News 2003年3月12日 05:42 PM 更新

Centrino搭載ノート、各社の製品コンセプト
Centrinoマシンに与えられた“任務”は?――日本IBM「ThinkPad T40&X31」(2/2)


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 このハイエンドイメージの実現は、CPU、チップセット以外のパーツにも及んでいる。上位機種ではビデオチップにMOBIRITY RADEON 9000、もしくはFireGL 9000。HDDは80Gバイト、有線LANは1000BASE-Tをサポートしている。

 Cenrinoブランドで必ず問題とされる無線LANだが、上位機種ではIEEE 802.11a/bデュアルバンドサポートのPhilipsのチップを搭載。IEEE 802.11bシングルバンドサポートでも、Centrinoブランドで指定されているIntel PRO/Wireless 2100搭載機種と共に、従来からIBMが採用してきたCiscoのチップを搭載したモデルも残している。下位機種では無線LANをサポートしていない。当然、これらのモデルにはCentrinoブランドではなくPentium Mロゴが貼付される。


T40の基板。CPU、ビデオチップ、ノースブリッジ、メモリなど発熱量が多いパーツはきょう体後方へレイアウトされている。ヒートシンクは大型でヒートパイプによってファンに伝熱される

 このように、ラインアップ的にCentrino全面採用としなかった理由として、IBMはCentrinoがIEEE 802.11bしかサポートしていないことではなく、「ユーザーに対して選択肢の自由を提供したに過ぎない」(後藤氏)と述べている。IEEE 802.11bで複数のチップをラインアップに揃えていることも、「Ciscoのチップが提供するセキュリティなどの付加機能が必要な企業ユーザーと、そこまでの機能を必要としない個人ユーザーに選択の幅を与える」ため。これもThink Vantageにおける「問題解決ソリューションの提供」に基づいたラインアップというわけだ。

Pentium Mを想定していたThinkPad X30

 X31は従来機種のX30ときょう体はほぼ同じ。伊山氏は「X30の開発時点でPentium Mの情報が入ってきていたので、設計はこのCPUの搭載を前提として行われていた」と説明する。


「基板を撮影したいのですが」と言う記者のリクエストに応じてX31の分解に取り掛かる伊山氏。女性がB5ファイルノートPCを分解する光景は、やっぱりまだ珍しい

 X31に与えられている仕様要求は「常時持って歩け、移動先でも移動中でも使える携帯性の実現が最重要課題。また、バッテリ駆動時間は標準で6時間、大容量バッテリで10時間。さらには堅牢性も従来通りで、かつメインマシンとして使えるためのパフォーマンスと12.1インチ液晶パネルの搭載が最低条件」(伊山氏)というもの。

 X30と比べ、きょう体サイズは維持、バッテリ駆動時間とパフォーマンスは向上させなければいけなかったわけだ。

 一方で価格については、「メインマシンとしてのパフォーマンスがより優先されていた」という事情があり、これが搭載CPUにLV Pentium M/1GHzやULV Pentium M/900MHzではなく、ノーマルのPentium Mを採用した理由となっている。

 ただ、「LV Pentium MやULV Pentium Mでもそれほど価格は安くならない半面、メインマシンとしてのパフォーマンスはもっと必要だった」(伊山氏)と評価したようだ。

 ノーマルPentium Mを搭載したX31は、全体として発生する熱がX30よりも増加した。そのため冷却機構は再設計され、ヒートシンクは排気孔のフィンの数と体積を増やし、その分密度を軽くしてX30の冷却機構と同程度の重量に抑えるなどの工夫がなされている。


X31の基板。ファンの左にCPUが実装されヒートパイプでファンに熱が導かれる。その脇はビデオチップであるが、従来通りのMOBIRITY RADEON M6なので、発熱はそれほどでもない

 IBM製1.6キロ級ノートPCでいつも疑問に思っていたのが「なぜ光ディスクドライブが内蔵されないのか」だ。松下電器産業やシャープのノートPCでは同じ1.6キロ級で光ディスクドライブ内蔵があたりまえだし、1スピンドルマシンのトレンドは1−1.3キロになって久しい。

 この事情にもThink Vantage思想が見え隠れする。「Xシリーズへの光ディスクドライブ搭載の要求はまだ少ないと考えていることと、ほかのラインアップとのポジショニングによる。軽量、1スピンドルを実現したT40との差別化も重要。また、きょう体が小さいので堅牢性も考慮しなければならない」(伊山氏)。

企業ユーザーにはプロモーションでアピール

 Centirnoで必ず出る話題がプロモーションの難しさ。パフォーマンスが高いのにクロックが低いCentrino、もしくはPentium Mの良さをどのようにアピールするか。インテルが悩んでいるくらいだからPCベンダーも悩みは深い。

 ただし、企業チャネルがメインの日本IBMではいささか事情が異なるようだ。

 「クライアントにプレゼンをする席上で、ベンチマークなどで測定したパフォーマンスのデータを提示しながら、Centrinoのアドバンテージをアピールできる」(後藤氏)。

 パフォーマンスデータを提示しながらプロモーションができる企業チャネルでは、「分かりやすい指標」というのはそれほど必要とならないらしい。その意味では日本IBMは恵まれた条件にあると言えるだろう。



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[長浜和也, ITmedia]

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