News | 2003年10月14日 09:37 PM 更新 |
また、小川氏は、指紋を付けたベアディスクを使った再生テストのビデオも公開。もちろん限度はあるものの、通常の指紋であればふき取らなくても問題なく再生できるということも示した。「Blu-rayのビームは、指紋の“条”を分解します。指紋を一条、一条読んでくるんです。つまり、指紋に対する対応が違う、ビームが読んでくる形が違うんです。それに合わせればいいんです」(小川氏)
これは、レーザーのビームスポットの形状が小さいBlu-ray Discでは、デフォーカス効果は小さいが、信号的にみたドロップアウトの時間が短いという特性を利用し、エラー訂正によって対応できるということを語ったものだ。
デフォーカス効果とは、信号が基準より多少乱れても誤りが検出されないという効果である。レーザー光を読み出し信号に使用する光ディスクでは、とどのつまり、全反射による光の強さと乱反射したときに光の強さとをきちんと読み出せれば、誤りは検出されない。
もしビームスポットの大きさが障害物よりも大きければ、その周りから光が透過するので、信号的にみると少し暗くなる(少し乱れる)程度ですむ。この光の暗さが、基準を満たしていれば正常な信号として検出できるというわけだ。
だが、Blu-ray Discのビームスポットは、形状がごく小さいため、指紋を透過することはできない。デフォーカス効果は小さいわけだ。その結果、指紋の上では、一瞬ものすごく暗くみえる。つまり大きな“ドロップアウト(暗く見えること)”が発生する。ところが、このドロップアウトは、ビームスポットの形状が小さい分、時間的に見ればごく短くて済む。
もちろん、このドロップアウト自体はエラーとして検出されるが、言うなればこれは“信号的にエラーが検出されただけ”なのである。こういったエラーに対処できるようなエラー訂正を導入しておけば、問題に対処することができるというわけだ。
「今回は、リードだけをお見せしましたが、実は、ライトに対してもある程度(対応できるという)確信はすでにもっています。ライトの時は、何かが検出されたとき、そこにデータを書くかどうかという判断をすればよいのです。現在、そこのアルゴリズムは、10社で確立しているところです」(小川氏)
小川氏は、薄型のノートで使っても「大丈夫」と胸を張る。「家庭でお子様たちが使われるディスクとしては、まだ、残念ながらちょっと自信がありません。フェアではありませんが、CD、DVD、ハードコートしたBlu-rayに指紋をつけてみて、一番強かったのは、Blu-rayでした」(小川氏)
レーザーの歩留まりも問題なし――CD/DVD兼用ピックアップ開発にも自信
Blu-ray Discに限らず、次世代光ディスク共通の問題点として挙げられるのが、キーパーツである青紫色レーザーの「歩留まり」だ。青紫色レーザーは、すでにBlu-ray Discレコーダーが発売されているものの、その価格はまだまだ高いと言われている。
小川氏はその点についても触れ、1136個のレーザーをサンプルにした歩留まりの社内調査結果を示した。それによると約95%が製品として使用できるというものだった。
「ちゃんと作れば、青紫色レーザーは、きっと良いものがたくさん作れます」(小川氏)
また、最近の焦点の一つになっているCD/DVD兼用のピックアップの開発についても、小川氏は今年5月に行われたODS2003で発表されたSamsung開発の小型ピックアップを例に挙げ、めどが立ってきていることを強調した。この小型ピックアップは、レボルバー式とも言えるもので、2個の対物レンズを用意し、それを用途によって回転させて切り替えるというものだ。他にもLG電子が、ホログラム素子を利用した1レンズ方式のピックアップを開発している。
Blu-ray Discはビデオだけじゃない!
CEATECにおける小川氏の講演は、実はそのほとんどが、DVDフォーラムがHD DVDのメリットとして強調し、そこでBlu-ray Discのデメリットとされている点を否定するものだった。
実際、小川氏は冒頭で、「Blu-rayはビデオレコーダーだけだ、という人がいます。そんなことはありません。ハイビジョンの映像ソフト、それからコンピュータペリフェラルズ、すべてやっていきます」と語るなど、相当にHD DVDを意識していることを感じさせた。ちなみにこの時、奇しくもHD DVDを推す東芝の首席技監の山田尚志氏(デジタルメディアネットワーク社 首席技監)が会場に入ってきて着席。あたかも山田氏に向けられたようなこの発言に、同氏が“苦笑”するという一幕もみられた。
小川氏は、「これから話すことは、これからお見せする10人の方が同じことを言います」とBlu-ray Discファウンダーズを構成する10社の中で、規格策定の中心メンバーとなっている人たちを紹介。その結束の強さも訴えていた。
[北川達也, ITmedia]
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