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» 2021年01月21日 10時00分 公開

量子コンピュータ活用、NECと東北大監修で外部エンジニアたちが速習 専門家が舌を巻く“猛者”も現る

[PR/ITmedia]
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D-Wave Systemsの量子コンピュータ最新モデル「D-Wave Advantage」

 かつて夢の技術と思われていた量子コンピューティングだが、今では実用化の道を歩みつつある。中でも、カナダのD-Wave Systemsが2011年に発表した量子アニーリングマシン「D-Wave」はいち早く商用サービスとして展開されている。

 量子アニーリングマシンで計算できる「組合せ最適化問題」は、例えば勤務シフトの最適化や配送ルートの最適化(配送計画問題)など、実社会の多くのシーンで見られる課題だ。自動運転など、近い未来に実用化する技術への応用も期待できる。

 しかし、新技術は使い手がいないと広まらない。今求められているのは、量子コンピュータの特徴を理解し、社会課題の解決に活用できる人材だ。

オンラインイベントで外部のエンジニアたちが量子コンピュータを使ったプログラミングを体験 NECと東北大がチャレンジ問題を解説

 この課題を踏まえ、NECとカナダのD-Wave Systemsは、量子アニーリング人材を養成するためのオンラインイベント「NEC&D-Wave 量子コンピュータチャレンジDays」を12月上旬に開催した。共催には東北大学と同大発のスタートアップ企業シグマアイも名を連ねる。外部から現役エンジニアが参加し、3日間のプログラムを通して量子コンピュータを使ったプログラミングを体験した結果、採点したNECや東北大学の専門家も舌を巻くような計算の工夫を凝らす“猛者”も現れた。

量子アニーリング普及の課題は組合せ最適化問題の“翻訳”

 量子アニーリング方式の量子コンピュータは、組合せ最適化問題の計算に特化したマシンだ。量子力学の性質を使って、組合せ最適化問題の良い近似解を、従来のコンピュータよりも高速に計算できる可能性がある。

 汎用的な計算に使える量子ゲート方式の量子コンピュータの研究も進んでいるが、量子ビットの数やエラー訂正技術に課題があるため、実用的な量子アルゴリズムを実行できるようになるのは約10年後と見込まれている。

 一方、D-Waveは量子アニーリングマシンを2011年に発表して以来、着々と性能を向上させてきた。D-Waveは量子アニーリングをクラウドサービスとして展開しており、大学や企業の研究者が実際に利用できる環境が整っている。マシンも最新モデルの「D-Wave Advantage」では約5000量子ビット搭載と、大規模な問題の計算に対応している。開発環境もPython向けのSDK(Software Development Kit)が公開されている。

 このように、すでに実利用できる環境がある量子アニーリングだが、普及には課題もある。その一つは、量子アニーリングで解ける形に組合せ最適化問題をいかに“翻訳”するか、だ。

 量子アニーリングマシンは、「量子重ね合わせ」という、量子力学特有の性質を計算処理に活用している。ここでは詳細な説明に立ち入らないが、量子重ね合わせとは「0」と「1」の状態を同時に確率的に取りうる性質だ。

 古典コンピュータが0か1のどちらを表すスイッチ、つまりビットと論理回路による論理演算を基礎とするのに対して、量子アニーリングマシンは、スピン(量子ビット)同士に「同じ向きになりたいか、違う向きになりたいか」という相互作用を設定する。これらを同時に動作させ、各スピンの0/1を確定させるのが量子アニーリングの計算だ。これにより、最適解に近い解を短時間(ナノ〜マイクロ秒オーダー)で導き出せる。

 つまり、量子アニーリングマシンに計算させるには、問題をスピンと相互作用で表す「イジングモデル」という式に置き換えなければいけない。

イジングモデルとは

 イジングモデル自体は「(相互作用係数)×(i番目のスピン)×(j番目のスピン)」の総和、という単純な式だが、勤務シフト作成や配送計画などの実問題において、現場ごとに異なる要請や制約をどのようにイジングモデルとして表現するかは型通りには扱えず、計算者の発想や工夫が求められる部分だ。

3日間で基礎から実践的な応用問題までトライ ドリル問題と解説で“コツ”を伝授

 今回行われた「NEC&D-Wave 量子コンピュータチャレンジDays」では、現役エンジニアが参加し、D-Waveを活用した組合せ最適化問題に挑戦した。参加者は、NECが作成した課題を解きながら、量子コンピュータでの実践を2日間にわたって学習。2日目の最後には、制約条件が多くついた実践的な問題を想定したチャレンジ課題を競い合って解くコンテストにも挑んだ。

