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» 2020年10月22日 10時00分 公開

顧客接点は「はがき」……“昭和っぽかった”マーケティング をAIでデジタル化するカルビーの挑戦

[PR/ITmedia]
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 「ポテトチップス」「かっぱえびせん」などのスナック菓子が長年にわたって消費者に支持されているほか、「フルグラ®」などの健康を支援する食品もヒットし続けているカルビー。昨今はさらなる成長に向けてIT活用に注力しており、2019年度に発表した中期経営計画では、製造、流通、販売といった全工程でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、生産性を高めることを戦略の柱に据えている。

 そんなカルビーは今、マーケティングのデジタル化に特に力を入れている。同社のマーケティング部門はこれまで、はがきで応募できるキャンペーンを展開するなど、アナログな方法で顧客との関係を築いてきた。そのノウハウによって多くの消費者から親しまれてきたが、ITを生かした顧客との関係作りはまだ発展途上だった。中期経営計画では、この方針の見直しを図っている。

はがきで応募を受け付け、当選者名簿を手作業で作成

 デジタル化が進んでいなかったマーケティング施策の一例が、年に1度開催する大規模キャンペーン「Calbee大収穫祭」(以下「大収穫祭」)だ。

photo 大感謝祭の公式サイト

 毎年恒例の大収穫祭は、カルビー製品のファン10万人にじゃがいもと景品をプレゼントする人気企画。だがその仕組みは、消費者が対象製品のパッケージに印刷された応募券を切り取り、はがきに貼り付けて送ってもらうというもの。届いたはがきを手作業で仕分けし、抽選で当選者を決め、当選者の名簿を作成・管理していた。

 この方法では、スタッフの負担が重く、誰がどの商品を買ったのかといったデータも得られない。「昭和そのもののマーケティング活動でした」と、 カルビーの松本知之氏(執行役員 マーケティング本部本部長)は振り返る。現在はこうした状況を変えるために、「顧客との接点や関係作りにデジタルを活用できないかと考え、いくつかの取り組みを始めています」という。

 その第一歩として、カルビーが2020年9月14日に始めた取り組みが「カルビールビープログラム」(以下、「ルビープログラム」)。消費者が商品のパッケージを特定の手順で折りたたむと、二次元コードとシリアル番号が同じ面に出現し、それをスマートフォンで撮影すると「ルビー」というポイントが貯まる企画だ。貯まったポイントを使うと、工場見学やじゃがいも収穫体験といったイベントやファンミーティングに応募できる。(注:コロナ禍の影響で一部変更になる可能性があります)

photo カルビーの松本知之氏(執行役員 マーケティング本部本部長)

 ルビープログラムは2020年度の大収穫祭とも連動しており、カルビーは20ルビーを貯めて応募した消費者の中から、抽選で100人にじゃがいもをプレゼントしている。

 カルビーはこのプログラムを、専用アプリをダウンロードし、会員登録を済ませた顧客のみが利用できるようにしている。この施策で得たデジタルな顧客情報は「ファンベース」と名付け、商品のレコメンドなどにも生かす考えだ。

 ただ、カルビーの顧客層には、スマートフォンに不慣れな子供や高齢者もいることから、同社ははがきによる応募の受け付けを完全にやめるわけではないとしている。

カルビーのデジタルマーケティングを支える「Microsoft Azure」

 カルビーは、ルビープログラムを支えるシステムを構築する上で、二次元コードとシリアル番号を読み取るシステムの基盤に米Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」(以下「Azure」)を採用するなど、最先端のテクノロジーを取り入れている。

 顧客がポテトチップスを食べ終え、パッケージを折りたたんで二次元コードとシリアル番号を撮影すると、記載内容のデータはAzure上に送られる。データは前処理を経た後に、「Azure Cognitive Services」の「Computer Vision API」を用いてOCR処理される。取得したデータは、会員情報と紐づけてデータベースに格納される。

