2020年、働き方改革の一環とされてきた「テレワーク」が一気に身近なものとなった。新型コロナウイルス感染症の影響で、大企業だけではなく、中小企業においても可能な限り在宅勤務へ切り替えざるを得なくなったからだ。
そんな中、「コロナの影響で、テレワークは『家でやらなければならない、外に出てはいけない』というネガティブなイメージが定着してしまったのが残念」──そう話すのは、日本テレワーク協会で事務局長を務める村田瑞枝さんだ。
本来、テレワークは柔軟な働き方を表すものだ。在宅勤務はもちろん、往訪先から往訪先の移動中にある合間、本拠地から離れた場所に設置したサテライトオフィスでの業務など──オフィス以外の場所でも十分に業務を遂行できるようにすることで、ビジネスパーソンがより効率的に働けるようになることが期待できる。
ところが新型コロナによる外出自粛要請で半強制的に進んだ在宅勤務によって、本来は柔軟性があるはずのテレワークが「自宅に留められてしまうもの」という間違った印象を持つ人が増えてしまった。
さらにテレワークを導入した現場からは、「テレワークでは作業に集中できず、生産性が上がらない」「業務上、テレワークに移行できる人とそうでない人の間で不公平感がある」という不満も一部から聞こえてくる。「出社するのが当たり前」と考えてきた人たちからは、特にそういった声が挙がりやすい。
とはいえテレワークをはじめとした体制の整備は、今後のニューノーマルな社会で事業を継続していくにあたり、避けられない企業課題であることは間違いない。オフィスで働く人、在宅あるいはその他の場所でテレワークする人が混在することが当たり前になる今、企業はどのような環境整備を行うべきか。テレワーク啓蒙の第一線に立つ村田さんに話を聞いた。
日本テレワーク協会は、1991年に「日本サテライトオフィス協会」として生まれた一般社団法人だ。早くからITを活用して場所と時間にとらわれない柔軟な働き方を広く社会に啓発し、企業や地域が活性化できる社会を目指している。
主な活動内容は総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省など関係省庁と連携を取りつつ、テレワークの普及促進に関わる活動のサポートや調査、テレワーク推進賞の実施といったもの。そして、企業などから寄せられるテレワークに関するさまざまな相談に応じている。
4月に緊急事態宣言が発出されてから、大企業だけでなく中小企業もテレワークを導入せざるを得ない状況になり、日本テレワーク協会に寄せられる相談件数も飛躍的に増えた。その内容も以前の「テレワークを導入したい」から、「テレワークを行う。どうすればいいか」と変化したという。
「『テレワークのために従業員の家のネット回線を使うが、その費用を会社で負担する必要はあるか』『一部の人だけをテレワークに切り替えたら不平等にならないか』など、緊迫感のある相談が増えました」(村田さん)
なんとかテレワーク導入にこぎ着けた企業も増えた中、しばらくすると「成果が上がらない」「社内に不公平感が生まれている」「テレワークにはメリットがないのではないか」という、テレワーク自体に疑問を持つ声も出てきているという。
しかし、村田さんはそれらの課題がテレワークによって新たに生じたものではないという。もともと社内に課題としてあったものが、テレワークによって顕在化するようになったという考え方だ。
「例えば『ビデオをオンにしない人がいるからWeb会議は非効率』というご意見をいただきますが、これまで社内で声を掛けても、目も合わせずに返事する人もいらっしゃったと思います。テレワークで課題が生まれたというより、そういった課題が顕在化するようになったのです」(村田さん)
そんな状況を打破するにはどんな手があるのか。村田さんは「テレワークは従業員、企業、社会がメリットを得られる働き方です。そのためには、まずテレワークが仕事の手段であることを認識する必要があります」と説明する。具体的には「テレワークだから、出勤すれば──という区分けで考えるのではなく、ゼロベースで業務プロセス全体の見直しを図るべきということだ。
とはいえこの状況下で業務プロセスを再構築するのはかなり厳しいだろう。その中で村田さんが「すぐに取り組んでほしい」と提案するのは、「コミュニケーションの強化」だ。
