News 2001年10月15日 10:43 PM 更新

松下電器,50Gバイトの書き換え型光ディスクを開発

松下電器産業は,青色レーザーを使った大容量書き換え型光ディスクを正式発表した。CEATECでも話題となったこの次世代光ディスクは,独自の「2層相変化記録技術」によって50Gバイトの記録を可能にし,デジタルハイビジョン映像を4時間以上記録できるという。

 松下電器産業は,10月15日,青色レーザーを使った大容量書き換え型光ディスクを開発したと発表した。青色レーザーと同社独自の技術である「2層相変化記録技術」によって,片面50Gバイトの大容量を可能にした。DVDやCDと同じ大きさとなる12センチの光ディスクに,デジタルハイビジョン映像を4時間以上(映像転送レート25Mbps)記録できる。この新しいテクノロジーは,先日開催されたCEATECで参考出展されていたものだ。


50Gバイトの大容量書き換え型光ディスク

 光記録媒体(光ディスク)への情報記録では,焦点のスポット径を小さくできる短波長のレーザーほど,高密度の記録が可能になる。従来,DVDなどで実用化されていたレーザーは,赤色から赤外域にわたる長波長領域(650〜800ナノメートル)であった。一方,青色レーザーの波長は約400ナノメートル。この短波長のレーザーを使うことで数十G〜数百Gバイトという大容量の光ディスクが可能となる。青色レーザーが次世代型といわれるゆえんだ。

 青色レーザーを使った大容量書き換え型光ディスクシステムでは,ソニーやパイオニアが推進している“DVR-Blue”という規格がある。DVR-Blueでは,GaN(窒化ガリウム)を用いた405ナノメートルという短波長の青色レーザーを使い,片面1層記録で約23Gバイトの記録を行える。

 松下が今回発表したのは,このDVR-Blueではなく,独自方式の2層相変化記録技術を使ったものだ。

 相変化記録とは,薄膜化した材料にレーザーを照射することで生じる構造変化を光メモリとして利用する記録方式のこと。松下の新規格は,この記録層を2層にしている。

 同規格の場合,「AV用途として実用レベル」(同社)の1万回以上の繰り返し記録が行えるほか,耐久年数もDVDメディアと同等(30年以上),転送レートも最高33Mbpsなので,BSデジタルハイビジョンのストリームをそのままディスクに録画することが可能だ。


記録層を2層にすることで,片面50Gバイトという大容量を可能にした

 大容量が実現した背景には,記録層を2層にしたこがあるが,その際,第1記録層に「半透光性」の化合物系相変化材料を用いることで,第2記録層へのレーザー照射を可能にしている。第1記録層を,6ナノメートルという超薄膜にすることで,50%という高い透過率を実現する一方,第2記録層を高感度にすることで半透明部分を通過する際の光損失をカバーし,小さなレーザーパワーでも記録できるようにした。


2層相変化方式では,半透光性材料を用いることで第2記録層へのレーザー照射を可能にしている

 同社では,青色レーザー自体も独自に開発している。SHG(Second Harmonic Generation)方式という青色レーザーは,赤外レーザーの波長(820ナノメートル)を半分に波長分解することで,410ナノメートルの短波長を作り出している。

 その出力は30ミリワット以上で,従来の青色レーザーに比べて高出力が可能だ。GaNレーザーなどと比べて低ノイズな上に波長のばらつきが少なく,日亜化学工業などの青色レーザーに関する特許には抵触しないという。

 今回の発表では,SHG方式青色レーザーと2層相変化記録技術を採用したデジタルハイビジョン光ディスクレコーダを用意。1層目と2層目に違う映像を記録した光ディスクの再生が行われた。


1層目と2層目に違う映像を記録した光ディスクを再生

 CEATECの会場でも映像再生のデモンストレーションが行われたが,この時はディスクのローディング機構に不具合があるということで,本体からディスクが出てくることはなく,実際にディスクから読み込まれた映像が本当に再生できているのかが確認できなかった。今回のデモは,実際にディスクをトレイへ置くところから始めて,ハードが実動しているところをアピールした。


ディスクをトレイへ置くところから始めて,ハードが実動しているところをアピール

 実際に2層化した光ディスクからの美しい映像を目の当たりにすると,製品化も近いのではと期待も高まる。しかし,今回のデモ用光ディスクはGaNレーザーで書き込んだもので,同社が進めるSHGレーザーで記録したものではないという。また,デモに使ったハードも,今回はプレーヤーとして利用するのみで,実際に光ディスクに記録するといったデモは用意されていなかった。

 実用化上の最大のハードルはレーザーの出力。2層目の記録には,約40〜45ミリワットのレーザー出力が必要になるからだ。同社が開発した高出力型(30ミリワット)のSHGレーザーでも,2層目の記録層にレーザーを届かせるまでの出力は得られていない。

 というのも,波長を半分にすると,出力は1/3〜1/4になってしまうためだ。現時点では30ミリワットの短波長レーザーを作り出すために100〜120ミリワットの赤外レーザーが必要になる計算だ。「150〜160ミリワットの赤外レーザーも,技術的には可能」(同社)なので,40ミリワット超の短波長レーザーが得られるのも時間の問題だが,出力効率の悪さも含めて,技術的な課題は少なくない。

 同社でも「まだ研究段階なので,レコーダー本体やメディアの価格,販売時期も含めて未定」と語っている。ただ「地上波デジタルが普及する時期には間に合わせたい」と述べていることから,CEATEC会場でも言われてた3〜4年後というのが製品化に向けての目標になっているようだ。

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[西坂真人, ITmedia]

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