News | 2002年3月25日 11:35 PM 更新 |
松下電器産業は3月25日,ゴミを自動感知して自律走行しながら掃除が行える自律制御システムを搭載した掃除ロボットの試作機をマスコミに公開した。
この掃除ロボットは,昨年6月に開発表明されたもの。スイッチを入れると勝手に掃除をしてくれるという,掃除嫌いにはまさに夢のロボットだ。
今回発表された掃除ロボットの試作機は,初代iMacを連想させるような青色系のトランスルーセントなボディとなっている。大きさが292(幅)×367(奥行き)×265(高さ)ミリとなっており,ちょうどジャー炊飯器と同じぐらいのサイズだ。全体的に丸みを帯び,上部に液晶ディスプレイが装備されているデザインも,ジャー炊飯器っぽさを表している。重さは9.8キロで,本体上部に取っ手が隠されている。
内部構造が透けて見えるスケルトンボディは,掃除ロボットの近未来的なイメージ作りに一役買っているが,実はその中に装備されている測距センサーの赤外線を通しやすくする役割も担っている。バッテリーはニッケル水素充電池を使用し,1回の充電で約55分間(約80平方メートル)まで掃除ができるという。
今回の掃除ロボットの最大の特徴は,障害物を避けながら効率よく掃除を行う独自の「クロスパターン走行」にある。同社によると,掃除ロボットの走行パターンとしては,部屋の外周から中の方向に渦巻きを描きながら掃除する“スパイラル”と,壁で反転しながら自由に動き回る“ランダム”,部屋のタテ(もしくはヨコ)方向に往復しながら掃除する“往復”,部屋の中をタテヨコ碁盤の目状に走行する“クロスパターン”などがあるという。 「スパイラルや往復といった走行パターンは,ゴミの取り残しが多い。自由に動くランダム走行は,取り残しは減るものキレイに掃除するためには長時間駆動のバッテリーが必要。クロスパターンが,一番効率がよく,ゴミの取り残しも少ない」(同社)。
しかし,このようなクロスパターンで掃除するためには,床面をまっすぐに走行できなければならない。この問題を解決するため,同社の掃除ロボットにはジャイロセンサーを搭載している。航空機にも使われているこのセンサーによって,正確な方向を検知しているのだ。
ところが一般家庭の床面には,直進性を阻害するカーペットが敷かれていることが多い。「カーペットにはゴルフ場の芝のように順目・逆目があり,本体は目標方向を向いていても,カーペットの“目”の方向に流されて思うように進めないという状態が発生してしまう」(同社)。 このカーペット対策として,回転自在のキャスターに角度検出器をつけた「ラダーセンサー」を装備。カーペットの目に流された時に,走行のズレを自動で検知して補正・制御できるようにした。
掃除ロボットでは,スウェーデンelectrolux社の「TRILOBITE」が,すでに製品化されている。
そのほかにも,オーストラリアのベンチャー企業FloorBoticsによる「V4 robotic vacuum」や,三洋電機が試作した「じそうじ丸」などが有名だ。 これらの掃除ロボットと,松下のそれとの最大の違いは,部屋の形状や床面状態,ゴミの量などに応じて最適な掃除パターンを自動で制御する「自律制御システム」を搭載している点だ。自律制御を行うため,試作機には走行系・安全系・集塵系それぞれのセンサーを,なんと50個も搭載している。
家具などの障害物を回避するために,近距離用の赤外線センサーと長距離用の超音波センサーの2種類の測距センサーを搭載して,障害物までの距離を測定しているほか,本体下部のゴム製バンパーには接触を検知する感圧センサーを搭載している。 そのほか,階段などの床面段差を検知する「段差センサー」や,ストーブなど熱源がある場合に50センチ手前で回避する「熱センサー」,子供が本体に乗るなどボディに加わる外力を検知する「重量センサー」など,安全面に配慮したセンサーも数多く装備しているのが特徴だ。
先日,ソニーが2足歩行ができるロボットを発表した。電化・住設社社長兼ナショナルマーケティング本部長の林義孝氏に,ヒューマノイド型ロボットへの展開について聞いたところ「2足歩行は本体の重心が高くなってしまい安定性に欠ける。ユーザーの安全を考えると,掃除機ロボットのように重心が低い方が圧倒的に有利。家電製品には,何よりも安全性が不可欠」と,家電製品を通じて長きに渡り安全面を追求してきた同社らしいコメントが返ってきた。
「開発に費やした金額は2億円,研究期間は17年にも及ぶ」(同社)という掃除ロボット。今年5月から,実際の一般家庭において実証実験を行い,そこでの結果を踏まえて2〜3年後の実用化を目指すという。
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