News 2001年5月18日 11:57 PM 更新

SCE,LinuxでPS2をネットアプライアンスに

E3のSCEブースでは,ブロードバンドネットワーク対応の全オプションを装着したプレイステーション2を展示している。その姿は,ほとんど省スペースPCだ。

 米ロサンゼルスで開催中のE3(Electronic Entertainment Expo)でソニー・コンピュータ・エンターテイメント(SCE)は,米国で発売予定のネットワークアダプタとハードディスクユニット,そして液晶ディスプレイとキーボード,マウスのセットを一般に公開した。ネットワークアダプタは56Kモデムとイーサネットをサポートし,11月に米国向けに39.95ドルで出荷される。ほかのコンポーネントの価格は未定だが,同じく11月には出荷される模様だ。日本での対応は未定。

 E3のSCEブースでは,ブロードバンドネットワーク対応の全オプション機器を装着したプレイステーション2(PS2)を展示。PCのように見えるその外観は「え? これPS2だったの?」と,日本語で声が上がるのを聞くほど違和感なく,まるでPCのように置かれている。ぱっと見た雰囲気は,省スペースの縦置きPCといった雰囲気だ。


ほとんどPCのPS2

 装置の背面に回ると昨日発表されたネットワークアダプタが装着されているが,米国版PS2の場合,ハードディスクは本体内に収まるため,外からでは何も見えない。液晶ディスプレイはマルチAV出力から,オーディオとアナログRGBに変換する分配ケーブルを通じて接続されていた。なお,背面のケーブル類は写真の撮影を許されなかった。以前に発表された日本向けのハードディスクユニットは,PCカード経由でPS2本体に重ねるボックス形状のものだった。ネットワークインタフェースもハードディスクユニットにセットで搭載される。

 PS上では,AOLの専用クライアントが走り,Netscape Navigatorを中心に電子メールやインスタントメッセージングなどの機能が組み込まれている。その機能は,昨年の「COMDEX/Fall」でAOLとゲートウェイが発表したCrusoe搭載ネットアプライアンスそっくりだ(2000年11月10日の記事を参照)。

 実際に操作してみると,所々でマウスカーソルがX Window Systemのソレに切り替わることから見て,PS2のLinux上でAOLクライアントを動かしているネットアプライアンスであることが分かる。ベースになっている製品は,先日予約開始するとあっという間に売り切れたPS2用Linux Kitだろう(5月9日の記事を参照)。

 SCEのブース担当者に質問をぶつけてみると,Linux Kitとの関連については答えられないとしながらも,将来的にはPS2を使ったネット端末用に開発された,さまざまなソフトウェアをインターネットからダウンロードして動かせるようになるだろうと話した。

 この横では20Mbps HDTVフォーマットのストリームデータ再生(実際にはハードディスクにダウンロードしたコンテンツの再生とのことだが)や,「RealPlayer 8」を用いた1Mbpsのストリームデータ再生デモが行われている。20Mbpsのデモは,ブロードバンドになれば,こういうことができるという完全な技術デモとのことだ。しかし,Real Player 8を使ったデモは,具体的な商用サービスを前提にしたデモンストレーションだと話していた。


HDTVフォーマットの20Mbpsストリームデータを再生


「RealPlayer 8」を使ったデモ。1Mbpsのストリームデータを再生していた

 SCEはPS2向けに,動画や音楽のデータ配信を行うための著作権管理機構として「Dynamic Network Authentication System」を提供し,本格的なコンテンツ配信の環境を作る。音楽データに関しては,PS2用メモリカードに暗号化技術の「MagicGate」が使われていることと関係がありそうだが,これに関して現場の説明員は言及を避けた。

 以上がSCEブース内でのPS2用ネットワークアダプタのデモンストレーションだが,昨日,SCEアメリカの平井一夫社長が話していた「良質のコンテンツ作りをするためにAOLと提携した」という話は,これだけのデモと情報では全く判断できない。また,PS2をネット端末として使うということは,その間,ゲームをしないということでもある。もちろん,コンテンツ配信でソニーグループの連結ベースでの売り上げに貢献できる,という目論見があるのかもしれないが,現状ではまだ絵に描いた餅でしかない。

 さらに大量のコンテンツやソフトウェアの配信事業に成功したとして,40Gバイトのハードディスク容量を超えたときどうするのか。データが破壊された時,購入者の権利はどう保護されるのか。メモリースティックのサポートは将来行われるのか。まだまだ疑問が残っている,というよりも,さらにビジネスモデルに対する疑問が深まってしまった。

 米国ではネット接続の家庭への普及が,およそ60%で上げ止まりとなっているという。その原因は残りの40%のほとんどが,PCを購入できない層だからだそうだ。PS2は人気ゲームコンソールというポジションを活用して,より広いすそ野に食い込もうとしているのかもしれないが,今の米国でPCを購入できない家庭が,大量のゲームコンテンツを購入してくれるとは思えない。

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[本田雅一, ITmedia]

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