News | 2003年7月23日 11:48 PM 更新 |
「銀塩カメラに追いつき追い越せ」と高画質化競争を繰り広げてきたデジタルカメラの世界に、“いつでもどこでも持ち歩けるウェアラブル機”という新風を吹き込んだソニーの超小型デジカメ「サイバーショットU」シリーズ。90グラムを切る手のひらサイズの軽量コンパクトボディは市場で人気を呼び、初心者から女性層、ベテランユーザーのサブカメラ用途までと、幅広いユーザーが支持した。
好調なセールスに後押しされるように、昨年6月にデビューした初代機「DSC-U10」から、2メガピクセルに高画素化にした「DSC-U20」、そして今年6月に登場した最新モデル「DSC-U30」と1年間で3回のモデルチェンジを行い、防水モデル「DSC-U60」といった新展開も見せるなど着実に進化を続けている。
デジカメの新ジャンルを築き上げたサイバーショットUシリーズの生い立ちや開発コンセプト、今後の製品展開について、ソニーマーケティング パーソナルイメージングプロダクツMK課の御子柴正武マーケティングマネージャーに話しを聞いた。
超小型のウェアラブルデジカメでは、カシオ計算機が2002年3月にCeBIT 2002で公開した「EXELIM」に先を越されたカタチとなっているが、気軽に持ち歩ける“手のひらサイズデジカメ”というコンセプト自体は、2000年7月に発表した「100円ライターより小さいデジカメ」に端を発している。
「3年前に発表した超小型デジカメ試作機が、サイバーショットUの原点。この試作機をコンシューマ向けに発展させた第一弾がDSC-U10であり、試作機のコンセプトを極限までつきつめてできたのが、今年6月に発表したQUALIA 016となる」(御子柴氏)
超小型サイズへの追求の中で、ライバルEXILIMのような薄型方向への展開も検討されたという。また、より小型化を目指すのなら、3年前の試作機やQUALIA 016のように専用の小型充電池を使ってメモリースティックDuoを採用した方が、本体設計にも余裕が生まれるというもの。だが、サイバーショットUはその選択肢をあえて採用しなかった。
「スティックスタイルのボディは、小型化の中でも握りやすさ、撮影しやすさを追求したもの。バッテリーに関しては、どこでも気軽に入手できて家で簡単に充電できる単4形充電池を使用することにこだわった。推奨はしていないものの、緊急時にはアルカリ乾電池も使用できるというのは、常に携帯するウェアラブルデジカメには欠かせないポイント。単4形充電池2本を本体に収めなくてはいけないことで、Duoを使うメリットも薄れた」(御子柴氏)
デジカメ性能のバロメータとされることの多いCCDの解像度に関しても、サイバーショットUの考え方は少し違う。2代目のDSC-U20でCCDが130万画素から200万画素に変更され、3代目(DSC-U30)では「いよいよ300万画素に突入するか」と思われたが、予想に反して従来の200万画素タイプをそのまま継続した。
「もともとサイバーショットUは、200万画素をターゲットに設計されていた。スタートが130万画素だったのは、発表当時に市場ではまだ2メガピクセル機が多く、CCDがわれわれの求めるコストバランスを満たしていなかったため。3メガピクセル機が主流となってきた昨年末に、ようやくコスト的に200万画素CCDを使えるようになった。もっとも、高画素化への要望はユーザーアンケートでも上位にくる項目だが、サイバーショットUの開発にあたって(高画素化の)優先順位はかなり低い」(御子柴氏)
ライバルは“カメラ付きケータイ”
ウェアラブルな情報機器としては、カメラ付き携帯電話が最大のライバルになるだろう。高画素化が進む携帯電話のカメラ機能は、メガピクセル化のみならず、今秋〜年末には200万画素という声もあがっており、CCDのスペック的にはサイバーショットUと肩を並べることになる。そして液晶ディスプレイに関しては、2インチ以上が当たり前の携帯電話の方がかなり有利だ。
、もっとも、携帯電話の液晶ディスプレイがいくら大きいといっても、プレビュー画像のサイズや応答速度など、大画面に対応しきれていないのが現状だ。撮影撮影後の処理スピードなど、カメラとしてのレスポンスも雲泥の差がある。また、同じ解像度で撮影した画像も、携帯電話とサイバーショットUとでは、“画作り”に比較にならないほど違いがある。
「だが携帯電話の高機能化の流れは速く、スペック的に今のデジカメ並みになるのは時間の問題。今後サイバーショットUが目指すのは、カメラとしての“質感”や“使いやすさ”。『基本は電話』の携帯電話とは生い立ちが違うことを明確にしていきたい。カメラとしての基本性能を必要十分に満たした上で、気軽に持ち歩けるためにどれだけ小型にできるかとか、液晶ディスプレイの見やすさなどを追求していく」(御子柴氏)
[西坂真人, ITmedia]
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