同イベントで実際に使われた基礎問題の一部 各問題をイジングモデル(QUBO)で表して計算する

 チャレンジ課題の一つは配送計画問題の応用で、荷物制限のあるトラックで配送するドライバーのルートを選定するという内容。もう一つは労働者の休業時間や人間関係を考慮しつつ勤務シフト表を最適化する問題だ。どちらも、現実の課題に応用できる内容だ。

 NECとともに問題の採点に当たった、東北大学発の量子スタートアップ、シグマアイは量子アニーリングの社会実装を精力的に展開する企業だ。同社の観山正道CTOは「今までもハンズオンセミナーはやってきたが、これほど大規模なイベント開催は初めて」と話す。「参加者からは原理を洞察するような鋭い質問もあり、その熱意に驚いた」と舌を巻いた。

 実際、チャレンジ課題を解いた参加者の中には専門家もうなるような優秀な回答を提出した人も複数現れた。

優秀者「量子アニーリングは今回が初めて」

 コンテストの最優秀賞に選ばれたのは、NTTドコモの片山源太郎さん。提出したモデルの評価点は最高得点を獲得した。

 NEC量子コンピューティング推進室の千嶋博さん(技術主幹)は「実務でモデルを使う上で、重み付けを扱いやすいように正規化するなどの配慮があった」とその工夫を評価した。受賞者の片山さんは「工夫の結果、それなりに良い解を出せたようで安心した」とコメント。「今後はLeap(D-Waveマシンの実行環境)などを活用しながら量子コンピュータの活用を学びたい」と意欲を見せた。

 優秀賞は日本総合研究所 先端技術ラボの渡邉一生さんが獲得。モデルの評価点では次点となったが、教科書通りの理想的なモデルを構築した。「先端技術のスキル習得の一環として触れてみたが、少しずつパズルを解くような面白さがあった」(渡邉さん)と振り返った。

東北大発スタートアップ、シグマアイの観山正道CTO

 この他、発想の転換で問題を解釈し、解きやすい形にモデル化したことで審査員特別賞を得た参加者も。シグマアイの観山正道CTOは「量子アニーリングマシンは実用に耐えるスケールまでの計算が可能となったが、実務上はコンパクトにできた方が効率が良いのは事実」として評価した。

 重要なのは、優秀者として選ばれた3人中2人が、量子アニーリングに触れるのは今回が初めてだったということだ。量子アニーリング普及のハードルと思われていた、計算問題のイジングモデルへの定式化も、今回のような取り組みを通じて多くの人にその手法を伝えていけることが分かった。

 「この3日間のコースを通して、量子アニーリングに触れたエンジニアが100人も増えた。参加者の皆さまには、この3日間で得た経験をそれぞれの活躍の場で伝えていってほしい」(観山CTO)

量子コンピュータ普及の土台を支えるNEC

 NECは量子コンピュータの社会実装に本気だ。そもそも、現在量子アニーリングマシンや量子ゲート方式の量子コンピュータの核となっている「超伝導量子ビット」を世界で初めて開発したのは、当時NECに在籍していた中村泰信さん(現東京大学教授)と蔡兆申さん(現東京理科大学教授)だった。

 そんなNECは現在、国を挙げての量子アニーリングマシンの開発を主導しており、2023年までの完成を見込んでいる。平行してD-Wave Systemsとも協業体制を敷いている。

 従来のコンピュータを使って大規模問題に対応できる実証環境も⽤意している。海洋研究開発機構(JAMSTEC)のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」に採⽤されているNECのベクトルマシンの最新モデル「SX-Aurora TSUBASA」を使えば、10万量子ビット相当の組合せ最適化問題も解ける。

NEC量子コンピューティング推進室の遠山美樹室長

 今回のイベントを含め、量子コンピュータの普及を多方面から推し進めるNECだが、量子コンピューティング推進室の遠山美樹室長は「量子コンピューティングを実務に活用する上では、NEC1社だけの取り組みでは不十分」と話す。「大事なのは、外部の方々に広く伝えていくことで、それぞれの自社の課題に活用できるかをイメージしてもらうこと」(同)

 「初めて触れて、わずかな時間で使いこなしているという方をみて、イベントを開催して良かったとやりがいを感じた」と遠山室長は手応えを語った。

 同社は「量子コンピューティング適用サービス」として、実際にD-Waveのマシンを活用する方法や、モデル設計といった技術を伝えるコンサルティングサービスを展開している。今回のイベントで活用した教材はその内容をコンパクトにまとめたものだった。

 NECは、今後もこうした取り組みを通じて量子コンピューティングを社会に広めていく考えだ。自社の課題解決の一つの手法として、量子アニーリングの可能性がありそうであれば、NECに相談すると道が開けそうだ。

シグマアイ観山CTO(左)とNEC遠山室長(右)

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