「WiMAXはDSLに勝てない」とTI幹部
WiMAXはこのところ大きくもてはやされているが、半導体メーカーの米Texas Instruments(TI)の幹部は、この技術が家庭やオフィスへのブロードバンドインターネットサービスの提供方法に革命をもたらすとは信じていないと話している。
「家庭へのブロードバンドの提供という観点から言えば、私はWiMAXが大きな効果を発揮するとは信じきれない」とTIのブロードバンド通信グループ担当副社長、ジョセフ・クラピ氏は先週、上海での取材で語った。
WiMAXは802.16規格の愛称であり、48kmまでの長距離をカバーして最大70Mbpsのデータ転送速度を実現する現在開発中の一連の無線ネットワーク技術を指す。WiMAXの最初のバージョンである802.16aは固定無線通信に採用される見込みだ。将来のバージョンではモバイルアクセスの提供が計画されており、ノートPCや携帯電話での活用の可能性が開けると期待されている。
WiMAXの固定無線バージョンは、Intelなどの企業がDSLやCATV回線に代わるブロードバンドインターネットアクセス手段として積極的に推進している。
だが、クラピ氏はこうした計画に懐疑的で、Broadband Wireless Internet Forum(BWIF)の例を引き合いに出した。BWIFは数年前、ブロードバンドインターネットアクセス用のさまざまな固定無線技術の採用促進に取り組んだ業界団体だ。BWIFが掲げた公約の多くはWiMAXについて現在約束されていることと同じだったが、BWIFが推す技術は商業ベースで導入されるには至らず、その後ブロードバンドインターネットアクセス市場ではDSLとCATV回線が支配的な地位を確立することになった。
クラピ氏にとっては、ネットワーク運営会社の動向も、DSLに代わる選択肢としてのWiMAXの固定無線バージョンの可能性に対する疑問を緩和する材料にはならない。これまでのところ、ネットワーク運営会社が進めるWiMAXの導入規模は、TIにとって、WiMAX対応製品の提供に必要な投資に見合う水準には達していない。「われわれにとっては、100万台の試験導入では大きな金額は得られない。取り組みを本格的に強化する企業が出てくることを期待している」とクラピ氏。
例えば、中国はブロードバンドインターネットサービスの市場として世界で最も急成長している国の1つだが、同国のネットワーク運営会社の間でWiMAXはあまり話題にならないと同氏は語る。
中国最大のブロードバンドインターネットプロバイダーであるChina Telecommunications(China Telecom)は、主にDSLを利用して顧客にブロードバンドアクセスを提供していくと、China Telecomのネットワークプランニング部門担当副ジェネラルマネジャー、ティエン・ホン氏は先週、上海で行われたセミナーで述べた。ティエン氏は、China Telecomは将来的にFTTHサービスの試験運用を行う計画だと語ったが、プレゼンテーションの中でWiMAXへの言及はなかった。
だが、IntelはDSLに対抗するブロードバンド技術としてWiMAXを中国で推進している。6月には、中国の大連と成都の2都市でのWiMAXに基づくインターネットサービスの試験運用に向けた覚書を発表している。だがその際、試験運用の開始時期や対象ユーザー数、どのネットワーク運営会社が参加するかなど、覚書の詳細は公表しなかった。
この発表は2つの市の当局と交わした覚書に基づいており、ネットワーク運営会社や国レベルの当局者は関与していないと、Intelの上級副社長で通信グループのジェネラルマネジャーを務めるショーン・マローニ氏は今月、韓国の釜山で語った。
マローニ氏は同サービスの試験運用に向けた進捗状況について追加情報は明らかにしなかった。
TIのクラピ氏は、家庭へのブロードバンドインターネットアクセスの提供手段としてはWiMAXにほとんど期待していないが、この技術のモバイルバージョンについては有望視している。WiMAXのモバイルバージョンにより、ユーザーはノートPCや電話、PDAを使って、都市など広大なエリアのどこからでも、モバイルネットワーク運営会社の提供するインターネットサービスにログオンできるようになる見込みだ。
「重要な問題は、WiMAXが携帯性をサポートする効率的な規格として拡張されるかどうかだと思う。それがうまくいけば、極めて大きな成果が期待できるだろう」とクラピ氏は語る。
Intelは、家庭とオフィスにブロードバンドインターネットアクセスを提供するための技術としてWiMAXに熱心に取り組んでいるが、クラピ氏は、同社はWiMAXのモバイルバージョンにより力を入れていると考えている。「Intelとそのマーケティング力の強さを過小評価するつもりはないが、彼らの手腕は携帯性にかかわる領域でもっと発揮されるだろう」(同氏)
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