News 2000年11月21日 10:52 PM 更新

ソニーの小型2足歩行ロボットは“サッカー小僧”

早くもパートナーロボット市場では競争が激化? ホンダの「ASIMO」に続き,ソニーが全長50センチの小型2足歩行ロボットを披露した。

 世界初のパートナー型ロボット博覧会である「ROBODEX 2000」の開催が今週末に迫り(期間:11月24〜26日,会場:パシフィコ横浜),ロボット市場がにわかに活気づいている。昨日,本田技研工業が発表した「ASIMO」を見て,「P3」からの著しい進化に感銘を受けたが,ソニーが本日発表した2足歩行ロボット「SDR-3X」の試作機は,ASIMOとは違った意味で衝撃的だ。


サッカーボールを巧みにキックする「SDR-3X」。簡単そうに見えて,なかなか難易度の高い技だという

 SDR-3X(SDRは,“Sony Dream Robot”の略)は,全長(身長?)が50センチしかない。重量もたったの5キロという小型・軽量ロボットだ。AIBOにも使われている基本仕様の「OPEN-R」をベースに,関節を駆動する出力重力比の高い「小型アクチュエーター」と,全身の関節をリアルタイム制御する「全身協調動的制御システム」を新たに開発。これらの技術を組み合わせ,2足歩行を実現している。歩行速度は約15メートル/分となっている。

モデル SDR-3X
CPU 64ビットRISCプロセッサ
メモリ 32MバイトDRAM
OS Aperios
ロボット制御アーキテクチャ OPEN-R
制御プログラム供給媒体 メモリースティック×2
関節自由度 首部:2自由度,胴部:2自由度,腕部:4自由度×2,脚部:6自由度×2,合計24自由度
内蔵センサー 18万画素1/5インチCCD(画像入力),マイク×2(音声入力),赤外線方式測距センサー(距離検出),2軸加速度センサー(加速度検出),2軸角度検出(角度検出),コンタクトセンサー×8(接触検出)
音声出力 スピーカー
インタフェース Type II PCカード スロット×1,メモリースティックスロット×2
歩行速度 約15メートル/分
重量 約5キロ(バッテリー,メモリ搭載時)
サイズ 500(高さ)×220(幅)×140(奥行き)ミリ


SDR-3Xの背面。膝の裏側に大量のアクチュエーターが見える。膝裏は2足歩行を支える重要な部分のため,特に出力重力比の高いアクチュエーターが採用されている

 もちろん,SDR-3Xはただ単に2足歩行するだけのロボットではない。OPEN-Rをベースにしているため,AIBOと同様に,音声認識や音声合成が可能なほか,地面が傾斜している場合には転倒しないように自分でバランスをとることもできる。もし転倒した場合でも,仰向け/うつ伏せの状態であれば自ら起きあがることができるという。また,OPEN-Rでは,インタフェース部分の仕様も規定されているが,AIBOのパーツをSDR-3Xに流用できるのかどうかは不明だ(例えば頭部だけAIBOにするなど)。


音声認識のデモ。呼びかけるときちんと返事をすることができる

 「SDR-3Xでは,現在の技術で可能な限り小型化に挑戦した。SDR-3Xは,AIBOと同様にエンターテインメントロボットという位置付けにある。その観点からすると,これくらいのサイズがちょうどいい。ホンダのASIMOとは方向性が異なる。5年後には,エンターテインメントロボットはヒューマノイド型が主流になるだろう。だからといって,別に階段を上れなくてもかまわない」(ソニーデジタルクリーチャーズラボラトリー所長の土井利忠氏)


パラパラを踊っているところ。ロボットにパラパラをやらせるところがいかにもソニーらしい


色のボールを置き,「黄色のボールをキックしろ」と指示。色を識別し,ちゃんとゴールに蹴り込んで見せた。ボールがゴールに入ったことを認識でき,ガッツポーズのおまけつき。数年後には,AIBOではなく,ヒューマノイドのロボカップが開催されるに違いない

 会見で行われたデモンストレーションは,前もって作っておいたプログラムを実行するというものだったが,3体のSDR-3Xがユーロビート調の曲にあわせ,パラパラを踊ったり,人間と同じ様なフォームでサッカーボールを蹴ったりするなど,試作機ながら,かなりの完成度を誇っていた。なお,今回発表されたのはあくまで試作機であり,製品化については全く未定とのことだが,「ホンダのASIMOは乗用車3台分と聞いた。こちらは,乗用車1台分を目指す」(土井所長)という。ただ,市販されればAIBOを上回る人気になることだけは確実だ。

 SDR-3Xはもちろん,ROBODEX 2000に出展される。会場では,試作機によるデモンストレーションも行われるというから,ASIMOとあわせてチェックすれば,パートナーロボットが家ににやってくるのも,そう遠い未来のことではないことを実感できるだろう。

関連記事
▼ ホンダが人型ロボットをデモ――ゆめテク開幕
▼ 目指せポケモン,ソニーが新型AIBOを発表
▼ AIBOはペットか? ロボットか?
▼ ソニーがエンタテインメントロボット「AIBO」発表
 

[中村琢磨, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.