 こうした手順によって、「どの顧客がどの商品を購入したか」という情報を、自動でどんどん蓄積する仕組みにしているのだ。一連のシステムは「Azure Functions」を用いてサーバレスで構築し、カルビーのスタッフがクラウドサーバを管理・運用する負担を軽減している。

photo 「ルビープログラム」の概要

2つの課題をまとめて解決した「折りたたむ」というブレークスルー

 Azureを使って応募の仕組みを抜本的に変えたルビープログラムは、まさに「マーケティングのDX」ともいえる取り組みだ。だが、現在の仕組みを実現する上ではいくつかの課題があり、松本氏らマーケティング本部は解決に向けて試行錯誤したという。

 松本氏によると、特に実現が難しかった仕組みは「商品が買われたことの証明」「繰り返し送付の禁止」の2点。プログラムを運営する上では、消費者が商品を買わず、売り場に並んでいるポテトチップスの写真を撮影したり、同じ商品の画像を何度も送付したりする可能性はゼロではない。これを防ぐことができないと、プログラムが成り立たなくなる。

 カルビーの谷澤渓介氏(マーケティング本部 商品2部)は「購買の証明に向けたアイデアは2019年夏から考え始めたのですが、当初は飲料メーカーを参考にしようとしていました」と明かす。

 飲料メーカーがキャンペーンを行う際は、ペットボトルに二重のシールを貼り付け、顧客が購入後に1枚めくるとユニークな二次元コードや応募券が現れるようにしている。店内で購入前の商品のシールをめくろうとする人がいれば、店員や周囲の客に見つかってしまう。これによって不正な応募を防いでいるわけだ。

 谷澤氏はこのシールをポテトチップスの袋にも取り入れようと考えたが、検討の結果、断念した。「生産工程で二重のシールを袋に貼り付けるためには、全国にある工場で生産ラインの大きな変更が求められ、数十億円では済まない規模の投資が必要になり、諦めざるを得ませんでした」(谷澤氏)

photo カルビーの谷澤渓介氏(マーケティング本部 商品2部)

 試行錯誤を重ねていた谷澤氏が「食べ終えたパッケージを折りたたんでもらう」というアイデアを思いついたのは、ふとしたことがきっかけだった。

 「当社では同時期に、環境問題に興味をもっていただくきっかけ作りとして、家庭でのゴミのかさを減らす取組みを検討しており、お客さまにポテトチップスの袋を小さくたたんで捨ててもらう方法を考えていました。その際に、ふと『精算前の袋を開封せずに折りたたむことはできない。袋が折りたたまれているということは、その袋は開封されており、すなわち購買の証明にもなるのではないか』という考えに至りました」(同)

 また、カルビーでは品質管理の観点から、商品の袋に一つ一つ異なるシリアル番号を印字している。折りたたんだ袋のうち、これが記載されている面を撮って送ってもらえれば、同じ番号での応募を一度しか受け付けない仕組みも実現できる。

 “折りたたみ方式”が2つの課題を解決する可能性を秘めていることに気付いた谷澤氏は、キャンペーン参加用の二次元コードとシリアル番号を同じ面に持ってくることができ、かつ消費者が親しみやすい折り方を考えた。

 「いろいろと試した結果、商品のパッケージに葉っぱのデザインを盛り込み、折りたたむと四つ葉のクローバーが出来上がる折り方を思いつきました。クローバーと同じ面に二次元コードとシリアル番号が含まれるので、読み取ってもらうとキャンペーンに応募できます。家庭でのごみの“かさ”も減らせますし、『これはいける』と感じました」(同

ALTALT パッケージを折ると、四つ葉のクローバーが完成する(注:葉っぱ入りのデザインは、現時点では一部商品に限られています)

誰でも操作可能な「使いやすさ」を評価

 谷澤氏が考えたアイデアを実現する上で、Azureの採用を決めたのが、前職でITエンジニアを経験していた、カルビーの関口洋一氏(マーケティング本部 デジタルマーケティング担当マネージャー)だ。

 関口氏はエンジニア時代にAzure Cognitive Servicesに触れた経験があり、当時からその品質を評価していたという。ITに詳しくない社員でも管理画面を使いやすいほか、カルビーが全社的に「Office 365」を使っており、Microsoftの製品に親しんでいたことから、使い勝手を考慮してAzureを選んだとしている。

