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» 2019年05月28日 10時00分 公開

「予想以上に動いていなかった」 機械加工の“ムダ”を可視化、IoTで20%削減 コマツ工場の改革

[PR/ITmedia]
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 「予想以上に動いていなかった」――建設機械メーカー、コマツの山中伸好氏(生産本部 生産技術開発センタ 所長)は、工場の状況に驚いた。同社は2014年から、工作機械や溶接ロボットのデータを収集・分析し、生産効率の向上につなげるという“工場のIoT化”を進めている。工作機械などの稼働状況を可視化した結果、それまで隠れていた非効率な部分が浮かび上がってきた。

 収集したデータを基に改善を進め、16年時点で機械加工の時間を10〜20%削減するなど大きな成果を挙げたが、新たな課題にも直面した。この先、工作機械などから集めるデータの量が増えていくという課題だ。コマツは、国内外の工場だけでなく、外部の協力企業の設備からもデータを集め、サプライチェーン全体での生産性向上を目指している。山中氏は「(協力企業も含めると)どれくらいのデータになるか分かりません」と語る。そこで、同社はクラウドの導入を考え、「Microsoft Azure」を選んだ。

「ムダがあるはず」 危機感から始まったIoT化

photo コマツの山中伸好氏(生産本部 生産技術開発センタ 所長、先進生産技術推進P/J室 室長)

 大正10年(1921年)創業というコマツは、売上規模が日本国内でトップ、世界でも2位を誇る建設機械メーカーだ。油圧ショベル、ブルドーザーなどの建設機械が売り上げ全体の約90%を占め、土木工事用から鉱山作業用まで多彩なジャンルを手掛けている。

 建設機械の状況について、山中氏は「各国の経済状況や資源価格によって毎年の需要が大きく変動します。それに対応するのが生産側の課題です」と話す。コマツは世界各国で建設機械を販売しているが、その約40%は日本国内で生産したものだ。国内には、製品の生産だけでなく商品開発機能を有する工場(マザー工場)が集中しており、建設機械にとって重要な部品であるエンジンや油圧機器などを多く製造している。

 しかし、山中氏は「これからは労働力不足が深刻化するでしょう」と危機感をあらわにする。これまで建設機械の需要が増えたときは、期間作業員を採用するなどして対応してきたが、今後は難しくなると予想している。そこで山中氏らは「工場設備は、いつもフル稼働しているわけではないので、ムダがあるはず」と考え、稼働状況を可視化し、止まっている時間を減らすことで、生産性を倍増させる――という取り組みを始めた。

 2014年、その第一歩として、コマツは「KOM-MICS」(コム・ミックス)という仕組みを構築した。工作機械や溶接ロボットからさまざまなデータを収集・分析し、機械の稼働時間を適正化したり、動作を効率化したりして生産性を高める試みだ。

 山中氏は「コマツは多品種少量生産なので、ある製品から別の製品の生産に切り替えるときに『段取り替え』という作業が発生し、機械が止まってしまいます」と話す。こうした稼働状況のデータを可視化し、ムダな時間を可能な限り少なくした上で、設備を自動化していく考えだ。「最初から設備を自動化するのではなく、できるだけ生産性を向上させてから設備を自動化すれば、コストも少なくて済みます」

 KOM-MICSを導入してみたところ、山中氏が「予想以上に動いていなかった」というほど、ムダが見えてきた。例えば、切削のプロセスのデータを集めてみると、従来より切削スピードを上げられる部分があると分かった。そうしたムダな部分を洗い出し、工作機械を制御するプログラムを改善。コマツの坪井啓介氏(生産本部 生産技術開発センタ)によれば、導入前と比べると、機械加工の時間が10〜20%減少したという効果が出たという(16年時点)。

 コマツの生産工場は、多品種少量生産ということに加え、自動車と比べると巨大なパーツを取り扱う場合も多く、加工に時間がかかるという特徴もある。中には、溶接に数時間以上かかるパーツもあるという。「そうした加工にかかる時間を、人手で計測して検証するのは大変ですが、KOM-MICSと工場の設備をつなぐだけで、どんな作業をしているか分かるようになりました」(山中氏)

photo コマツの坪井啓介氏(生産本部 生産技術開発センタ 先進生産技術推進P/J室 制御グループ 制御チーム、19年3月時点)

 このように、順調かと思われたKOM-MICSだが、一方で“限界”を感じ始めていた。「増え続けるデータをどのように処理するか」という課題だ。16年時点で、KOM-MICSと接続していた工場設備は約300台。設備の種類にもよるが、1台当たり年間20〜30GBのデータを吐き出していた。坪井氏は「自社のデータセンターに膨大なデータが集まり、管理が非常に難しくなっていました」と振り返る。

