクター,ワイド画面の「InterLink」次期モデルを参考出展
ビクター,AV機能を一層強化した「InterLink」の新モデルを発表
ウワサの超小型デジカメを見てきました
ウワサのG4 Cubeを見てきました
ウワサのインターネットマンションを見てきました
関連リンク
日本ビクター