ビデオレコーダにも進出するx86プロセッサ
デジタルビデオレコーダー(DVR)とセットトップボックス(STB)は、従来のPCプロセッサメーカーが家電市場への参入を試みるにあたっての初めの挑戦の場となりつつある。
情報筋によれば、米Intelは世界の大半のPCに搭載されているプロセッサが採用しているx86アーキテクチャーをベースとしたDVR向けプロセッサ製品ラインを計画している。またAMDは「x86 Everywhere」戦略により、x86アーキテクチャーに対する自社の野心を公然と示し、IP(インターネットプロトコル)ベースのCATVボックス向け「Geode」プロセッサの成功をさらに前進させたいと考えている。台湾VIA TechnologiesやTransmetaなどの新興企業もまた、それぞれローコスト設計、省電力設計という強みを生かしてこの市場への参入を計画している。
アナリストによれば、前々から言われているようにPCと家電の融合が本当に実現すれば、DVRなどの製品にx86プロセッサが搭載されることはユーザーにとってもプラスとなる。x86プロセッサメーカーの顕著な特徴の1つは、プロセッサの生産量を徐々に拡大することで新技術の価格を下げられる点にある。またx86アーキテクチャーがもたらすソフトとハードの利点ゆえ、コストの問題さえ克服できれば、DVRユーザーは自分のPCと連係させて標準プラットフォームを使用するという利便性を享受できる。
さらにプロセッサメーカーは、急速に成熟化しつつあるPC市場以外にも市場を拡大するチャンスを模索している。メーカーがより多くの処理能力を必要とする機能を追加するにつれて、DVRとSTBはより多くの家庭に浸透することになるだろう。
AMDのパーソナルコネクティビティソリューション部門のマーケティングディレクター、エリク・サロ氏によれば、同社は欧州やアジアで既に多数のGeode x86プロセッサをSTB向けに販売している。Geode GX533プロセッサは約400MHzで動作し、消費電力は1ワット以下。AMDはさらにNX1500という名称のより強力なプロセッサも製造しており、こちらは1GHzで動作し、消費電力は最大で9ワットだ。
IntelはSTB向けに調整した開発プラットフォームを販売している。同社の家電部門担当マーケティングディレクター、スティーブ・リード氏によれば、Intel 830M4チップセットと開発プラットフォームは当初、同社のモバイル部門が販売していた。同チップセットのグラフィックス技術と超低電圧モバイルCeleronプロセッサはSTB市場に非常に適していると同氏は語っている。
また同氏によれば、Intelは今後、DVR市場向けの技術の開発を検討する可能性もあるが、現時点では、同社もその顧客もDVRにノートPC技術を再利用することに満足しているという。
だが情報筋によれば、Intelはフォーカスを絞りつつある。同社がリリースを予定しているDVRプロセッサは新たなブランド名を冠し、DVRとSTB市場向けに特別に調整された機能を備えることになる見通しという。同社の広報担当者は、未発表の製品に関するコメントを断っている。
Microprocessor Reportの編集長ケビン・クレウェル氏によれば、x86アーキテクチャーがDVR向けに進化するのは多くの点で自然な展開という。
MicrosoftのWindows向けのアプリケーションに取り組む中で、このアーキテクチャーに慣れ親しんでいるソフト開発者はたくさんいると同氏。つまりDVRメーカーは自社製品に、既に消費者が慣れ親しんでいるアプリケーションを使用したり、MicrosoftのWindowsの簡易版を使用することもできる。
だがInsight 64の主席アナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は、DVRなどの家電製品にx86プロセッサを搭載するとなるとコストの懸念が生じると指摘している。
同氏によれば、DVRとSTBには、ビデオのエンコードとデコード、ハードディスクの読み込みと書き込みを同時に扱えるだけの十分な処理能力が必要となる。そして多くのDVRメーカーは、特定のタスク向けにプロセッサを個別に搭載することでそうしたレベルの性能を提供でき、そうした個別のプロセッサの方が汎用プロセッサを1つ実装するよりもコストがかからないという点を認識しているという。
また同氏によれば、ARMやMIPS Technologiesなどの会社の組み込みアーキテクチャーをベースとしたプロセッサは、大量購入時の価格はわずか5ドルから10ドル程度で、ビデオエンコードプロセッサと組み合わせれば十分な処理能力を備える。
AMDのサロ氏によれば、同社のGeode GX533プロセッサはほとんどの場合、ビデオデコードを扱うために別個のコプロセッサを用いるが、NXシリーズのプロセッサはSTBのニーズの大半を自身で処理できる。AMDの広報担当者によれば、同社のパートナー各社のSTBで使われているGeode GXシリーズのプロセッサの価格は、クロック速度にもよるが大体30ドル程度という。Geode NXプロセッサは約50ドルだ。
一方、Intelのリード氏によれば、同社の830M4開発プラットフォームは1つのプロセッサ上でビデオのエンコード・デコードを扱う。同チップセットの1000個ロット時の単価は23ドル50セントで、通常は旧式の超低電圧モバイルCeleronプロセッサと組み合わせて使われるが、同プロセッサの価格はもはやIntelの料金ページに掲載されていない。
DVRメーカーとSTBメーカーが要求するプライスポイントを満たすべく、IntelとAMDはCeleronプロセッサとSempronプロセッサの機能をさらに簡素化して、「Cellar Celeron」とでも呼べるようなプロセッサにする可能性もあるとクレウェル氏は指摘している。
IntelとAMDの汎用ローエンドプロセッサであるCeleronプロセッサとSempronプロセッサはそれぞれ、より高額なPentium 4とAthlon 64の簡易版だ。いずれもPentium 4およびAthlon 64と同じシリコンウエハーで製造されているが、キャッシュメモリの容量が少なく、クロック速度が遅く、ハイパースレッディングや64ビット機能といった高度な機能も少ない。
台湾のVIAは、高価なx86プロセッサの代替選択肢を提供できると考えている企業の1社だ。同社のPCプロセッサはアジアの一部の市場以外には広まっていないが、IntelやAMDのローエンドプロセッサと同等の性能を提供し、価格は概して低めだ。
さらにVIAは台湾と日本の家電メーカーにも熱心に働きかけている。Enderle Groupの主席アナリスト、ロブ・エンダール氏によれば、同社にはこうした企業向けにマザーボードを丸ごと製造する能力がある。同氏はマルチメディアの傾向について記した最近のレポートで、完全なマザーボードを提供できるIntelやVIAなどの企業は、製品の製造とリリースにかかる時間を節約したいDVRメーカーにアピールできると指摘している。
また多くのメーカーは、DVRを静かに動作させるため、冷却ファンを必要としないデバイスの製造にこだわっているため、その点ではTransmetaの省電力x86プロセッサは格好の選択肢と言えそうだ。クレウェル氏によれば、TransmetaのEfficeonプロセッサはWyse TechnologyとHewlett-Packard(HP)のシンクライアントデバイスに採用されており、多くのシンクライアントはSTBやDVRと同レベルの作業を処理できるよう設計されている。
最後に、ほとんどのx86プロセッサメーカーは、デジタルビデオ録画、ストレージのほか、各種の機能を扱えるエンターテインメントPCをユーザーが購入することを望んでいる。利益率の大きい高性能プロセッサを販売したがるのがプロセッサメーカーの常だが、アナリストの間では、消費者は高価な多機能PCよりも、前からあるx86技術をベースとしたスタンドアロンのDVRの方に満足するのではないかとの見方もある。
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