 しかもKOM-MICSは、グループ企業だけでなく協力企業からもデータを収集することを前提にした取り組みだ。コマツの生産工程では、協力企業の加工が8割を占めるため、協力企業のデータも加えて分析しないと「効果が少ない」(山中氏)という判断だったが、そうなると、管理するデータはますます増える一方だ。

“クラウド初心者”からのスタート

 「オンプレミスでは、リソース確保は難しい」――コマツはそう判断し、KOM-MICSの基盤をMicrosoft Azure上に移行することを決めた。16年末からデータを移し始め、翌17年1月には運用をスタートするという、短期間の移行作業で済んだ。

 KOM-MICSのシステムでは、工作機械や溶接ロボットから収集した稼働状況のデータは、Microsoft Azure上で分析。分析結果は、コマツが自社開発したビューワか、ビジネス分析ツール「Microsoft Power BI」を使って閲覧できる仕組みにしている。坪井氏は、自社開発のツールにとらわれず「さまざまな見方ができるようにしました」と説明する。

photo 工作機械から収集したデータは、備え付けのブレット型端末を経由してサーバに送られる

 Microsoft Azureを選んだ理由の1つは、移行のしやすさだった。山中氏は「われわれの中に、クラウドに詳しい人はいませんでした。最初のハードルは高く、知らない言葉がたくさん並んでいましたが、日本マイクロソフトのサポートを受けながら進めてきました」と振り返る。クラウドへの移行の際、日本マイクロソフトの技術担当者がコマツの大阪工場に何度も出向き、アーキテクチャのデザインについてディスカッションすることもあった。

 こうして構築したシステムは、急激に増えるデータにも十分対応できているという。山中氏は「(KOM-MICSとつながる設備が)少しずつ増えていくなら、オンプレミスでもクラウドでも対応できたと思いますが、ある工場からデータを収集するとなると、何十台もの設備が一気につながることになります。そうした場合でもクラウドなら対応できました」と説明する。

 また、坪井氏は、Microsoft Azureを選んだもう一つの理由としてセキュリティを挙げている。「社内にはセキュリティの専門家がほとんどいませんでした。常に最新の情報をキャッチするために人材を割けるかというと難しい状況です。外部の専門家、そしてセキュリティ対策が施されたクラウドに任せたほうが、世の中のスピードにも遅れず、セキュアだと判断しました」(坪井氏)

「日本のものづくりは、まだまだ改善の余地がある」

 19年3月現在、KOM-MICSに接続している設備は工作機械では約700台。将来は、社内と協力企業を合わせ、1100〜1200台をつなげる計画だ。

 当初、協力企業の中には、自社の設備をKOM-MICSと接続することに「抵抗感がある」という企業も少なくなかった。しかしセキュリティを担保した上で、加工時間の削減といった実績を挙げていることから、賛同する企業は増えているという。

 今後は、溶接ロボット、工作機械に加え、KOM-MICSを熱処理工程の機械や鋳造・鍛造などの機械にもつなげ、見える化を進める。機械だけでなく、作業員の動きも見える化の対象にする考えだ。「生産性をさらに上げようと思うと、人の動きのデータも取得しなければいけません。カメラや各種センサーを使って、機械と同期して人の作業を見える化しようとしています」(山中氏)

photo 溶接ロボット(写真)以外にも、熱処理工程の機械などをKOM-MICSに対応させる考えだ

 そうした収集したデータを分析するために、AI(人工知能)の導入も検討している。Microsoft Azure上で、機械学習を行えるようにする「Microsoft Azure Machine Learningサービス」も候補の一つという。

 「データはいろんな使い方ができると考えています。今は熟練作業者が勘で行っている作業が結構ありますが、AI技術を使えば、自動的に最適な加工条件を割り出せるようになるかもしれません。また、製品の品質が悪くなる前に予兆を検知し、必要なメンテナンスを自動で行える仕組みも編み出していきたいです」(山中氏)

 これに加え、データを収集するIoTデバイス上でMicrosoft Azureのサービスを実行できるようにする「Azure IoT Edge」の導入も視野に入れている。「収集したデータを、クラウド上でAI技術を使って処理しようとすると、どうしても時間がかかってしまいます。エッジ側でも処理できるようにし、よりリアルタイムで反応できるシステムを目指しています」

 山中氏は「IoT技術を活用し、データをうまく収集・分析できれば、日本のものづくりは、まだまだ改善の余地があると考えています」と意気込んでいる。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2019年6月27日

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