News 2003年5月1日 06:21 PM 更新

「ロボットに敬礼させたい」――SOK、警備ロボット開発ストーリー

“働くロボット”としてすでに実用化されている綜合警備保障の警備ロボット「ガードロボ」。20年以上に及ぶロボット開発の経緯や2足歩行の可能性、レイバーチックなデザインなどについて開発者に話を聞いた

 誰もいないビルのフロアを、“カレ”はわずかなモーター音とともに巡回していく。誰かが巡回路に置いてしまったゴミ箱もセンサーで素早く感知し、別の迂回路を通って再び巡回を続ける。もし誰かが声を潜めて物陰に隠れていても、熱源センサーが侵入者を把握し、無線で警備センターに異常が報告される。

 フロアをひととおり巡回した“カレ”は、次のフロアに向かうためエレベータホールに向かう。ボタンを押す手はないが、“カレ”は無線でエレベータを呼び出し、何事もなかったかのようにスッと乗り込む。胸に装備されたタッチパネルは、昼間の受付案内で使うものだ。全フロアの巡り終えた“カレ”は、静かに充電器へ身を寄せて次の巡回までしばしの休息をとる――。


 “カレ”――警備ロボット「ガードロボ C4」を開発したのは、警備大手の綜合警備保障だ。同社技術研究所主任研究員でロボット開発リーダーの菅原雄介氏は「危険で辛い警備の仕事を、ロボットに置き換えることで人間の負担を軽減できれば、ということから当社のロボット開発はスタートした」と、その開発経緯を語る。


同社技術研究所主任研究員の菅原雄介氏(左)と同研究所研究員の森口拓雄氏(右)

 同社は1982年からロボット開発をスタートするなど、その歴史は長い。「当時から少子化の問題が叫ばれていて、将来の警備員不足も懸念されていた。ロボットが警備員の代わりにとなるように、開発当初から台車に警備用機能を搭載して自動走行する自律型のロボットを目指していた」(菅原氏)。


同社がこれまで開発したロボット

 初期モデル(A型)から3号機(B2型)までは、消火作業をメインに考えられていたが、4号機(C1型)から、警備だけでなく受付や案内のできるサービスロボット的な機能に開発の重点が置かれた。冒頭で登場した「C4」は7号機で、昨年4月から販売を開始した同社初の商品化ロボットだ。価格は950万円(基本モデル、本体のみ)から。用途に合わせてさまざまなカスタマイズに応じており、静岡県の浜松科学館で来訪客を案内しているロボット「グリ夢(む)ちゃん」は、C4をベースにしたものだ。


20年間では地上走行モデルを開発していた時期もあったという。写真はキャタピラで地上走行できるロボットで、1990年代に開発したもの


今年のROBODEX 2003では、C4の量産モデルが登場した

 だが20年以上に及ぶ同社のロボット開発の道のりは、けっして順風満帆だったわけではない。

 日本初のパートナーロボット展示会「ROBODEX 2000」が開催された2000年11月、5号機(C-2型)を出展した菅原氏らは「ロボットを出展する最後の展示会だな」と話していたという。当時、過去10数年間で開発したロボットも5体目となり、成果がなかなか見えてこない“金食い虫”の事業に社内から批判の声が上がっていたからだ。

 「結果的には、プライベートでROBODEXを訪れていた当社の本部長がロボットに感動してくれ、“鶴の一声”でロボット開発が再び始められることになり、現在に至っている。それだけにROBODEXには特別な思いがある。毎回、再スタートという気持ちで取り組んでいる」(菅原氏)。

志望動機は「ロボットが作りたかったから」

 菅原氏は1994年に同社へ入社。志望動機は単純明快、「ロボットが作りたかったから」だ。

 「会社の面接の最後に『ロボット以外はやらないのか』と聞かれて、『やりません』と答えて怒られた。それでもなんとか入社できた」(菅原氏)。

 この菅原氏、プライベートではロボット格闘技大会「ROBO-ONE」の常連さんでもある。第2回大会まではロボットの操縦よりも解説や実況で会場を沸かせる“マイクパフォーマー”として有名だったが、第3回大会ではその汚名?を返上し、見事優勝を果たした(別記事を参照)。


菅原氏はロボット格闘技大会「ROBO-ONE」の常連さん。手にしているののは、第3回ROBO-ONE優勝ロボット「A-Do」

 「社内的にはこれまで“2足歩行なんて…”という声が多かったが、優勝したら“ROBO-ONEの技術を警備ロボットに使えないのか”という声が出てくるなど、2足歩行が身近になった。ホンダやソニーじゃなくても、趣味のレベルでできるんだという意識が、社内でも高まったのはROBO-ONE優勝の成果」(菅原氏)。

2足歩行型ガードロボの可能性

 2足歩行できる警備ロボットの可能性はあるのだろうか。

 「本当はやりたいが、警備の仕事において2足歩行のプライオリティは低い。安全性の問題やバッテリの駆動時間を考えたら、現在のタイヤやローラーのようなものが向いているからだ。だが、まったく可能性がないわけではない」(菅原氏)。

 菅原氏は、警備の現場を知る目的で数カ月間研修した夜間警備の体験を振り返り、こう話す。

 「実際に警備の仕事をやって気づいたのは、誰もが足の疲れを痛切に訴えたということ。エレベーターがあるビルでも、警備の現場では非常階段の上り下りを繰り返している。非常階段の途中も警備の場所だからだ。また、ビルの外の平らでない場所も警備の範囲となる。そうなると、脚型のロボットが必要になってくる。2足歩行は“警備”という仕事からそんなにずれている話ではない」(菅原氏)。

「C4」のデザインって、やはり“アレ”ですよね

 張り出した胸部からくびれた腰までのライン、パトカーを思わせる白黒のツートンカラー、肩に装備されたパトライト……。C4のデザインは、菅原氏の意見が多く取り入れられたという。


 このデザインって、やはり“アレ”ですよね。菅原さん。

 「パトレイバー、大好きですね。産総研のロボット“HRP-2”のデザインを出渕裕氏が担当したと聞いた時、“いいなあ、うらやましい”と本気に思いました。水に入ると壊れるし、電池が切れる時間も数十分だし、普通のレイバーは空も飛べないといった現実的な設定がパトレイバーのいいところ。将来的には、あのクラスのロボットを作るのが夢です。逆に完全自律のアトムのようなロボットにはあまり興味がない。子供の頃、建設機械が好きだった。あこがれは、自分の力よりも大きな力を出せるもの。男のロマンです」。

 「いつかはC4に腕を付けて敬礼をさせたいですね。もちろん、腕のプロテクターには警視庁もとい綜合警備保障って文字を入れますよ」。

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[西坂真人, ITmedia]

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