News 2001年5月18日 11:56 PM 更新

USB2.0の未来を左右するのはデジカメ?

 ようやくUSB2.0対応製品が出てきた。しかも,世界初は,わが日本のメルコだ。同社は,5月17日に3製品の出荷開始を表明,「Hi-Speed USBロゴ認証」を取得したインタフェースカード,外付けハードディスク,CD-R/RWドライブを,5月下旬から出荷する(5月11日の記事を参照)。

 ただ,認証を受けているのはハードウェアであって,インタフェースカードに添付されるのは,USB1.1のドライバだ。OSが対応していないが故に,こんな形になってしまったのが残念だ。ただ,USB2.0対応のデバイスは,USB1.1のデバイスとしても使えるので,これからUSB機器を購入する場合は,できるだけUSB2.0対応のものを選びたいものだ。

 USB2.0は,過去において,海外のPC関連カンファレンスに出席するたびに,飽きるくらいにデモンストレーションを見てきたし,それが魅力的なインタフェースであることは,十分に理解しているつもりだが,実際に,OSがサポートして,製品が出て,手元で使えない限りは,絵に描いた餅だ。でも,これで,ようやく一歩,現実に向けて走り始めたことは,素直に喜びたいと思う。

USB2.0か,i.Linkか

 USB2.0か,i.Linkかというのは永遠の課題かのように議論されてきた。かつてのPCの世界では,デファクトスタンダードという考え方があり,競争の結果,自然発生的にスタンダードが決まってきたような点があったが,最近のPCの世界は,提案主導型というイメージが強い。

 スタンダードは「できる」ものではなく話し合いで「作る」ものという感覚だ。インターネットの世界では,RFC(Request For Comments)という慣習があり,新しいプロトコルやその拡張,また,規格などに関しては,誰かが提案して,それに対して,他者が意見を述べるというスタイルで,各種のスタンダードを育ててきた。

 PCの世界のスタンダードが,ここまで民主的かどうかは,知るよしもないが,一般コンシューマーは,規格が乱立することよりも,「どうでもいいから早く決めてよ」という気持ちが強いんじゃないだろうか。最終的には市場がスタンダードを決めるわけだが,少なくとも,USB2.0は,i.Link,すなわち,IEEE1394よりも,かなり遅れてのスタートとなった。本当は,競争する必要などないし,それぞれに棲み分けていけばいいのだが,用途がかなりオーバーラップするために,どっちかに決めてほしいというのが正直なところだ。

 i.Link対応デバイスは,今,身の回りを見回しても,たくさん存在する。コンシューマー向けのノートパソコンの多くはポートを内蔵しているし,デジタルビデオカメラなどの家庭電化製品が持つポートもi.Linkだ。

 その一方で,デジタルスチルカメラには,i.Link対応のものを,あまり見かけない。i.Linkが付いていれば,それは家電の世界のもの,USBが付いていれば,それはPCの世界のものという図式が,なんとなくできてしまっている。

 ということは,デジカメはPCの世界のものということになるわけだが,それでかまわないんだろうか。ちょっと前まではデジカメが撮影した画像なんて,USB1.1でのデータ転送で速度は充分だったが,今はそうもいっていられない。満杯になった128Mバイトのメモリカードのデータを,USB1.1で吸い出すというのは,かなりの時間がかかる。まして,320Mバイトのコンパクトフラッシュだの,1Gバイトの「Microdrive」だのといったストレージを満杯にしたら,USB1.1のスピードでは話にならない。

ないと困るが遅いUSB

 デジタルビデオカメラは,データの高速転送が必要だったゆえに,現実的な解として,i.LinkをDV端子として装備したが,今のデジタルスチルカメラは,同じような状況に直面しようとしている。

 となれば,デジタルカメラのとれる道は2つある。デジタルビデオカメラに習いi.Linkを採用するか,USB2.0を採用するかだ。現に,ニコンのデジタル一眼レフカメラ「D1」などは,お世辞にも速いとはいえないが,i.Link端子を持っている。今後発売されるであろうデジタルスチルカメラが,USBとi.Linkのどちらの採用に踏み切るかは,この2つのデータ転送規格の未来に大きな影響を与えるだろう。好調なセールスを継続しているデジタルスチルカメラがUSB2.0を採用すれば,多くのパソコンがUSB2.0の採用を急ぐだろう。過去とのしがらみがあるので,デジタルスチルカメラが自分自身にパソコンをつなぐ方法として,USBを捨ててi.Linkに乗り換えるというのは難しそうだ。これはUSBにとって救いだ。今,USB2.0を本気で普及させたいと思うのなら,何よりも,デジタルスチルカメラをUSB2.0に対応してもらえるように行動するべきだろう。デジタルスチルカメラは,USB2.0規格をスタンダードとして普及させるキラーデバイスとなりうるだけのパワーを持っているはずだ。

 今,手元にあるデバイスを見ても,i.Link対応のものよりは,USB対応のものの方が圧倒的に多い。だから,パソコンには,i.Linkがなくても,それほど困らないが,USBがないと困る。でも,USBの遅さには閉口しているというのが現実だ。この悩みを早く解き放ってほしいと思う。インテルのチップセット戦略も重要な要素だが,年末に,Windows XPプリインストールパソコンが,USB2.0ポート搭載で出てくることを,心から期待したい。それができなければ,USB2.0に未来はない。

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[山田祥平, ITmedia]

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