News | 2003年10月30日 10:22 PM 更新 |
NECが明らかにした中期成長戦略の最終到達点は「営業利益率7%、ROE 15%、D/Eレシオ 1.0」という数値目標。この目標を今後3〜4年かけて達成していく予定になっている。「3〜4年というのは、社内的には“3年”と号令をかけているが、状況の変化では4年で目標を達成することもありえる」(NEC代表取締役社長 金杉明信氏)
この数値目標を達成するために、NECが掲げる大戦略が「日本市場を軸とした確実な収益確保に安定成長」を足がかりにした「新たな成長機会の創造と獲得」。NECが日本市場でトップシェアを確保しているジャンルをより確実安定な状況にしたうえで、ユビキタス社会の実現にむけて立ち上がるであろう「新しい市場」でも主導権を取りに行く、というものだ。
NECが国内でトップシェアを維持しているジャンルとは、SIサービス事業の「ITソリューション」と、ブロードバンドネットワークや携帯電話インフラ事業の「ネットワークソリューション」。NECは、これにLSI製造の「半導体ソリューション」を加えた3事業を、中期成長戦略における主要3本柱として展開していく。
なお、現在の売り上げ規模は、ITソリューションで2兆1000億円、ネットワークソリューションで7900億円、半導体ソリューションで9400億円。これを先に掲げた「営業利益率7%」が実現する中期戦略達成時には、それぞれの伸び率が3%、9%、5%となる予定だ。
この伸び率でも分かるように、とくに期待をかけられているのがネットワークソリューション事業。世界で「最も早く最も安い」ネットワークインフラを実現した日本では、ブロードバンド利用サービスが年率10%で伸びていくと見られている。
基盤インフラとしては珍しく、コンシューマー主導で普及が進んでいるブロードバンドソリューションは、サービス拡充要求やデータトラフィックの増大に伴なって、これから企業や官公庁、通信キャリアで普及が進んでいく。「コンシューマーと企業官公庁自治体、キャリアの相乗効果で新たなITとネットワーク総合ソリューションニーズが拡大する」(金杉氏)
そのネットワークソリューション事業は「ブロードバンド」「社会インフラ」「モバイル」の各ソリューションに分かれて事業を展開している。
ブロードバンドソリューションでは、これまで最も規模が大きかったレガシープロダクト中心主義から、オープンソリューション中心主義にシフト。中期目標達成時の売り上げで、レガシー製品が20%減を予想しているのにたいして、オープンソリューションプロダクツは30%の成長を見込んでいる。
社会インフラソリューションとして重要視されているのが、地上波デジタル放送関連機器。すでに在京、在阪のキー局機材で70%のシェアを確保した実績を足がかりに、地方局への浸透やITとネットワークの融合によって立ち上がる新規ビジネスへの展開を目指す。
中期成長戦略の説明では、商品開発や製造を行うプロダクト事業についても言及。「3G携帯電話」「広域イーサネット」「VoIP」などの日本が得意とする分野に開発リソースを集中させて技術競争力を強化。あわせて年3000億円を上回るペースの原価削減で、プロダクト事業の再強化を実現するとしている。
現在、PDCでトップシェアを確保している携帯電話事業では、2004年後半に予想されるFOMAとPDCの需要逆転を見据えて3Gへの移行を積極的に推進。中期成長戦略で年率6%の成長を目指す。
「赤字を垂れ流してきた」と金杉社長が語るPC事業でも、中期目標達成時で営業利益率3%を目標に掲げている。「現在、1%ちょっとの状態だが、付加価値の高い製品を開発し、サプライチェーンの回転率を上げ、かつCSのトップになれば3%は実現可能」(金杉氏)
付加価値の高い製品とは、金杉社長がNECの独自技術と説明する「SoundVu」「水冷」「燃料電池」をコアテクノロジーとするハイエンドPCのこと。ハイエンドに集中したラインアップで、国内台数シェア30%を確保するとしている。「NECは付加価値の高いPCを供給する。低価格だけのPC市場には参入しない」(金杉氏)
中期成長戦略では、現在22%(2003年3月期)の海外売上構成比率を30%に拡大させる(年平均14%の伸び)計画も盛り込まれている。とくに重視されているのが中国圏。2004年に予定されている中国の3G携帯電話サービススタートを見据えて、中国にNECの3G開発拠点を設立し、モバイル関連研究開発陣容を1000人規模に拡大する。
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[長浜和也, ITmedia]
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