News | 2003年1月21日 11:08 PM 更新 |
液晶・キーボード一体型の人気モデル「バイオW」が、先週発表した春モデルでモデルチェンジを行った。Net MDを新たに搭載し、新色を揃えた“新バイオW”の開発に携わったバイオデスクトップコンピューターカンパニー商品企画部の蜂谷洋一郎氏と高梨いづみさんに、新モデルの狙いや開発にあたっての苦労話などを聞いた。
ソニーが提案するデスクトップPCの新しいカタチとして、昨年の2月にデビューしたバイオW。「一体型PCは売れない」というジンクスをはねのけ、発売当初からいきなりデスクトップPCの売れ筋ナンバー1を獲得した。以後も好調なセールスを見せ、昨年1年間を通じて売れ筋上位の座をキープし続けた。
「初代バイオWは昨年2月の発売以来、5−6週間トップをキープしていた。あまりの好調さにわれわれの供給が追いつかず、3月後半から品不足状態となって販売トップの座を一旦退いたものの、マイナーバージョンアップ版を出した4月以降は再びトップに返り咲いた」(高梨さん)。
この動きをライバルメーカーも黙って見過ごすわけにはいかず、富士通が昨年10月に液晶一体型のDESKPOWER Lシリーズを発表、11月にはNECもVARUESTAR FSを発表するなど、他社からも同じようなコンセプトの製品が次々と登場して“一体型PC”の新カテゴリーを築いた。
Net MD搭載は“バイオWらしさ”を生かす進化形
「バイオW誕生から1年を迎えるにあたり、それなりの進化を提示したいという思いがあった。ただし、進化する過程で“バイオWらしさ”を失いたくはなかった。バイオWならではの、PCを気楽に使うためのソリューションを追加したかった」(蜂谷氏)。
バイオWらしいソリューションとして、“Net MD”はすぐに候補として挙がったという。「そのほかにもDVD-RWなどが候補の1つにあがっていた。ただ、映像編集よりも、気楽に使えるというコンセプトから“音楽”というソリューションを選んだ」(蜂谷氏)。
だが、Net MDをどこに内蔵するかで大きな議論があったと蜂谷氏は振り返る。操作性を考えたら、手元に近い液晶ディスプレイ側面に搭載するのがベストな選択だ。しかし、右側面にはコンボドライブが、左側面にはメモリースティックのスロットがすでに内蔵されており、MDドライブが入る余地は液晶ディスプレイ部にはなかった。
「そもそもバイオWのデザインが、液晶ディスプレイの側面に何かを入れる設計ではなかった。それをユーザーの操作性を考えて、光学ドライブやメモリースティックを無理やり内蔵していた」(蜂谷氏)。
背面にある本体部には、MDドライブを搭載する余裕が残っていた。「だが後ろにもっていくと、いかにも無理やり搭載したという感じが払拭できない。使い勝手の面はもちろん、バイオWらしい機能をスマートに搭載するためにも、なんとしても液晶ディスプレイの側面に内蔵したかった」(高梨さん)。
議論を重ねているうちに、ある設計者が「自分の首を絞めることになるだろうが、もしかしたら入るかもしれない」と提案。少し余裕のあった左側面のスペースを使い、メモリースティックスロットの位置変更や小型MDドライブユニットを新たに開発するなどして、デザインの変更無しにNet MDを搭載することに成功した。
「本来入るはずのなかった場所にNetMDを内蔵したところが、新バイオWの一番のポイント。設計者のプロ根性を見せつけられた」(蜂谷氏)。
NetMDという音のソリューション追加に合わせて、内蔵スピーカーも新開発のものを採用。重低音の音質やメリハリ感を向上させるなど、良い音作りにもこだわったという。
コスト度外視でこだわったカラーリング
今回の新バイオWの全体のデザイン自体は、“コスメティックデザイン”と呼ばれる初代からのスタイルを踏襲しており、大きな変更は加えていない。
「1年経過したということでデザインを変えてしまおうという意見もあったが、ワイド液晶に折りたためる一体型キーボード、カーブを描いた本体部など、こだわりのデザインが1つのカテゴリを作り上げたと思っている。その意味からも大きな変更はせず、息の長いデザインにしていこうということになった」(高梨さん)。
新モデルでこだわったのは、ボディのカラーリングだ。
新しいカラーバリエーション展開を行った新バイオWでは、白系の“ムーンホワイト”と青系の“コスモブルー”の2色が用意された。デザインのテーマは“夜空の明暗”。「ムーンホワイトはスタンダードカラーとして、NetMDモデルにしかないコスモブルーは、MD世代の若々しさ、アグレッシブさをイメージした」(高梨さん)。
初代のバイオW同様に、10数種類に及ぶ色見本を作成して選び、2色に決まってからも微妙な色合いのブラッシュアップなどでさらに色見本を作ったという。「色見本は、いくつ作ったかわからないほど。最終的に選ばれた今回の2色は、色専門のデザイナーのこだわりが込められている」(高梨さん)。
例えば、コスモブルーは“ブルー”といっても、実際には青系の塗料は一切使っていないという。「黒をベースに赤の粉を吹き付けて、目の錯覚で青に見せている。これもデザイナーのこだわり。通常のPCに比べたら段違いのコストをかけて、塗装を行っている」(高梨さん)。
液晶パネル部の模様も前回まではドットだったのが今回はストライプを使い、宇宙や空間の広がりをイメージして下に行くほどストライプの幅が広がっている。キーボードパネルやキートップもそれぞれ独自色を採用。背面本体部のカバー色も、それぞれ異なるカラーリングが施されている。
「前モデルまでは、共通部品を多く使っていたが、今回は各色ごとにカラーリングをかえており、コスト面ではかなりキツくなった(苦笑)」(高梨さん)。
ユーザー調査では、年齢層が20代から60代までと非常に幅広いユーザーに支持されているバイオW。NetMDという“バイオWらしい”ソリューションを手に入れ、自慢のデザインに磨きをかけた新モデルは、今年もデスクトップPC市場を賑わしそうだ。
[西坂真人, ITmedia]
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