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教えて! 轟先生

クリエイティブ制作に生成AIって実際どう? 安全かつ便利に活用する方法をアドビの担当者に聞いてみた

生成AIの普及はビジネス全般に大きな変化をもたらしたが、クリエイティブ領域における活用は著作権や倫理面の懸念もあって議論が続いている。しかし今、AI活用は“懸念”から“実践フェーズ”に移行しつつあるという。クリエイターは生成AIとどう向き合えばよいのだろうか。

 生成AIはわずか数年で実務のワークフローに取り入れられる段階に至り、ビジネスを取り巻く環境を激変させた。こと商用のクリエイティブの領域に関しては、学習データの著作権に関する懸念を払拭した「Adobe Firefly」(以下、Firefly)の存在が大きい。

 一方で「AIを使う意味がそもそも分からない」「結果自分でやった方が早い」「商用利用でAIって使えるの?」と考えているクリエイターも多いことだろう。しかし、クリエイティブ領域における生成AI活用は新たなフェーズを迎えている。クリエイターは生成AIとどう向き合えばよいのか。ITmedia NEWS副編集長の山川晶之が、Firefly製品担当である轟啓介氏に聞いた。

(左から)アドビ 轟啓介氏(マーケティング本部 マーケティングマネージャー)、ITmedia NEWS 山川晶之(副編集長)

※ 以下、敬称略。

クリエイティブも「AIありき」で考える時代に

山川: ビジネスシーンでは生成AIの普及が進んでいますが、クリエイティブ領域においてはどうでしょうか。受け止められ方や利用状況について教えてください。

轟: クリエイティブ領域でも多くのユーザーが生成AIを使用しています。当社がトラッキングしているFireflyの生成機能の利用数もかなり伸びました。お試し段階は過ぎて、「AIありき」のワークフローをどのようなガイドラインで運用するかが議論されるステージに至っています。

山川: 一方で、画像生成AIに対しては「著作権リスクは大丈夫か」「他人の作品の継ぎはぎではないか」といった懸念や批判の声も存在しますよね。

轟: この問題は、「法的な著作権侵害」と「感情的な倫理観」に分けて考える必要があります。法を犯さないのは大前提です。基本の対策は、著作権を侵害するリスクの低い学習データで構築されたAIモデルを使うこと、特定の作家や作品に似せるようなプロンプトを書かないことの2点です。

 法的に問題がなくても倫理的な配慮の欠如や確認不足から炎上するケースがあります。これは「人間のチェックが機能していない不自然な成果物」「課題を解決していない画像」を世に出したことへの反発だと考えます。

 そもそもデザインの役割は、“きれいな絵”を作ることではなく、「商品の魅力や特徴を正しく、分かりやすく伝える」「ブランドの信頼性を高める」といったビジネスの課題を解決することにあります。プロのクリエイターでなくても生成AIで“それっぽいもの”が作れる時代だからこそ、受け手の反応は想像しなければなりません。プロの品質チェックを欠いた生成物を世に出してしまうと、かえってブランド価値を傷つけることになりかねません。

商用利用に堪える「クリーンなAI」とマルチモデル戦略

山川: クリエイターが余計な懸念を持たずに作業するためにも、安心して商用利用できる環境の整備が欠かせませんね。Fireflyが業界で「商用利用において安心安全」と評価されている背景には、著作権侵害のリスクを未然に防ぐ設計思想があるわけですね。

轟: おっしゃる通りです。アドビがFireflyを開発する際に重視したのは「クリエイターが仕事で本当に使えるツールになるか」という点です。Fireflyの学習には、「Adobe Stock」の数億点に及ぶライセンス済み画像やパブリックドメインのデータのみを使用しています。

山川: Fireflyの生成機能は、「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」などの画面内、特に「コンテキストタスクバー」などから呼び出せる形で実装されていますね。

轟: 使い慣れたクリエイティブツールから移動して操作を覚え直してもらうのは利便性を損ないます。ユーザーの利便性を最優先に考えて、PhotoshopやIllustratorのワークフローに溶け込む形で組み込みました。

山川: 使っている画面からシームレスにアクセスできる設計こそ、生産性を高める大きなポイントなのですね。最近はアドビのデザイン環境でサードパーティーの生成AIモデルを選択できるようになりました。その狙いは何でしょうか。

轟: クリエイターから「アドビ製品の中で他のAIモデルも使いたい」というリクエストがあったからです。外部の生成AIツールで素材を作ってクリエイティブツールに持ち込む作業は、クリエイティブの思考を中断させてしまいます。

 この課題を解決するため、アドビは「アドビモデル」「パートナーモデル」「ユーザーモデル」を用意し、同一の操作環境で使えるようにしています。商用利用における権利面の安心を重視するならアドビモデル、他社の最新モデルならではの表現の幅を取り入れたいならパートナーモデル、自社ブランドの世界観や固有の画風を学習・再現したいならユーザーモデルといった形で、用途に応じて切り替えられる仕組みです。

