本田雅一のTV Style
3Dテレビ、今まで以上に画質の差が開く?
先週書いたプラズマと液晶における3D表示の違いというのは、実は図に書いてみると明快だ。簡単な図があるので、それをまずは示しておこう(下表を参照)。ただし、この図はブランク期間(フレームとフレームの間にある空白期間)を考慮していない簡易的なものなので、実際にはあと少しばかりの余裕が液晶テレビにもある。
とはいえ、将来的に液晶テレビが3D表示の質を高めていくには、4倍速240Hzでは足らず、8倍速の480Hzで書き替えなければならないかもしれない。このあたりは、各社とも試行錯誤をしているところなので、実際に発売される頃(液晶パネルを使った3Dテレビは今年後半の商品になると予想されている)には、もう少し話の筋が見えてきているのではないだろうか。
もっとも、上記のような事情があるからといって、すぐに面で書き替えを行うプラズマは理想の3Dディスプレイだ! とぶち上げることができるかというと、これもまた少しばかり事情が複雑だ。なぜなら、2D表示の時にコントラストの高さが、そのまま画質の高さにイコールではなかったように、3Dにおいてもクロストークの原理的な少なさだけが唯一の評価基準ではないからだ。
例えばプラズマは、原理的にクロストークが少なく、左右の像は混濁しにくい。しかし、階調表現は厳しくなってしまう。先週紹介したように、プラズマは各画素の発光パターンを書き込んでから、一度にパパパッとプラズマ放電をさせる。ところが3D表示のために通常の2倍速で表示しようとすると、発光データの書き込みに使える時間が短くなってしまう。
現在のパナソニック製プラズマテレビは、各画素10ビット分のプラズマ発光を60fpsの間隔で行っている。同社はまだ3D用プラズマの仕様を発表していないので推測になるが、これをデュアルスキャン型にすることで各画素12ビットを60fpsで表現できるようにしようとしているようだ。このため3D対応テレビの2D画質は、階調表現において格段に上がると予想される。
では、3D表示の時はどうなるか? というと、2倍のフレームを表示しなければならないため、1枚の絵は6ビット階調による表示ということになる。ただ、この数字はあくまで片方の目に入る情報だけということを考慮しなければならない。
実際に3D映像をプラズマテレビで見ると、階調の豊かさには全く問題を感じない。なぜなら、頭の中で感じる映像は左右の眼に入った情報を合成しているためだ。片方だけでは6ビット階調でも、左右の眼に入る情報を合成すると、もっと豊かで滑らかな階調になる。このあたりは、実はまだまだ研究の余地があるようで、必ずしも左右合わせて2倍になるというわけではなさそうだが、従来のサブフィールド10ビットの2Dプラズマテレビに比べて劣る印象があるわけではない。
ただ、将来的には3D映画表示を144fpsで見たいというニーズも出てくると思う。144fpsというのは、3D映画を表示する際のもので、3-3変換した映像を左右交互に出している(120Hz表示では2-3変換した映像を左右交互表示)。
144fpsは、3D時に4倍速以上での駆動を強いられる液晶にとっても、階調数が厳しいプラズマにとっても、互いに厳しい目標になるだろうが、いずれ通らねばならない道になるだろう。
最後に応答性について。液晶は電気的な書き替えが行われても、すぐには反応しないから、実際にはもっと3D表示画質を上げるのは難しいのでは? と、少し詳しい方なら考えるかもしれない。応答性に関してプラズマは、残光時間が短い新開発の蛍光体を用いたり、発光順を変更して小さな発光を一番最後にするなどの工夫をすることで、実質的な応答性を高めているようだが、液晶の場合はどうにもならないところがある。
そこで液晶パネルを使った3Dテレビには、クロストークキャンセラーという機能が備わる。液晶が応答しきれないことを前提に、あらかじめ表示する像にクロストークを打ち消す補正をかけておこうというものだ。
しかし、クロストークキャンセラーが強くかかっていると、ディテールの表現力が落ちるなどの弊害を感じることが少なくない。クロストークキャンセラーは(同じく液晶テレビには必須の)オーバードライブと同じで、必要悪ともいえる処理だ。
またクロストークキャンセリングを正しく行おうとすると、液晶の応答速度を正確に把握しなければならない。ところがVA型液晶パネルは、書き替え状況に応じて応答速度が変化するため、それをすべて考慮してキャンセリングを行うのは非常に困難だ。その点は、おそらく画素の反応速度が安定しているIPS方式の方が、ずっと補正しやすいと考えられる(これはオーバードライブも同じ)。
まだ対応製品が登場していない現在は、「3D映画なんて見ないから、3D画質なんてどっちでもいいよ」と思う人が大半だろう。しかし、今後、メーカー各社が3Dに力を注いでくると、あまり使わないと思ってはいても、いつの間にか再生できる環境が手元にそろい、お気に入りの映画が3Dソフトになっている、なんてことになるかもしれない。だから、3D映像の画質についても、今のうちから心にとめておいた方がいい。
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