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» 2020年03月09日 10時00分 公開

「機械と人間の役割が見えてきた」AI×ドローンで点検業務の変革に挑む沖縄電力

[PR/ITmedia]
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 デジタル技術を活用し、業務を変革していく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に多くの企業が取り組んでいる。しかし、具体的に何から始めればいいのか分からないと悩む企業も多いはずだ。

 沖縄電力は、太陽光発電設備の点検業務にドローンとディープラーニングを活用する検証を行っている観点から、DXに取り組む企業の一つである。約2年半に渡る検証で確かな手応えを感じているという。

 同社がドローンとAIを設備点検に活用する検証を進めるには、いくつもの壁にぶつかったという。「ドローンの空撮をどの角度で行うべきか」「AIの画像認識は実用に耐えうるのか」――悩みは絶えなかったが、パートナー企業と協力して困難を乗り越えてきた。

 技術の力で現状を打破できないか――そんな課題に挑んだ担当者たちに聞いた。

左から沖縄エネテック 伊佐真賢氏(エネルギー開発部 環境グループリーダー)、沖縄電力 島袋洋一氏(研究開発部)、富士通 金野雄次氏(Data×AI事業本部 プロフェッショナルサービス事業部 AIサービス部)

「AIもドローンも初めて」 まずはパートナー探しに奔走

島袋氏

 本プロジェクトの旗振り役となったのは、沖縄電力 研究開発部の島袋洋一氏だ。

 広大な面積を誇る太陽光発電所の点検業務は作業員にとって負担が大きい。点検対象だった「安部メガソーラー実証研究設備」は、敷地面積約2万7000平方メートルで、パネル数は約9000枚。従来の点検業務は、4人の作業員が約6時間かけて行う大仕事だった。目視ではパネルに付いたわずかなひびや錆を見落とす恐れがあるということも課題であった。

 何か妙案はないかと社内で知恵を絞る中で、ドローンを用いて点検を高度化できないかと考えた。グループ会社の沖縄エネテックがドローン活用のノウハウを持っていたため、すぐに協力を仰いだ。

 ドローンによる空撮は設備点検に活用できそうな手応えがあったが、撮影画像を一つ一つ目視していては効率が悪い。そこで、AI技術を用いた画像解析技術を使い、撮影画像からひびや錆を自動検出する方法を試すことにした。しかし、AIに詳しい社員はいない。島袋氏は、パートナーとなるベンダー選びに奔走した当時の状況を次のように振り返る。

 「われわれ自身、当時はAIの実力がよく分かっていない状態で、パートナー選びと情報収集のためにイベントや展示会に足を運びました。地元ベンダーも含めて複数社と話をして、パートナーを絞り込んでいきました」

 そんな手探りの状態のときに出会ったのが、富士通だった。富士通は、撮影画像から錆を自動検出するAI技術を保有しており、点検業務にもすぐ応用できそうな手応えを感じたという。

 しかし、実際の検証作業はそう簡単ではなかった。AIという未知の技術を扱うには、多くの苦労が伴った。

「何度もドローンを飛ばした」 学習データ作成の苦労

 AIの実力を発揮するには、大量の学習データを用意し、AIモデルのチューニングを繰り返す必要がある。富士通が用意した学習済みモデルでもある程度のひびや錆は検出できたが、実際の業務での運用を考えるなら、「AIでどれくらいの大きさのひびや錆を、どの程度の精度で検出できるのか」を明らかにしなければならない。

 そこで島袋氏は、AIの実力を見極めるための指標を定めた。「まずは、1×5センチのひびや錆を検出できるようにする」――実運用を想定したサイズ感で、技術検証を始めた。

 よくいわれるように、AIの成否は学習データの量と質で決まる。不具合のあるパネルの数はそこまで多くないが、富士通が所有する学習済みモデルに撮影画像を追加してチューニングを施すことで、サンプル数の少なさをカバーできたという。

伊佐氏

 だが、データの質を担保するのは簡単ではなかった。沖縄エネテック 伊佐真賢氏(エネルギー開発部 環境グループリーダー)は、「視認性の高い映像を撮影するために何度もドローンを飛ばし、飛行高度や撮影角度を確認していきました」と苦労を語る。

 ドローンは自律飛行なので人間の操縦者は不要だが、決められた撮影ルートを規則正しく飛行しなければならない。そこで伊佐氏は、高精度な測位ができる「RTK-GNSS」(リアルタイム・キネマティック)のアンテナを地上に設置した。

 「GPSだけではメートル単位の誤差が出ますが、RTKを使うことでセンチ単位での制御が可能になります」と伊佐氏は説明する。接写するために低空飛行を試すなど、工夫も重ねた。

「微少な錆が分からない」「雲を誤検知」 次々に出てくる課題

 しかし、実際にAIを試してみると新たな課題が出てきた。具体的には、(1)微少なひびや錆だと検出しにくい、(2)パネルに映り込んだ雲をAIが誤検知する、(3)パネルに太陽光が反射して不具合を正しく検出できない――といったものだ。

 接写しても視認性が低い微少なひびや錆などについては、富士通が撮影画像の一部を切り出し拡大する処理を加えることで対処した。雲の誤検知については、AIの追加学習が必要だったため、雲が映り込んだ画像を撮影し直した。さらに、富士通が雲の特徴を明瞭化する画像鮮明化の技術を用いるなどの対策をしたという。太陽光の反射については、ドローンの撮影角度を何度も調整しながら、最適な角度を探っていった。

 課題を見つけ、素早くそれに対処できたのは、3社の密なコミュニケーションあってのものだ。AIの精度を上げるために必要な画像データについては、AIのチューニングを担当した富士通から沖縄電力と沖縄エネテックに要望を伝えた。そして、両社が撮影し直したデータを富士通に転送する――その繰り返しだ。

 伊佐氏によると、撮影やデータの共有にも工夫が必要だったという。

 「限られた撮影時間で最適な撮影条件を定めるには、撮影側とAI側のタイムリーな連携が不可欠でした。撮影条件を確認する際の画像チェックでは、画質を落とした画像を先行してクラウド上に共有し、AI側で撮影角度などの確認を行いました。撮影条件が定まったところで高画質の撮影を実施し、取得データをAIモデルの教師データとして活用しました」(伊佐氏)

試行錯誤でようやく見えた「AIの可能性と限界」

 島袋氏は、特に大変だったというAIの精度検証について振り返る。

 「AIの検出結果が正しいかどうかを確認するために、手作業で『正解のデータ』を作りました。作業員が1×5センチのフィルムをパネルの不具合箇所に一つ一つ当てて、撮影していくんです。この作業は4人で約5時間かかりました」

 このような地道な検証を続ける中で、「AIの可能性と限界」がようやく見えてきた。

 「AIは人間が見落とした錆も検出してくれましたが、太陽光パネルのフレームのゆがみなど不具合の種類はさまざまで、人でなければ検出できないケースもあります。全ての作業をドローンとAIに置き換える必要はないんです。機械と人間の役割分担をどうすべきかも分かってきました」(島袋氏)

 島袋氏は「業務をデジタル化することで、常に一定の精度で点検できることもメリットだと感じました。将来的には、鉄塔や電柱、電線などの点検業務への応用も考えられると思います」と期待を強くにじませた。

 沖縄電力は、試行錯誤をする中で新技術を業務に適用する可能性を見いだした。地道な検証を積み重ねることが、DX実現への一番の近道といえるだろう。

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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2020年3月24日