News | 2003年3月14日 04:23 AM 更新 |
東芝はCeBITのブースで、ノートPCに直結させて利用できる燃料電池のデモを行っている。3月5日に発表したダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の実機となる(3月5日の記事参照)。燃料電池を接続したLibrettoは連続駆動しており、無線LANを通じてネットに接続されていた。
高濃度のメタノール、50ccで約5時間の駆動が可能。燃料は、内蔵されたポンプを使い、3ー6%程度の濃度に希釈して使う。燃料電池は発電の際に水が発生するが、それを再び燃料として再利用する。
ダイレクトメタノール型燃料電池では、ポンプを使わないタイプを開発しているメーカーもあるが、「ポンプを使うと、出力を高く取ることができ、効率も上げられる。システムとして複雑になっても、ハイパワーを取るという選択をした」と同社研究開発センターの宮本浩久工学博士(給電材料・デバイスラボラトリー研究主務)。
専用のPCを用いるのではなく、リチウムイオンバッテリーの接続コネタクタに直接接続できることが、今回の燃料電池の特徴だ。宮本氏は、「駆動させる機器のパワーマネジメントをどうするか」が開発のポイントだったと言う。
同社は既にPDA向けの燃料電池を開発し参考出展しているが(2002年10月の記事参照)、PDA向けが3−5ワット程度だったのに対し、今回のPC向けは12ワット。
「PCの場合は、負荷電流の変化が激しい。静止状態ではなく、画面が動いている平均12ワットの負荷を想定した」と宮本氏は話す。
単なるリチウムイオンの置き換えではなく、AC不要の世界を
燃料電池というと、“リチウムイオンバッテリーよりも遥かに長時間駆動が可能”という世界を思い浮かべる。しかし開発のターゲットは、単なるリチウムイオンの置き換えとは少々違うようだ。
「リチウムイオンは、最終的にはAC電源がないとダメ。燃料電池は、(燃料の)カートリッジさえ持っていけばAC電源がなくても使える」(宮本氏)。
単に5時間PCを駆動させるだけならば、リチウムイオンバッテリーのほうが小型で軽量。しかしバッテリーが尽きたら何の役にも立たない。燃料電池は小型の燃料さえ補給してやれば、何時間でも動き続ける。燃料電池は“電池”と付いているが、実際は“発電機”だからだ。
東芝は2004年の発売をターゲットに開発を進めているが、当初はコンシューマー向けではなく特定用途向けとなる。「日本ではあり得ないが、世界では電源が確保できない場所は数多い」と宮本氏。たとえば砂漠の真ん中などでも、燃料電池ならば動き続ける。以前から宇宙船で燃料電池が使われていたのは有名な話だ。
2004年に向けて、各社がモバイル機器向け燃料電池の実現を目指している。PDAに続き、ノートPCでも実際に動作する燃料電池を一般公開した東芝が、一歩リード、といったところだろうか。
[斎藤健二, ITmedia]
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