News 2001年3月28日 02:56 PM 更新

ギガの波はPCを救う? 「Giga PC」開発のススメを説くIntel

ギガヘルツのCPU,ギガヘルツのI/Oバス,ギガビットのネットワークにギガバイトのストレージ……。Intelがアナハイムで開催のWinHECでギガ単位の技術を集めたGiga PCを提案。

 米国カリフォルニア州アナハイムで開催中のWindowsハードウェア技術会議「WinHEC 2001」の2日目。基調講演を担当したIntel副社長のPat Gelsinger氏が,また新しい言葉を作り出した。すべての分野でギガ単位の技術を採用した「Giga PC」だ。

ギガ技術だけのPCを作ろう


WinHEC 2日目の基調講演に立ったIntelのGelsinger副社長

 Gelsinger氏は先月行われたIntel Developer Forum(IDF)でも説明のあった,インターネットにフォーカスしたIntelの戦略を説明した後,「これからのPCでは,ギガヘルツのプロセッサ,ギガヘルツのI/Oバス,ギガビットのネットワーク速度,ギガバイトのストレージによる高い性能が現実のものとなる。こうしたPCを“Giga PC”と呼ぶことにしよう。Giga PCは今すぐに開発を始めることができる」と話し,会場に集まった約5000人のハードウェア技術者たちに,PCのさらなる高性能化への協力を求めた。

 Intelは研究室で30ナノメートルのトランジスタを作ることに成功している。この極小トランジスタは100GHzのスイッチング速度を持ち,これをもって10GHzのプロセッサを1ボルト以下の電圧で動かすことが可能になるという。プロセッサの高性能化はとどまることなく,10GHzまで一気に上り詰めるだろうと同氏は言う。

 またIDFにおいて開発が表明された次世代のI/Oバス技術(3月2日の記事参照)にも言及。この技術の詳細は8月末のIDFで発表される予定だが,銅線を使った信号電送では限界と言われる12GHzの転送レートをターゲットにしたシリアルバス技術で,毎秒4Gバイト以上のスループットを実現するという。

 ネットワークの面では,Intelの1チップ化により大幅なコストダウンの図られたギガビットイーサネットがPCの標準となり,高速のワイヤレス接続を可能にする5GHz帯の802.11無線LANのローンチも近い。将来的にはPAN,LAN,WANのすべてが,ギガヘルツの無線で接続されるようになるはずだとGelsinger氏は語った。

 さらにストレージの分野にもギガの波が押し寄せる。既に数十Gバイトクラスは当たり前のハードディスクは,いよいよ数百Gバイト単位へと容量を増加させようとしている。また,100Gバイトクラスのハードディスクを接続する規格として,ローコストかつ高速なシリアルATAが登場する。シリアルATAは毎秒1.5Gビットの転送速度を持つ(12月20日の記事参照)。

 そして次世代メモリは毎秒6Gバイト以上のスループットだ。Rumbusにしろ,DDRにしろ,広帯域の次世代メモリへの移行は「パフォーマンスを向上させるためのキーテクノロジー」だとGelsinger氏は語り,次世代のメモリ技術への早期移行を促した。

コンシューマーへの提案内容はMSと同じ

 Gelsinger氏によるGiga PCの提案は,より高性能なPCへの進化を止めないことによる,PCの魅力引き上げと買い換えサイクルの維持を狙ったものだ。Intelは最新のPentium 4を,いかにコンシューマーに売り込むかで苦心している。

 マルチメディア処理にフォーカスし,メディア処理命令セットと高クロック動作を特徴としたPentium 4を生かすため,IntelがIDFで提案したのは「Extended PC」というコンセプトだった(2月28日の記事参照)。

 Extended PCは,デジタルメディアを扱うデバイス(デジタルカメラ,ビデオ,オーディオなど)とPCとをシームレスに接続し,デジタルメディアのコントロールセンターとしてPCを活用しようというものだ。Extended PCコンセプトではPCで大量かつ多種のメディアが扱われる。そこに,Pentium 4のメリットを見出すことができる。

 この考え方は,MicrosoftのBill Gates氏が語る「PC-Plus」とも重なるコンセプトだ。PC-PlusはWindowsを中心に多種のデバイスとの接続性が確保され,それらすべてをWindowsが標準でハンドリングできるようにすることで,より楽しく,リッチなPCの利用体験を演出しようというもの。Windows XPにはそのために,デジタルカメラやデジタルビデオ,デジタルオーディオを活用するための機能が多数用意されている。

 両者とも,「デジタル家電はPCを不要にするのではなく,PCをより魅力的なものにする周辺デバイス」と捉えている点で共通している。しかし,裏を返して,「PCを通さない方がずっと便利で簡単だ」と思われてしまうようだと逆効果になる可能性もある。

 MicrosoftとIntelは,両社とも常に前へと前進し続けることで,自らの価値を高めてきた。そしてこれまでは,ユーザーもそうした猛烈な進化を受け入れて製品を購入してきている。しかし,それが今後も続くかと言えば,大きな疑問が残るのは確かだろう。使いやすさ,楽しさ,簡単さをアピールできる技術開発が行えるかどうか。Windows XPの出来具合もさることながら,両社のマーケティング戦略の成否がコンシューマーPC市場に与える影響は,非常に大きなものになりそうだ。

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[本田雅一, ITmedia]

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