コミュニケーションの強化は、指揮系統にある上司と部下の間だけでなく、従業員同士や、マネジャーと評価対象者、マネジャーとその上司にとっても重要だという。
特にマネジメントに関係するやりとりについて、村田さんは「勤続年数や働いた時間に重きを置く人事制度ではなく、業務のミッションに基づくジョブ型の人事制度への移行が必要になってくると前置きした上で、「テレワークがベースとなる業務では、従来の評価方法がそのまま使えるわけではありません。マネジメントの仕方も変わるでしょう。しかし、これまでマネジャー職に携わってきた人は、対面しない状況下に適したマネジメント手法を学んできたわけではありません。自分自身で学ぶ必要があり、組織からのサポートも必要になります」と解説する。
従業員同士のコミュニケーションも重要になる。個人が抱くちょっとした不安や不公平感が、まさにテレワーク環境下では顕在化する恐れがあるからだ。
「部署や従業員によって仕事内容が異なるため、そもそもいくつかの側面で不公平が存在するのは仕方ありません。でも、不公平“感”をそこで生んでしまってはいけないのです。互いに業務内容の違いを理解してもらい、『不公平だろう』という感覚を解消する必要がある。その解決のためにコミュニケーションを取る他にないのです」(村田さん)
コミュニケーションを活性化するために即効性のある取り組みとして、業務内容の交換も有効だという。
「例えば、テレワークを実施できる開発部門と実施できない製造部門の間で、軋轢(あつれき)が起きるのはよくあることです。互いに仕事上での優先順位が異なるからしょうがない部分もあります。しかし、どちらも良い製品を作って会社に貢献したいという熱い思いは共通しているはず。そこで、業務分担の見直しや人材交流を行い、相互理解を促すなどの工夫が考えられるでしょう」(村田さん)
中長期的には、やはり高い目線で業務をゼロベースで見直すこと、そして、テレワークで起きたさまざまな事象や課題を洗い出し、試行錯誤しながら、PDCAを回すことが有効だ。村田さんは「これまで思い込みで『できない』『それは無理』と諦めていたものでも、洗い出すことで見えてくる解決策もある。テレワーク導入をよい機会と捉え、一回全部を洗い出し、既成概念にとらわれず見直しをしていただきたい」と提案する。
オフィスへの出社とテレワークの混在環境が当たり前になりつつある中で、これまでに挙げられたコミュニケーションに関する部分を充実化させるために何から取り組むべきか。
現在のビジネスにおいては、ビデオ会議ツールやコラボレーションツールなどの利用が定着しつつあり、ITツールの重要性は以前に比べて増している。円滑なコミュニケーションを実現するために従業員が使う端末を見直すのも一つの手だ。
日本HPのビジネスPCは時間や場所にとらわれない労働環境に向けて、多彩なデバイスを用意している。在宅テレワーク環境なら、業務用のモバイルノートPCに加えて外付けディスプレイを支給するなど、オフィスと変わらない生産性を実現する環境を用意するといいだろう。
テレワークが浸透するにつれ、人が集まるオフィスは対面だからこそ実現するコラボレーションに特化したスペースに変化していく可能性もある。
例えば「HP Elite Slice」というユニークなモジュール型PCは、会議室に設置されることを想定したデスクトップPCだ。目的に応じてモジュールを組み替えられるデザインを採用しており、クリアで上質なサウンド再生を可能とするBang & Olufsen監修の360度スピーカーや、ノイズキャンセリング機能を搭載したオーディオモジュールを取り付ければ、会議室はWeb会議専用システムを備え付けたと言っても過言ではない環境に早変わりする。少し回りに目を向ければ、従来には考えにくかった便利なツールがどんどん市場に増えている。
オフィスへの出社とテレワークの混在環境を考慮する中で、場面に応じて適切なITツールを用意することは、従業員の仕事の質を向上させる有効な投資となるだろう。従業員にとって快適な仕事環境の構築を考えているなら、まずは日本HPに相談してみてはいかがだろうか。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2020年9月30日