News | 2003年1月14日 01:51 AM 更新 |
DVD Forumでの標準化が進められている、Blue-rayではないもう一方の青色レーザー光ディスクAOD(Advanced Optical Disk)。再生専用メディアは、片面単層15Gバイト、2層で30Gバイト。書き換え型ディスクは、片面単層20Gバイト、2層で40Gバイトを実現する。
しかし青色レーザーを採用した光ディスクとしては、すでに東芝を除く大手AVベンダーのほとんどが、Blue-ray陣営へとくみしている状況だ。今回のCESでも、ソニー、松下電器、パイオニア、Samsungなど、多くのベンダーがBlue-rayに対応したHD映像録画再生機を展示している。
対するAODは東芝の試作機が置かれたのみ。DVD Forumでの標準化が見込まれているとはいえ、Blue-ray参加企業の顔ぶれや容量(片面単層で最大27Gバイト、2層で54Gバイト)を考えれば、AODの将来的な立場に対して懐疑的と見る人が多いのも、致し方ないところだろう。
ラスベガスで開催されたInternational CES 2003の会場において、Blue-rayとの直接的な比較は行おうとしていない東芝だが、東芝ブースの一角でPC用AODドライブを展示するNECは、具体例を挙げながらBlue-rayとの違いについて話をした。
Blue-rayとAODのもっとも大きな違いは、記録層の深さにある。AODの記録層がDVDと同じ深さに設定されているのに対して、Blue-rayはその1/6の浅い部分に記録する。このため、Blue-rayの方がディスク素材からの干渉を抑えやすく、高密度記録も行いやすい。AODよりもBlue-rayの方が1層あたりの容量が大きいのは、そのためだという(NECへのインタビュー参照。
しかし、その一方で書き込みを行う層が浅いことで、いくつかの弊害もある。NECによるともっとも大きな欠点は指紋による影響だ。AODではディスク表面に指紋が付いた場合でも、正常に信号を取り出すことが可能だが、Blue-rayの場合は指紋が付いてしまうと全く信号を読み出すことが不可能になる。Blue-rayがカートリッジ型のメディアを採用いているのは、指紋などの汚れに対して極端に敏感だからだ。対するAODは、現行の記録型DVDと同様に裸ディスクとして扱える(両規格の比較記事参照)。
同じ理由で従来のCD/DVDプレーヤーとの互換性が取りやすく、カートリッジ分のコストが安いことなども、NECはメリットとして挙げる。また2層記録に関しても「AODは比較的容易だが、Blue-rayのやり方では難しい」という。
またPCベンダーであるNECとしては、AVとPC、両方の用途を同時に開発しているメリットも挙げている。Blue-rayは現在のところAV用途のみで、データ記録用メディアとしての具体的な計画を持っていない。さらにノートPC搭載のスリム型ドライブの開発を考えたとき、カートリッジが必須のBlue-rayでは薄型化は困難で、薄型ノートPCへの標準搭載は非常に難しいなどの問題もある。
確かにPCを中心としたデータストレージとしては、AODのメリットは大きい。このためデータ記録用としてAODが将来、PC業界でのスタンダードになる可能性もあるだろう。またAOD側としては、Blue-rayのビジネス立ち上げが、2005年ぐらいになりそうなことも、追い風となるかもしれない。
Blue-rayの実用化に関しては技術的な問題よりも、ビジネス戦略上の問題の方が大きいと言われている。しかし、すぐにでも実用化に向けて動き出しそうだったBlue-rayも、コンテンツベンダーとのネゴシエーションや、製品投入から普及へのシナリオを描ききれないなど、さまざまな理由から2005年が現実の目標として浮かび上がっている。
一方、AODは現在のところ2005年の実用化が見込まれているという。つまり、ハードウェアとして開発が先行しているBlue-rayに、ADOが追いつける可能性が出てくる。もちろん、“それでも厳しい”という意見はあるだろう。しかしハードウェア開発での遅れがマスクされ、ビジネス戦略面での方向に持ち込むことができたのは、ADOにとって追い風と言うことはできるはずだ。
[本田雅一, ITmedia]
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