News 2002年5月16日 11:28 PM 更新

どうなる? 日本語ドメイン名

米RealNamesの営業停止を受けて、国内の関連事業者が相次いで対応を表明している。日本語ドメイン名が使えるインターネットキーワードは、標準化が進まない「国際化ドメイン」の代役として利用者を拡大させていた。今後、日本語ドメイン名はどうなっていくのだろうか

 日本語ドメイン名は本当に大丈夫? 米RealNamesと独占契約を結び、国内でインターネットキーワード事業を展開するフォーバルテレコムは、6月29日でサービスを停止すると発表(RealNamesのサービスが現地時間6月30日にストップするため)。また、「日本語JPドメイン名」をインターネットキーワードに対応させていた日本レジストリサービス(JPRS)は、「サービスの安定性保証が困難」との判断から、一足早く、5月末でサービスを停止することにした(別記事参照)。

 両社とも、RealNames営業停止のあおりをくらった格好だが、今回の1件とは無関係に思われる社団法人日本語ドメイン名協会(JDNA)からも、「日本語ドメインは大丈夫」との声明が出されている。JDNAは、JPRSと同じく日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から派生。JPRSが「JPドメイン」の登録・管理を行う企業組織であるのに対し、JDNAは日本語ドメイン名の標準化、ならびに普及促進を目的とする任意団体である。

 JDNAの「日本語ドメイン名とRealNames社廃業の関係について」と題した声明では、日本語ドメイン名とRealNamesのサービスはそれぞれに独立したものであることを強調。「日本語ドメイン名への影響は一切ない」としている(昨日の記事参照)。

 声明を出した理由について、JDNAでは「(RealNamesの廃業によって)日本語ドメイン名が使えなくなるのか? という問い合わせが数多く寄せられた」ためだと説明する。「Internet ExplorerとRealNamesで日本語ドメイン名を利用することができるが、これが一般化し、RealNamesと日本語ドメイン名がセットのような認識が広まってしまった」(JDNA)。

 なぜ、日本語ドメイン名とRealNamesがセットで考えられるようになってしまったかといえば、日本語ドメイン名を含む「国際化ドメイン名」の標準化が遅々として進まず、代わりに、日本語ドメイン名にも対応したRealNamesのインターネットキーワードサービスが利用者を獲得したからである。それ以外に方法がなければ、同一視されても仕方がないだろう。

 だが、JDNAでは、「インターネットキーワードはサービス事業者ごとにデータベースを持ち、参照する事業者によって検索結果が異なる場合がある。ネット上での一意性が保証されない」として、DNSによって運営される日本語ドメイン名とは根本的に性質が違うと訴える。もっとも、JPRSがRealNamesのサービスを利用していたことを考えれば、標準化までの場つなぎ的な方法として、JDNAもインターネットキーワードを容認していたようにも思える(登録した日本語JPドメインが塩漬けになっていることを考えれば、RealNamesのサービスが果たした役割は決して否定できない)。

 結局、今回のRealNamesの廃業により、日本語ドメイン名は「何もしないで使える」という状況ではなくなってしまった(「iClient」や「mDN Wrapper」といったプログラムをIEに組み込む必要がある)。今後、規格が標準化され、対応アプリケーションが登場するのを待つしかない。この国際化ドメイン名は現在、IETFで標準化審査の最終段階にあり、JDNAによれば、「(標準化作業は)95%は完了している」という。また、JPRSは、「標準化を視野に入れ、日本語JPドメインサービス開始のための準備を進めている」とし、JDNAらと協力して対応アプリケーションの開発促進など環境整備に注力すると説明している。

 このような状況でのRealNamesのサービス停止だっただけに、JDNAもJPRSもその影響が波及するのを恐れてか、「(日本語ドメイン名の)本筋は、RealNamesによるサービスではなく、規格の標準化」と口をそろえる。JPRSによれば、日本語JPドメインの登録数は5月1日時点で約6万件。実際に稼働している日本語ドメイン名のサイトはそう多くないが、規格が標準化されアプリケーションの対応が進めば、状況は大きく変わるはずだという。

 ただ、「標準化作業にデッドラインのようなものがあるわけではない」(JDNA)から、今後のスケジュールは確定したものではない。実際、「間もなく完了する」と言われてから、1年以上も経っている。今後もずるずると時間が経っていく可能性もないわけではない。

 もっともRealNamesの廃業で、“場つなぎ”役は居なくなってしまった。(ユーザーから見れば)標準化までの猶予期間は一気に残り少なくなったといえるだろう。その意味で言えば、今回の廃業は、日本語ドメインにとって間違いなく「影響あり」である。

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関連リンク
▼ 日本レジストリサービス
▼ 日本語ドメイン名協会

[中村琢磨, ITmedia]

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