News:アンカーデスク 2003年12月8日 10:13 AM 更新

デジタル放送時代の正しいビデオレコーダー学(2/2)


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 まだ実際に発売されたBlu-ray Discレコーダーは1機だけという現状では、競争もなにもない。サムソンあたりが実機を出せば、日本企業の開発ピッチも上がってくるだろう。これは来年のCESあたりで、何か進展があることを期待したい。

 一方フォーマットとしての対抗馬、旧AODの「HD DVD」は、まだDVDフォーラムでROMが認証されただけで、レコーダーへの道のりはまだ今日明日の話ではなさそうだ。結局、HDTV記録のディスクレコーダーの買い時は、まだまだ先ということになる。

 もしHDではなく、SDTVでいいからDVDに残したい、ということになれば、今までのDVD化作業は大きく変わっていくだろう。というのも、コピーワンス放送のコンテンツはCPRM対応メディアでしか録画できなくなるため、今後はDVD-RAMかDVD-RWを使ったDVD-VR記録オンリーになっていく。

 DVD-Rを使って録画した映画をDVDビデオに、なーんてルートは、放送のデジタル化完了とともに全滅するのである。また現時点でDVD+RWもCPRMに対応していない。一応対応の予定はあると言われてはいるものの、対応しないままというのであれば、少なくとも日本のAV機器市場ではデジタル化とともに消えてなくなる運命にある。

 デジタル放送にコピーワンスが導入される経緯は、分からなくもない。基本的には悪いヤツおよびモノの道理がわかってないヤツ対策である。しかしいわゆるまったく普通のユーザー、個人的にテレビを録画して後で見たり、いつか見るときのために保存したりしたいだけのユーザーにとって、便利だねぇ、コピーワンスがあって本当にヨカッタヨカッタ、というようなものではないことは、誰の目にも明らかだ。

レコーダーを買うならデジタル化を待つ必要はない

 デジタル放送の受信エリア問題解決法としては、CATVに期待がかかる。だが現状はアナログに変換したものが視聴できるだけで、CATV用デジタルSTBのリリースは2004年夏頃と言われている。

 HD放送もまだ、レコーダーもまだとなれば、無理にデジタル放送受信にこだわる必要はない。むしろアナログ放送が残っているうちに、なるべく粘ってできるだけたくさんのコンテンツを録画して保存しておくべき、というのが筆者の持論だ。

 もし今、デジタル放送が録れないからといって現状のビデオレコーダーを買い渋る人がいたら、そんなことをする理由はどこにもない。VHSとはちがって、HDD搭載のビデオレコーダーは、製品寿命が短いからだ。四六時中回っている内部のHDDなんて、おそらくもって3年ぐらいだろう。ヘタすれば1〜2年でおシャカという可能性もある。

 アキバでベアのHDDを買ったことがある人はおわかりと思うが、大抵のショップでは、HDDのメーカー保証期間は3カ月だ。普通に使っていれば3カ月で壊れるものではないが、要するに自信もってちゃんと動くのは3カ月ぐらいのもんです、と最初から言っているようなものなのである。

 また量販店で、HDD搭載のビデオレコーダーを買ってみるといい。「本体保証期間は1年ですが、内部のHDDが故障の場合、メーカー保証期間内であっても有償修理になる場合があります」と店員さんに説明される。そんなアホな、とその場でいくら抗議しても、この理屈を了承しないかぎり、あなたは一生ビデオレコーダーのオーナーにはなれないのである。

 PCは、進化のサイクルからすればだいたい2年で陳腐化する。PC技術をベースにしているIT家電では、そのサイクルは3年ぐらいではないかと予想する。容量にしても、機能にしてもだ。ビデオレコーダーを買うときは、最初からどうせ3年と思って買うべきなんである。

 メーカーもそのうち、旧モデルユーザーに対して、アップグレードやHDD載せ替えサービスなどを実行する可能性もないではない。だがユーザー側にとって、コスト的にそれが割に合うか、というのはまた別問題だ。それに家電のあり方としては、旧来から「壊れた時が買い換え時」という商売のスタイルがよしとされてきた。

 以前筆者はここに、「進化しない家電は無意味だ」というコラムを書いたことがある。そのココロは、実はこういうところにあったわけなんである。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。



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[小寺信良, ITmedia]

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