News:アンカーデスク 2003年9月4日 06:57 AM 更新

iPodへの挑戦者――東芝gigabeatとiHP100が示すもの(3/3)


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 とは言え、不満点も見つかる。

 まず日本語フォントが見にくい。特に漢字は中国語に近いデザインで文字サイズのバランスも悪い。また液晶ディスプレイ付きのリモコンは、ほとんどすべての操作をリモコン内で行えるが、本体からリモコンにかけてのケーブルが太く取り回しが悪い。さらにデータベース作成ユーティリティはMP3にしか対応しておらず、WMAファイルの曲情報タグを読んでくれないなど、ツメの甘さを至るところに感じてしまう。

 また、音質の面ではアナログライン出力はそこそこに良いが、ヘッドフォン出力のS/N比が悪く(カタログ値では90デシベルだが、ノイズフロアの高さをハッキリ感じられるレベルのノイズがある)、ピークレベル近くでの歪みも比較的強く感じる。平たく言えばクリアさがないのだ。中域は厚く、エネルギー感を強く感じる元気の良い音なだけに、基本的な特性の悪さが残念でならない。

 そしてもう一つ、価格面での不満もある。本機の実売価格は4万9800円ほど。gigabeat G20よりは安いものの、ブランド力やハードディスク容量などを考えると、割高な印象はぬぐえない。

 韓国最大手のMP3関連製品ベンダーiRiverは、薄型のMP3/WMA対応CDプレーヤのSlim-Xシリーズで広く知られるようになったが、元々、旧ダイアモンドマルチメディアなどにMP3プレーヤーをOEM供給してきた実績があった。今では自社ブランド製品で、韓国MP3市場で70%のシェアを持つ。

 今回取り上げたのはハードディスク音楽プレーヤーだが、親会社がSamsung製半導体の代理店を務めていることもあり、大容量のフラッシュメモリを用いたプレーヤーが主力製品である。

 そのiRiverはこれまで、代理店を通して日本市場に製品を出荷していたが、販売経路が多少複雑でコミッションを得る企業が多く、韓国での価格に比べてかなり割高になっていたのが、価格的な魅力の低さにつながっていたようだ。

 しかし先日、iRiver日本法人「アイリバー・ジャパン」がスタート。元ダイアモンドマルチメディアの日本法人社長だった遠藤信久氏がスタートアップの責任者を務め、流通面での整理を現在行っているところだという。

 自社の日本法人から直接ディストリビューターに製品を出荷することで、1台あたり3000〜5000円は下げることが可能になるとか。iHP-100に関しても、20Gバイトハードディスクを搭載する新モデルを、従来機と同じ実売価格4万9800円程度で販売する見込みだという。

エンドユーザーにアピールするには、吹っ切ることも必要?

 話が製品レビューに偏ってしまったが、この2機種を使ってみて改めて思ったのは、日本の大手総合電機ベンダーと韓国のベンチャー企業との、製品開発に関する考え方の違いである。  gigabeat G20はとても日本的な、あえて機能を絞り、デザインや軽さ、小ささ、スッキリ聴き疲れしない音質にチューニングされた製品である。著作権管理に関しても気が使われており、gigabeat G20を媒介役として音楽のデジタルコピーが広がらないように転送したファイルは暗号化される。

 PC関連の部門から発生した製品だけに、純粋なAV機器として見ると違和感を感じる部分もあるものの、明らかに日本のベンダーが作った無難な製品というイメージだ。

 これに対してiHP-100は、S/N比の悪さやリモコンケーブルの太さなどに代表されるように、機能やスペックの面ではどこにも負けないが、品質に関するツメの部分は今ひとつ。著作権保護に関してもユーザー任せで、メーカー側で制限を行うことはしないという、非常に韓国ベンダーの作品らしい特徴を持つ。

 両者の機能差に一種のジレンマを感じるのは、筆者だけだろうか? できることだけを比較すれば、iHP-100の圧勝である。仕事で日常的にボイスレコーダを使う筆者は、例え同じ価格でもiHP-100の方を選ぶだろう。だが、その差はハードウェア製造者としての技術力やファームウェア開発力によるものではない。

 例えば、光デジタル入出力を備えることも、MP3エンコードを行うDSPプログラムを書くことも、東芝はできたはずだ。それをやらないのは、コンテンツベンダーと共存共栄を図ってきたAVベンダーとしてのモラル意識からだと思う。

 しかし一方で、ファームウェア開発を行えるだけの技術力があれば、新興ベンチャー企業でも魅力的な機能を備えることが可能な時代であることも事実だ。TIやCirrus Logicが汎用品として出荷しているAV機器組込用のDSPを買ってきて、その上にソフトウェアを書けば、独自の半導体技術や特に高い製品製造技術を持たなくともiHP-100のような製品を作ることができてしまう。

 筆者は著作権保護の必要性を否定するつもりはない。しかし、MP3やWMAのCDからの録音に関して言えば、すでに著作権保護のメカニズムは崩壊してしまった後だ。その中で、あえてモラルを意識しようとすると、エンドユーザーの使い勝手や機能の面で著しい制限を加えなければならなくなる。では、そうした“自主規制”を行わない製品に違法性はあるのか、と問われれば、違法性はないという回答になる。

 これでは、せっかく努力して小さく、薄く、軽い製品を作ったとしても、その魅力を受け入れる相手が振り向いてくれない、なんてことになりかねない。“やろうと思えばできる”ことはたくさんある。しかし、“やってしまえる”立場にはない。特にgigabeat G20は、ファームウェアこそこなれていないものの、純粋にモノとして見た時には良い仕上がりになっているだけに歯がゆい。こうしたジレンマに対して、日本のAV機器ベンダーは、これからどのような回答を用意するのだろうか?



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関連リンク
▼ gigabeat G20

[本田雅一, ITmedia]

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