News 2001年4月19日 10:49 PM 更新

“復活の呪文”を唱えるセガ

セガが具体的な構造改革案を発表した。GAMECUBE参入でマルチプラットフォーム対応を進めるほか,経営の効率化を促進して2003年3月期にセガ単体で黒字化を目指す。

 「この席に大川功はいない。だが,セガ社員は彼の意思を継いでセガの復活に向けて取り組まなければならない。ビジネスモデル改革,構造改革と並んで,社員の意識改革が大事だ」

 4月19日に行われたセガのアナリスト向け説明会の冒頭,セガ役員の横に飾られた故大川会長の遺影に時折り目をやりながら,佐藤秀樹社長はセガの再生に向けた決意をこう表明した。説明会では,ハードウェアメーカーからソフト・サービスメーカーに体質改善を図るための「設計図」(佐藤社長)が明らかにされ,セガの共同最高執行責任者(CO-COO)で構造改革推進本部長を務める香山哲氏は,「まず財務改革が必要」と強調した。


壇上には,故大川会長の遺影が飾られていた。また,「昨晩,交通事故にあった」という香山氏は,実に痛々しい姿で説明会に参加した

GAMECUBEへ参入,PSOも他プラットフォームに

 ドリームキャストというハードウェア事業から撤退し,コンテンツ開発に注力するという事業転換を進める上で,マルチプラットフォームへの対応は大きな意味を持つ。そのためセガは,ソニー・コンピュータエンタテインメントや米Microsoft,NTTドコモ,J-フォン,AM事業ではナムコといったように,矢継ぎ早に提携を発表してきた。説明会ではさらに,任天堂が9月に発売する新型ゲーム機「GAMECUBE」に参入することが明らかにされた。既に,ソニックチームおよびアミューズメントビジョンの2つのスタジオでタイトル開発に着手しており,米国で5月に開催されるゲームショウ「E3」で披露する計画だという。

 加えて,福島吉治会長によれば,ドリームキャスト用ネットワークゲームの「ファンタシースターオンライン」(PSO)を他社プラットフォームに提供することも濃厚のようだ。どのゲーム機が対象になるのかは分からないが,全世界合計で23万5000人を獲得したビッグタイトルだけに,大きな注目を集めるのは確実だろう。

 コンテンツ事業の今後のロードマップとしては,2002年3月期でドリームキャスト用タイトル65本,他プラットフォーム向けに53本をラインアップ。販売本数は1270万枚,売上高は620億円以上を目指す。開発費は約145億円を見込んでいる。2003年3月期には,ドリームキャスト用タイトルがなくなり,他プラットフォームへ完全に移行。タイトル数は「年間100本を安定的に供給する」(香山氏)計画だ。2004年3月期には,販売本数は3000万本(全世界),売上高は1200億円,フリーキャッシュフローで350億円以上を達成するという。またゲーム機用タイトルとあわせて,PC用ゲームの「セガPC」ブランドも強化していく(なお,上記予測にPCタイトルやAM事業は含まない)。

 また,ネットワーク事業ではCSKと展開しているISAOを強化。ISP/ネットワークゲーム事業に加え,顧客DBを利用した広告,ならびにEC事業を展開し,2001年7月には黒字化を図る。また欧米でのネットワークゲーム事業はサービスを継続するものの,新規インフラ投資を凍結するなど事業を縮小する。ゲームサーバはISAOで一括管理する方向で検討している。

 「構造改革の影響で社員のモチベーションが低下していると指摘されるが,セガの11の開発スタジオにいるトップクリエーターたちはセガを去ろうとはしない。むしろ,セガを辞めたクリエーターの中で,戻りたがっている人も多い。国内のゲーム市場は成熟化が進行しているが,セガであれば世界を相手に勝負することが可能だ。セガから独立してもメリットは少ない」(香山氏)

本社売却も検討

 セガは,在庫一掃を目的として3月1日よりドリームキャストを9900円に値下げしている。業界関係者の間では「なくなるゲーム機を誰が買うのか」という見方もあったが,香山氏は,「ドリームキャストの値下げ戦略は現在のところうまくいっている」と強調する。同氏によれば,ワールドワイドで200万台以上も抱えていたドリームキャストの在庫は,現在100万台弱に減っており,特に米国では値下げ後第1週目の大手小売店での売上が2〜3倍になるなど,大きな効果が出ているという。

  なおセガでは,2002年3月末までに人員を1081名から700名に削減。プロジェクト単位による管理会計導入や広告宣伝費の圧縮などにより経営効率の向上を図り,2002年3月期にセガ単体で営業利益黒字化を目指す。また香山氏は「必要があれば本社売却も検討する」との見方も示した。

 「ハードウェア事業は,ドリームキャストの製品および部材在庫が過剰に発生して営業利益で400億円以上の赤字。ネットワーク事業会社も約150億円の赤字を出すなど,ネガティブスパイラルに陥り財務体質が悪化していた。今後は,投資管理,在庫管理など経営システムを見直し,生産性が高く,競争力のある企業へと生まれ変わる」(香山氏)

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[中村琢磨, ITmedia]

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