 「カルビーの社員は、全員がITに精通しているわけではありません。そのため、管理画面が初心者にも見やすいものである必要がありました。AI・機械学習機能を提供するクラウドサービスは他にもありますが、特にユーザーフレンドリーである点を評価してAzureに決めました。Azureを使うことで、技術に詳しい特定の社員に依存せず、誰もがシステムを継続的に運用できる体制が作れると考えています」(関口氏)

photo カルビーの関口洋一氏(マーケティング本部 デジタルマーケティング担当マネージャー)

 関口氏はその後、Azureを使ったシステムのデモを作成した。「Azure Cognitive Servicesを使えば開封されたパッケージの判定ができ、シリアル番号のOCR処理はComputer Vision API で実現できるとの手応えを得ました」と関口氏は振り返る。その後は日本マイクロソフトの紹介によって、同社のパートナー企業であるナレッジコミュニケーション(以下「ナレコム」)にシステム開発を依頼した。

 サーバレスシステムの開発経験が豊富なナレコムは、2020年初頭から開発をスタート。MicrosoftのPaaS「Azure Functions」を使用し、モックアップからAPI仕様の策定、検証環境でのプログラム実行など、開発プロセスを順調に進めた。AIのトレーニングも、カルビーから提供されたサンプル画像を用いてスムーズに進めることができた。

 ナレコムの牧村健氏(ビジネス・デベロップメント部シニア・ソリューションアーキテクト)は「インフラを一から構築するとなると、それなりの期間がかかります。スクリプトを書いて載せるだけでサーバとして動作するAzure Functionsを活用することで、よりスピーディな構築を目指しました」と振り返る。

3枚の画像を生成・分析 OCRの前処理をひと工夫

 だが、8月に本格化したテストで、とある問題が浮上した。ポテトチップスのパッケージにはアルミ製のフィルムが使われているので、撮影された環境や角度によっては、光が乱反射して画像をOCRで読み込めず、エラーになってしまう恐れがあったのだ。

 ナレコムはこの課題に対応するため、スマートフォンで撮影したQRコードとシリアル番号の画像から、全体の色を白黒化した画像と、シャープネスをかけてエッジをくっきりさせた画像を生成する仕組みを構築。合計3枚の画像をAzure Cognitive Servicesに渡し、それぞれの画像をOCR処理した上で、正確に読み取れた内容を組み合わせてデータを生成する仕様にした。

 牧村氏は「画像がどんな環境で撮影されても、影や光の加減に左右されず、一律で文字を読み取ることができるようになりました」と自信を見せる。

photo ナレコムの牧村健氏(ビジネス・デベロップメント部シニア・ソリューションアーキテクト)

経営層も「新しいチャレンジ」を応援

 デジタルマーケティングと家庭でのごみのかさの削減を両立できるルビープログラムは、開始後にSNS上で「素晴らしい取り組みだ」という声が上がるなど、消費者からおおむね高評価を得ているという。さらなる普及に向けて、カルビーは今後、谷澤氏が発案した折り方ができるパッケージの導入を進め、対応製品を拡大していく計画だ。

photo 今後の意気込みを語る、カルビーの面々

 「スタート時点では『カルビーらしいものができたな』と思っていますが、あくまで最初の一歩です。どれほどの利益につながるか、明確な数字を算出するのが難しい面もありますが、経営陣からは『新しいことにチャレンジしてほしい』と言ってもらっています。その言葉通り、さまざまな可能性を引き続き模索していきます」(松本氏)

 将来は、カルビー直営店での購買データや、お客様相談室への問い合わせデータなどもファンベースに組み込むことを検討中。顧客の購買履歴や好みに応じて、最適なタイミングで広告を配信するなど、デジタルマーケティングの質を高めていくという。

 関口氏は「現在はAzure Functionsでスモールスタートしていますが、ルビープログラムの参加者が100万人、1000万人と広がった際は、その時々で最適なアーキテクチャを検討し、導入していきます」と意気込んでいる。

photo 左から、カルビーの谷澤氏、関口氏、松本氏、ナレコムの牧村氏

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2020年10月28日

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