News 2002年3月20日 11:08 PM 更新

サイバーショット「DSC-P9」──担当デザイナーの語る“こだわり”

 サイバーショットPシリーズのフラッグシップモデル「DSC-P9」。人気となっているP5のスタイルを受け継いだソニーの意欲作だ。大ヒットモデルの条件で忘れてはいけないのが,ボディのデザイン。P9のデザイナーに,こだわりのデザインを聞いた。

 サイバーショットPシリーズのフラッグシップモデルとして,4月25日より発売される「DSC-P9」。発売以来人気となっているコンパクトデジカメDSC-P5のスタイルを受け継いだソニーの意欲作だ。

 画素数など,とかくスペックに目がいきがちなデジカメだが,一般ユーザーに広く普及するためには,デザインも重要なポイントとなる。昨年10月4日に発売されたP5は,発売から約半年が経過した今でもランキング1位を独走している。同社のデジカメシェアをも一気に押し上げたヒット作の上位機種となるP9は,スタイリッシュなP5のボディに,さらに磨きをかけたデザインが施された。


“大ヒットモデル”P5のデザインにさらに磨きをかけたDSC-P9

 今回,P9のデザインを担当したソニーデジタルデザインのチーフデザイナー小幡伸一氏は「技術的にはP5でほぼ成熟の域に達した。P9はデザイン面での成熟を目指した」と語る。


「P9はデザイン面での成熟を目指した」と語る小幡氏

 P5のときも大幅な小型化が図られたが,今回のP9ではさらにコンパクトボディを追求。サイズは114(幅)×51.5(高さ)×35.8(奥行き)ミリとなり,P5よりも高さで2.3ミリ,奥行きで0.4ミリ小型化した。

 「数字以上にこだわったのが,コンパクト感を演出するデザイン。ボディ前面部に横のラインを入れ,ラインの上下でボディ面の高さを変えることによって,前面から見たときによりシャープな印象を与えた。さらに,エッジの面取り幅を広くとることで,よりコンパクト感を際立たせた」(小幡氏)


コンパクト感を演出するデザイン

 また,小幡氏がこだわったパーツの1つが「モードダイヤル」だ。コンパクトさを追求するためには,まず突起部の小型化が課題となるが,単にダイヤルの飛び出た部分を下げてしまうと,操作性に影響してしまう。「そこで,ダイヤル周囲のギザギザ部分の幅を広くし,さらに斜めの面を追加するなど,指先でつまみやすいデザインにした。また,ギザギザ表面の形状を凸面でなく凹面にすることで,フィット感も向上している」(小幡氏)。


こだわりのパーツ「モードダイヤル」

 ボディ前面のグリップ部分も,P5とのデザイン上の大きな違いの1つだが,ここにも小幡氏のこだわりが隠されている。横から見てみると,グリップ部がボディ下部にいくにしたがって高くなっているのだ。

 「設計図では均一な高さだったが,実際にモックアップを作ってみると,握った時にしっくりこなかった。結局,何度も作っては握ってみるという過程を繰り返して調整していき,現在のデザインにたどりついた」(小幡氏)。


ボディ下部にいくにしたがって高くなっているグリップ部

 そのほか,従来“SONY”のロゴだけに使われていたダイヤカット処理をフラッグシップ機の高性能を表す「4.0 MEGA PIXELS」の前面ロゴに施した点や,アルミボディに直接刻みこんだ背面の「Cyber-shot」ロゴ,正面から見た時にカバーが見えないようにした縦開きのバッテリー収納部など,“こだわり”のデザインは細部にまでわたる。

 「縦開きのバッテリー収納部は,デザイン的に美しいだけでなくバッテリーの出し入れがしやすいといった“使いやすさ”につながっている。ユーザビリティーの向上が,デザインの基本」(小幡氏)。

 小幡氏がこれまで手がけた製品は,携帯電話,IC辞書などノンPC分野が多い。PC関係では,バイオギアシリーズのインフォキャリーやミュージッククリップ,メモリースティックなどをデザインしてきたが,サイバーショットシリーズは今回が初めてという。

 今後のPシリーズの展開について質問を投げかけると「P9も発売されていないうちに次期モデルへのコメントはできません」と小幡氏は苦笑する。それでは“個人的にどんなデジカメをデザインしたいか”と聞くと「もっと小さなデジカメに挑戦したいですね」と答えてくれた。

 実はこの小幡氏,ZDNetでも以前取り上げたことがある超小型デジカメ試作機のデザイナーでもあったのだ。メモリースティックDuoをメディアに使うことで100円ライター並みのボディを可能にした超小型デジカメは,やはり右端にレンズを配したスティックスタイルだ。グリップ部のディテールなどに,P9のルーツが垣間見える。


小幡氏がデザインした超小型デジカメ。グリップ部にP9のルーツが垣間見える

 スティックスタイルの新感覚デジカメとして2000年10月に登場した初代P1。レンズがボディの右端にレイアウトされたその独特なデザインは,発表当時「カメラらしくない」との評価も多かった。しかしその後,P1は大ヒットモデルとなり,後継モデルのP5はさらに多くのユーザーに支持された。そしてスティックスタイルは,松下電器産業のLUMIXやミノルタのF100を見ても分かるように,いまやコンパクトデジカメの本流になりつつある。

 「Pシリーズの集大成ともいえるP9には,デザイナーの“こだわり”が細部にまで施されている。ぜひ,店頭で手にとってそれを確かめてもらいたい」(小幡氏)。

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[西坂真人,ITmedia]

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