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思考の解像度を高める「Adobe Fireflyボード」

山川: Firefly関連の新機能では、「Fireflyボード」が気になっていました。これまでの機能とは、設計思想がかなり異なるという印象を受けます。

轟: Fireflyボードは前工程の企画、アイデア出しから使えるツールです。サイズ制限のないキャンバスに、画像やテキスト、動画を好きなだけ配置できます。チームメンバーやクライアントとの共同作業にも対応します。

山川: なるほど。ボードでプロジェクトのイメージやアイデアが形になるわけですね。

轟: そうです。私も動画コンテンツのロゴやオープニング動画を作るときに、Fireflyボードを使いました。手書きや写真の素材を集約してアセットを俯瞰(ふかん)しながら、Fireflyを駆使して方向性を試行錯誤するわけです。その上で、Photoshopや「Adobe Premiere」などを行き来してクリエイティブを制作します。

山川: Fireflyの機能を使う使わないを問わず、1つのキャンバスが、チームが寄り添う場所、プロジェクトの起点になるわけですね。コミュニティーイベント「Adobe Firefly Camp」では、ユーザーから印象的な活用例が上がったと聞きました。

轟: デザイナーの木村優子さんのセッションで紹介された使い方が非常に画期的でした。普通は素材を集めてデザインのイメージを作りますが、木村さんは、例えばアウトドア業界のプロジェクトを開始する際に「アウトドア業界のイメージボード」という短文のプロンプトを入力して、AIに最初のイメージを一括生成させたのです。素材を一から探すのではなく、AIが提案したイメージをベースに方向性の議論を開始する。下準備の時間をショートカットして思考をジャンプアップさせる活用法でした。

 Fireflyボードは、共同作業はもちろん、一人で思考を整理する場所としても最適です。履歴は全て自動で管理されるため、単なる画像生成を超えた「プロジェクトの起点」になるツールです。

山川: その他に、クリエイティブ領域でよく使われているFireflyの機能は何ですか。

轟: 「知らず知らずのうちに便利に使っていた」という機能が好評です。その代表例がPhotoshopの「生成拡張」です。写真を引き伸ばす際、足りない背景部分をAIが自動で補完してくれます。Webサイトのヘッダ画像やバナーのような横長画像を作るときに重宝します。

山川: 私も取材で撮影した写真の構図を調整する際に大変重宝しています。他に注目すべき機能はありますか。

轟: 私が特に気に入っているのが、Illustratorに搭載された生成AI機能「ターンテーブル」です。イラストなどのベクター画像に対して、ボタン一つで被写体の背景を切り抜き、3Dモデルのように上下左右へ回転させて裏側を見せた構図を作り出せます。クライアントから「イラストの顔の向きをあと10度だけ横にしてほしい」と言われ、描き直しを余儀なくされていたクリエイターの手戻りを減らす機能です。

ターンテーブルを使って、側面から見たハンバーガーの2Dイラストの底面を生成した。Photoshopでも同様に配置した画像を3Dオブジェクトのように回転させることができる

 切り出した被写体を別の背景に配置した際、周辺の環境光やライティングに自然になじませるPhotoshopの「調和」も試してほしい機能です。光と影の合成をAIが判断して壁に落ちる影まで自動生成して違和感なく空間になじませてくれます。

AI時代に人間が担うべき真のクリエイティビティー

山川: クリエイティブの領域における人とAIの役割分担について、轟さんはどのように考えますか。

轟: アドビは「生成AIはクリエイターにとっての優秀な相棒」と定義しています。画像の切り抜きのような単純作業、出力結果が分かっている作業はAIに任せるべきです。その上で、「考える時間」を確保してほしいですね。AIが生成したバリエーションから「なぜこの表現を選択したのか」を言語化して説明し、品質に責任を持つディレクションの役割は人だからこそ担える領域です。

 クリエイターの真の価値は、頭に思い浮かべていることを形にすることです。結局、Photoshopや生成AIは手段でしかありません。思考の時間を捻出して表現のクオリティーを限界まで引き上げるために生成AIを使う。AIの手綱を握るのは、どこまでいっても人です。

山川: 最後に、これからAIを取り入れようと考えるクリエイターに、伝えたいことはありますか。

轟: SNSには驚くような完成度のAI生成画像があふれていますが、その裏には何十枚ものエラーや試行錯誤が存在します。まずは写真の中の要らない要素をブラシで消してみるといった小さな体験から始めてみてください。

 ある程度の出力をベースにして、自分の得意なツールに持ち込んで追加の作業をすればよいのです。AIと手作業を融合させる部分が一番面白い工程です。AIは表現のハードルを下げ、自分の領域を広げてくれるパートナーです。

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アドビ株式会社

アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2026年10月8日

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