News 2002年5月20日 08:29 PM 更新

「CCCDの導入はスムーズだった」 レコード協会

エイベックスに続き、間もなく、東芝EMIからもコピーコントロールCD(CCCD)が発売される。今のところ、大きな混乱にはなっていないようだが、国民生活センターには3月中旬以降、CCCDに関して数件のクレームがあったという

 「導入は非常にスムーズだったのでは」。現在、エイベックスから発売されているコピーコントロール機能付きCD(CCCD)について、日本レコード協会(RIAJ)テクノロジーセンター長の田中純一氏(写真)はこう評価する。「エイベックスは、今回の件に関して、非常に丁寧な対応をしたと思う。クレーム対応の部門を大幅に強化したものの、実際にはほとんどクレームはなく、拍子抜けだったらしい」(田中氏)。

 CCCDであることを示すパッケージシールの内容を発売後に修正するなど、エイベックスの対応には事前の準備不足だった面も感じられたが、田中氏によれば「協会にCCCDの発売が伝えられたのも近々になってから。東芝EMIが6月に(CCCDを)発売するという報道があり、それにスケジュールを合わせていたので、大慌てで対応を練ることになった」と明かす。

 RIAJでは、レコード会社各社の担当者を集め、複製制御CD表示ワーキングチームを結成。CCCD第1弾のBoA「Every Heart―ミンナノキモチ―」が発売されてから、約1カ月後、RIAJではCCCD表示に関する運用基準を定め、レコード会社に通知した(4月18日の記事参照)。制作サイドからはジャケットのこの推奨マークがデザインに影響を及ぼすため、「もっと小さくしてほしい」という意見もあるようだが、田中氏は「導入時は広く認知してもらうために、デザインを犠牲にしてでもやっていくしかない。CCCDが当たり前になれば、将来的に表示マークは必要なくなるだろう」と話す。

 運用基準には強制力はなく、全てはレコード会社の判断に任されるが、現実には各社がこれに従うと見られる。東芝EMが今月29日に発売する「THE JAPAN GOLD AWARD 2002」ではこの基準に沿った表記がなされている。

 なお、国民生活センターによれば、CCCDに関するクレームは発売直後の「3月中旬に4件あった」という。「再生できない」「説明が分かりにくい」といった内容がほとんど。同センターでは「(4件という数字は)少ないとはいえない」(同)と指摘するが、その後は減少し、クレームは1件だけ(4月10日時点)。それほど大きな混乱にはなっていないようである。「パッケージだけでなく、再生機にも、CCCD対応であることを入れたほうがいいかもしれない」(田中氏)。

「音質は継続的に改善」

 今までに、「音質が悪い」というクレームはないようだが、エイベックスのCCCDが採用しているイスラエルMidbar Techの「CDS 200」(Cactus Data Shield 200)については、一部で音質劣化の問題も指摘されている。さらに、宇多田ヒカルの父親である宇多田照寳氏は、東芝EMIから渡されたCCCDのサンプル(CDS 200を採用する)を聴いて、公式サイトに「最高の音質を提供することに対して、このガード・システムが多少のマイナスの影響を及ぼしているように感じた」と書き込み、波紋を呼んだ。

 音質劣化について田中氏は、「音質劣化があるとすれば、マスタリングエンジニアが分かるくらいではないのか」と問題視しない。「DIGITAL K2など、レコード会社はCDが登場してからずっと、音質改善に多大な努力をしてきた。CDSというブラックボックスを組み込めば、ジッターも入ってくるが、今後、小さいところでの音質改善は継続的に行なわれていくはずだ」(同氏)。

 また、田中氏は「CCCDを採用したいという多くのアーティストから要望が届いている」と述べ、「著作権保護」が重視される現状を強調する。「CCCDは導入されたばかりの技術であり、アーティストによっていろいろな反応があるのは当然」(同氏)。

 「CCCDの技術は、CDSに決まったわけではない。今後、一般ユーザーに問題がなく、かつ権利保護に貢献する技術があれば、レコード会社はそちらを採用するだろう。ただ、今のところはCDSでは比較的上手くいっていると思う。CCCDはプロテクト技術ではないという批判も耳にするが、DVDようなセキュアメディアではないので、プロテクトが外されてしまうのは仕方がない。インターネットで無許諾の音楽が大量にやり取りされている現状で、近視眼的にCDSを批判するのではなく、音楽業界が置かれている立場も考えてもらいたい」(田中氏)

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[中村琢磨, ITmedia]

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