News 2003年4月7日 05:59 PM 更新

「燃料電池」で広がる“アトムの世界”(1/2)

ROBODEX2003では、アトムのように内部でエネルギーを発生させる“燃料電池”を搭載したロボットが登場。バッテリ駆動が中心だったパートナーロボットの新しいエネルギー源として注目を集めた。ヒューマノイド開発で先行するホンダやソニーも、燃料電池には前向きだ

 今日2003年4月7日は、鉄腕アトムの誕生日。時代はどこまでアトムに追いついたのだろうか――。

 「アトムが生まれた年のパートナーロボット博覧会」として、誕生日を目前に開催されたROBODEX2003では、今後のロボット開発におけるエポックメイキングな出来事があった。


 それは、パートナーロボットへの“燃料電池”の搭載だ。

 “ATOM”の名が示す通り、鉄腕アトムは小型原子力をエネルギー源にしている。だが現実のロボットはというと、本田技研工業のASIMOはニッケル水素充電池、ソニーのSDR-4X IIがリチウムイオン充電池と、外部からの電源供給が中心で、アトムのように内部でエネルギーを発生させるまでには至っていなかった。

 ROBODEX2003では、東芝綜合警備保障が燃料電池を搭載したパートナーロボットを参考出展。バッテリ駆動が中心だったパートナーロボットの新しいエネルギー源として注目を集めた。

 燃料電池とは、燃料を使用して電池のように動作する発電装置のこと。水の電気分解とは逆の反応で、水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作り出す。10万馬力を発生するアトムの原子力エンジンにはかなわないが、これも立派な内部エネルギー発生装置だ。

 さらに、化学反応によって発生するのは水(水蒸気)のみというクリーンさも魅力。“未来のエネルギー源”といわれるゆえんがここにある。化学反応に使う水素を生成するための燃料には、主に天然ガス/LPGなど水素を含んだガスやメタノールなどが使用されている。

東芝の燃料電池は“補助バッテリ”

 東芝が燃料電池を搭載したのは、ホームネットワークに繋がることで人間と家電の“仲介役”を果たす家庭用ロボット「ApriAlpha」(アプリアルファ)。分散オブジェクト技術を用いて各種インタフェースの標準化を図る「ORCA」(Open Robot Controller Architecture)を採用している(詳細は別記事を参照)。


人間と家電の“仲介役”を果たす家庭用ロボット「ApriAlpha」

 ApriAlphaは、内蔵リチウムイオン充電池で連続約2時間の動作が可能など、パートナーロボットとしては長時間駆動が特徴だが、ROBODEX2003ではApriAlphaの機能拡張版として外付けのダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)搭載モデルが参考出品された。


ApriAlphaの機能拡張版として参考出品された燃料電池搭載モデル

 搭載されたDMFCは、同社が3月5日に発表したノートPC用と同じもの。今年3月に催されたCeBITでお披露目された時は、Librettoのリチウムイオンバッテリー接続コネクタに直接接続してノートPC直結での駆動をアピールしていたが、今回のDMFCは“補助バッテリ”として内蔵リチウムイオン充電池に対して電気を供給する方式となり、ロボットの直接のエネルギー源ではない。


ApriAlphaの背中に搭載されたDMFCは、内蔵リチウムイオン充電池の“補助バッテリ”の役目

 燃料電池だけで駆動できない理由は「DMFCが生成できる電力量(ワット数)の低さ」だ。

 「ノートPCの駆動をメインに作られた今回の燃料電池は、平均12ワットの出力しか出せない。しかし、ロボットでは駆動用モーターで瞬間的に大電流が必要となる。また、TDP値の高いデスクトップ用CPU(Pentium III)を使っているのも高出力が必要な理由の1つ。ApriAlphaを駆動させるためには、50−60ワットの電力が必要」(同社)。

 現在、燃料電池のみでのApriAlpha駆動を目指し、燃料電池の高出力化と、ロボット自体の省電力化の両方で開発を進めているという。

燃料電池で“24時間働く警備ロボット”

 総合警備保障では、2002年4月に発売した警備ロボット「ガードロボC4」の走行部となる燃料電池搭載モデル「XFCR-01」を試作。ROBODEX2003の同社ブースでお披露目した。


「ガードロボC4」の走行部となる燃料電池搭載モデル「XFCR-01」

[西坂真人, ITmedia]

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