News:アンカーデスク 2003年11月10日 01:32 PM 更新

ビミョーな使い心地? のコクヨ製マウス(2/2)


前のページ

 そうなると、底面も気になる。裏返してみると、底面は二重構造になっており、中心部だけ見ればわりと普通のマウスっぽい。その周りに、やや柔らかい樹脂製の巨大な「ベロ」が付いているのだ。ベロの底面には細かいエンボス加工が施してあり、これが机面との接点を減らして摩擦を少なくするようである。


<手の匠>底面。二重構造になっているのが分かる

微少操作に悩む

 実際に使ってみる。つかんで滑らせてみた感じは、なんだか「小規模なアイロンがけ」といった風情。案外ベロの部分は机面に密着しないようで、懸念した底面の吸い付きはまったく起こらない。だがそれでも普通のマウスよりも接地部分が多いので、滑らせた感触が普通のマウスよりもザラついた感触である。

 また大きく動かす分には問題ないのだが、2〜3ピクセル動かすといった小さい動きが難しい。「ポインタの速度」設定にもよるのだが、筆者の好みにおけるマウスの物理的な移動としては、1〜2ミリ程度の動きである。

 普通のマウスであれば、このような動きは「ててと」を軸にして、指の中だけでマウスを移動させる。だが<手の匠>では、ベロの部分に「ててと」が乗っかっちゃってるので、そういう理屈では動作できないのである。

 おそらくPCで行なう事務系の作業、例えば書類書いたり表計算したりといった操作では、2ピクセル右にといった細かい動きは要求されない。だから通常の用途では、このマウスは問題ないのであろう。だがグラフィックス系、絵を描いたりCG作ったりといった作業では、このような細かい動きもいちいち作業画面を拡大せずにできるかどうかで、全体的な作業効率が大きく変わってくるのである。

 せっかく買ったのに、これはどーしたもんかいなーといろいろやっているうちに、だんだん分かってきた。ベロが付いているので、ついついそれを意識するあまり、マウス全体を動かそうとしてしまうのが良くなかった。そういう動きでも、同じように気にしないで「ててと」を軸にすれば良かったのである。

 ベロの上で「ててと」を強く押さえつけるとマウスは動かないのでは、と思われるかもしれない。しかしやってみると、「ててと」を中心として回転するようには動く。厳密には回転しているのだが、PCにしてみれば、横に移動したようにしか感知されないのである。

 これで左右の動きは確保できた。次の問題は、縦の小さな動きである。これもいろいろやっているうちに、ちょっとした技を発明した。マウスの操作で余った指、すなわち薬指と小指をベロの外側に伸ばして机面に接地させ、それで「漕ぐ」ようにしてちびちびとマウスを進めるのである。この技に慣れてくれば、左右の小さな動きも「ててと回転」を使わなくてもできるだろう。

やっぱりマウスパッドを使ってみる

 この<手の匠>、パッケージ裏面には「マウスパッドなしでも操作できます」とも書いてあるのだが、やはり摩擦が普通のマウスよりも多いせいか、移動の力加減がちょっと違う。例えばウインドウのクローズボタンのような小さいところへ移動してのクリックでは、微妙に行き過ぎたり微妙にショートしたりして、なかなか狙い通りのところへポインタを持って行きにくい。

 これはやはり滑りだろうということで、以前から使っている「史上最強のマウスパッド」を敷いてみることにした。試してみたところ、このマウスパッド表面にも微細なエンボス加工があって摩擦を減らしているため、確かに滑りは良くなったのだが、手に伝わるザラツキ感が一気に4倍ぐらいになった。

 いくらなんでもこれは気持ち悪いということで、マウスの底面に張る「エアーパッドソール」も併せて使ってみる。底面の内側、すなわち普通のマウスの底面に見える部分に厚み0.65ミリのソールを張ってみたところ、物の見事にポインタが動かなくなったので速攻ではがし、今度はその外側、ベロの部分に張ってみた。

 すると今度はちゃんとポインタが動き、滑らせたときのザラツキ感がかなり解消された。それでも普通のマウスよりも若干滑りの面では劣るが、筆者には十分であると感じられた。

 最初に微少動作問題が発覚したときは、「やっぱダメか?」と思ったのだが、いろいろ工夫することでだんだん良くなってきた。こういう過程というのは、新しいスポーツをマスターするような、一種の征服感を感じる。

 たかがマウス、されどマウス。こうしてネタとして原稿が書け、ありがたやありがたやというだけでなく、<手の匠>は使いこなしの面でもなかなか楽しませてくれる一品である。

 普段のPC仕事が灰色に映るあなた、たまにはこういうもので頭と指先をリフレッシュしてみてはどうだろうか。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。



関連記事
▼ マウスはマウスのままがいいのか?
このところマウスに関する記事を目にすることが多い。実際、革新的なマウスもいろいろと考案されているようだ。だが、その根本的な部分で、マウスはマウスのままであり続けている。エンゲルバートがマウスを考案してからすでに40年が経つというのに、それはなぜだろうか。

▼ コクヨが考えたマウスはこんな形
▼ 小寺信良氏のその他のコラム

関連リンク
▼ コクヨ

[小寺信良, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/2 | 最初のページ